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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
田村翔子【モデル・女優】
その国らしさを表現する、映画の中の様々なカフェ。
田村翔子【モデル・女優】
まだ人通りの少ない、早朝のニューヨーク五番街。パンを片手にコーヒーを飲みながら高級宝石店ティファニーのウィンドウを眺める主人公......オードリー・ヘップバーン主演の映画『ティファニーで朝食を』の、あまりにも有名なオープニング・シーンです。
私がこの映画を初めて見たのは25歳のときで、当時、既にモデルのお仕事をしていました。ジバンシイの黒いドレスを美しく着こなすオードリーは、パンと紙のコーヒー・カップという、一見ドレスにそぐわないアイテムでさえも、さりげなくおしゃれに持っていて......。そんな彼女のキュートな魅力に惹き付けられて、ビデオを何度も巻き戻してこのシーンを見たのを覚えています。以来、オードリーは私の一番好きな女優になりました。彼女の映画はおそらく全部見ていますが、特に印象深いものはと聞かれると、やはり真っ先に浮かぶのは、この黒いドレスとコーヒー・カップのシーンですね。
カフェを舞台に、人間模様を描く映画。
最近見た映画の中では、アメリカ映画『食べて、祈って、恋をして』のカフェが印象的でした。離婚したジャーナリストの女性が自分探しの旅に出るというベストセラー小説を映画化したもので、主演はジュリア・ロバーツ。彼女が訪れるイタリア、インド、インドネシア(バリ島)で、それぞれにカフェが登場します。
最初のイタリア、ローマの場面では、朝のコーヒー・スタンドが出てきます。まるで満員電車のように、出勤前のビジネスマンでごったがえす店内で、圧倒されてなかなかコーヒーを注文できない主人公に、ローマに長く滞在しているスウェーデン人女性が声をかけ、代わりに注文をしてくれます。2人はそのままカウンターで一緒にケーキも食べて、それ以来、仲良しになるんです。主人公は彼女を通して現地の人との付き合いを深めていきます。まさに、主人公がイタリアという国を知るきっかけになったのが、朝のコーヒー・スタンドでした。
他にも、石畳のテラスにテーブルがたくさん並ぶオープン・カフェも出てきます。食事もできて、夜遅くまでまったりしているのが心地よさそうなお店で、さすがカフェ文化がある国、という感じがしました。
インドのシーンで出てきたのは、アシュラム(修行道場)の近くにある屋外のカフェ。長いテーブルと長椅子が並び、牛や鳥の鳴き声が聞こえてくる、自然な雰囲気のカフェです。そして、バリ島ではちょっとユニークなカフェが登場します。薬草の知識に長けた女性が経営するお店は、身体にいいヘルシーなお料理を出すだけでなく、怪我や病気の治療をしたり、美容にいいこともあれこれとしてくれるような、オールマイティーなカフェで、すべてがナチュラルなもので統一されている。このようなカフェは初めて知りましたが、健康オタクの私にはすごく刺激的で、かなり惹かれました(笑)。
こんなふうに映画を見てカフェに目がいってしまうのは、小さい頃からカフェが身近な存在だったからかもしれません。私は父の仕事の関係で子供時代の約8年間を外国で暮らしましたが、カフェにはよく行きました。
家族でよく行った、ブリュッセルのカフェ。
小学校2年生~6年生まではベルギーのブリュッセルで過ごし、家族でよくオープン・カフェに行きました。コーヒーを飲む親の隣で、あったかいふわふわのワッフルを食べるのが、私のいつものパターンです。まだコーヒーは飲めなかったけれど、コーヒー豆の芳ばしい香りの中で、甘いワッフルを食べるのが大好きでした。
ヨーロッパのカフェというと、フランスやオーストリアが有名ですが、ベルギーにも気持ちのいいオープン・カフェがたくさんあるんです。なかでもブリュッセルの旧市街にあるグラン・プラス(110×70mの大広場。世界遺産に登録されている)は、今も強く印象に残っています。昔ながらのゴシック様式やバロック様式の建物が周りを取り囲むグラン・プラスは、フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーが「世界一豪華な広場」と絶賛したことでも有名な場所。そこにあるカフェは、夜になるとライトアップされて、一層華やかでロマンチックなムードになります。その中にただ座っているだけで、自分がちょっと大人になった感じがしたものでした。
中学時代に暮らしたシンガポールでは、改装される前のラッフルズ・ホテルのバーによく行きました。ラッフルズというと、今では最高級ホテルですが、当時、改装前は、長期滞在者の洗濯物が部屋の外にずらりと並んで干されているような、とっても庶民的な雰囲気だったんです。バーも、昼間は気軽なカフェという感じで、中学校の友達と学校帰りに制服のまま、よく立ち寄りました。天井にある大きなファンが、ぶんぶん回って、その下のテーブルでフルーツケーキを食べたことを覚えています。今のラッフルズでは考えられないことだと思うので、かなり貴重な体験だったようですね(笑)。
カフェという切り口で映画を見てみると、カフェを通してその国らしさや文化がしのばれるような興味深い作品がけっこうあるんじゃないかなと、改めて思いますね。