COFFEE BREAK

文化

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2018.12.17

コーヒー歴史トリビア・クイズ 〈コーヒーの味わい方の変遷編2〉

謎めいているからおもしろい!コーヒー歴史トリビア・クイズ
〈コーヒーの味わい方の変遷編2〉

いまや世界中の人々に愛されているコーヒー。ドラマに満ちたその歴史には多くの謎が残されている。クイズ形式でコーヒーの歴史を紐解くトリビア、第10回はコーヒーのいれ方のこだわりを19世紀の英仏両国から。
Question1

 著書『美味礼讃』で知られる19 世紀フランスの美食家ブリア・サヴァランはコーヒーに関しても記述があるが、次の3つのうち、サヴァランが述べていないのはどれ?

a コーヒー豆は磨り潰すよりも叩き潰したほうがよい。
b 高い圧力をかけて入れたコーヒーは苦味が出て、コサック人が飲んだら喉を痛めるだろう。
c コーヒーにカルダモンやシナモンなどを加え、砂糖を溶かして飲む者がいるが、通人の多くはこの飲み方を賞賛しない。

Answer1 c

cはサヴァランよりも100年以上前にコーヒーについて語られたアンジェロ・ランバルディ著『アラビアの美味なるもの』から。サヴァランはコーヒー抽出に関するあらゆる方法と器具を試し、ド・ベロワ方式のパーコレーターが好みだと『瞑想録第六巻』で述べている。

Question2

 1722年、ロンドンで、それまで破砕したコーヒー豆を煮立てて入れていた方法に異論を唱え、浸出式を提唱したコーヒー商人が、コーヒーをいれる水として推奨したのは?

a 湧き水
b テムズ川の水
c といで集めた雨水

Answer2 b テムズ川の水

ハンフリー・ブローベントというコーヒー商人が『コーヒーを正しくたてたる方法』という専門書を著し、その中で「(コーヒーを)煮立てるは馬鹿げた習慣なり」と非難。フランスではその10年ほど前にすでに熱湯による浸出式が登場していた。同書の中でブローベントは「湧き水にてコーヒーをたてる者あり。だが、川の水、たとえればテムズ川の水ほどはよくあらず。なぜならば、前者にては味硬く美味しからず。後者にては滑らかにて心地よし」と述べている。現代のテムズ川の水でコーヒーをいれる気には到底なれないが‥‥。

Question3

 19世紀初頭のイギリスで抽出したコーヒーの濁りを取り、澄ますのに用いられたものとは次の4つのうちどれ?

a 卵白
b 魚膠
c 雄鹿の角の粉
d ビールの泡

Answer3 d ビールの泡以外すべて正解

この連載の〈コーヒー道具開発の変遷史〉の回にパーコレーターの発明者として登場したラムフォード伯爵が当時のイギリスにおけるコーヒーのいれ方を描写したところによると、「コーヒーポットを火にかける。数度沸騰させるのち、コーヒーポットは火よりおろす。しばらく置いて、かすを沈殿させる。あるいは、魚膠を用いたりて澄ます」となっている。魚膠(うおにかわ)とはニベ科の海魚の浮き袋から取ったゼラチン質で作るにかわのこと。他にも卵白、雄鹿の角の粉、鰻・舌平目の皮がコーヒーの濁りを取るため用いられた。

Question4

 19世紀初頭、イギリスでドノバンという名の科学者が実験の末に編み出した、味や香りも良く、医薬的な効果も充分に引き出せるコーヒーのいれ方とは?

a 水出し抽出
b 高温の蒸気による抽出
c 冷水と沸騰水による2段階抽出

Answer4 c 冷水と沸騰水による2段階抽出

1826年5月号の「ダブリン・フィロソフィカル・ジャーナル」に掲載された記事によると、ドノバン教授の抽出法は以下の通り。使用する水をあらかじめ半分に分け、一方は冷たいままコーヒーの粉の入った器に注いでこれを火にかけ、沸騰させる。沸騰したら即座に火からおろし、コーヒー粉末を沈殿させてから液体は注ぎ出す。残り半分の水は沸騰させておいて、先ほどのコーヒーの粉に加えて火にかけ、3分ほど沸騰させる。粉を沈殿させて澄んだ液体を最初の液体に加える。冷水から沸かした方からはコーヒー本来の香りと味が、また沸かせた湯を使ってさらに沸騰させた方からは「元気を回復させる」特質が得られるというもの。

Question5

 19世紀後半、ロンドンではコーヒー抽出時の微妙な温度コントロールが問題にされていた。そのことを念頭に、当時の医師が記した「最も経済的なコーヒーのたて方」とは?

Answer5 水出しコーヒー

G・W・プアーという医師によると、その方法は以下の通り。コーヒーを飲む数時間前、あるいは朝食時に飲むなら前の晩にコーヒーの粉を壺に入れ、そこへ冷水を注いでおく。飲む際には水を入れたシチュー鍋か二重鍋の中に壺を立てて火にかける。要は日本酒のお燗の要領だ。「こうすれば、コーヒーはゆっくりと沸騰点に達して煮えくりかえらない。香りはまったく失われず最高の抽出液ができあがる」。プアーは「コーヒーは常に濃いめにつくること」とし、おいしいカフェオレは「濃いめのコーヒー4分の1に対してミルク4分の3」の比率にするように説いている。

Question6

 フランスの博物学者が紹介している19世紀半ばのフランスにおけるコーヒーのいれ方の一つの流儀について。ポットにコーヒー粉末とお湯を入れ、蓋をして、一定時間放置せよとあるが、「一定時間」の目安として正しいのは次の3つのうちどれ?

a 3分
b 45分
c 2時間以上

Answer6 c 2時間以上

博物学者デュ・トゥールによると、「熱湯で満たしたコーヒーポットにコーヒー粉末を注ぎ入れる。この混合液を匙で撹拌し、コーヒーポットはすぐに火から下ろす。きっちり蓋をしたまま、残り火のある灰の上に少なくとも2時間置いておく。煎じ出している間に数回、ココアの泡立て器か類似の道具で撹拌し、15分ほどそのまま置いておくと沈殿する」とのこと。美味探求にかける時間は惜しむべからず? それにしてもずいぶんと濃いコーヒーができそうなレシピである。

※参考文献/『オール・アバウト・コーヒー―コーヒー文化の集大成』(TBSブリタニカ)

文・構成 浮田泰幸 / イラスト・マツモトヨーコ
更新日:2018/12/17

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