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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
太田雄貴【日本フェンシング協会会長】
コーヒーは、切り替えのスイッチです。
太田雄貴【日本フェンシング協会会長】
日本フェンシング史上初の五輪メダルを獲得した太田さん。小さい頃からずっと変わらぬコーヒー好きです。
コーヒーでまず思い出すのは、一人暮らしを始めて間もない頃、エスプレッソにはまったことです。あの苦味が気に入って毎日のように飲んでいました。フェンシングの海外遠征でフランスに行った時には、カプセル式のコーヒーを500個ほど買ってきて、その後しばらくは、1日に2個ずつ楽しんでいました。
20代後半からはコーヒーのトレンドも少しずつ意識するようになりました。いわゆるサードウェーブの走りの頃にサンフランシスコに遠征した時は、オフの日、朝6時に起きてホテルを出て、1杯ずつハンドドリップでいれるお店を何軒かのんびりとハシゴしたこともありました。そして、夜はSNSでつながった現地の〝フーディー〟(ミシュランの星付きレストランや高級料理店を食べ歩く美食家)と一緒に、彼らが紹介してくれたレストランに行って食事をしました。
そんな風に僕が食事を楽しむことを大切にするようになったのは、グルメで知られるタレントの寺門ジモンさんとの出会いがきっかけでした。彼の食への探究心や真摯な姿勢は僕にとって本当に驚異的で、仲良くお付き合いさせていただきながら、今もいろいろなことを学ばせてもらっています。
以前の僕は食べることにあまりこだわりがなくて、試合で海外に行っても食事をする場所は近いことが最優先。宿泊しているホテルから最大500メートル圏内で店を選んでいました。でも、その距離を1~2キロまで延ばすと劇的に美味しいレストランに出会うことができるんです。探せばある。今はそういう手間をかけることを惜しまなくなりました。そうやって料理が美味しいお店に行くと、美味しいコーヒーにも出会えますからね。
東京五輪の成果を、未来につなぎたい。
家では買ってきた豆を挽いてペーパーフィルターでいれています。今は、すっきりした酸味とフルーティーな香りがあるエチオピアの豆が大好き。特に朝食の後に飲む1杯は、さあ仕事に行くぞ、とスイッチが入りますね。
2016年のリオデジャネイロ五輪を最後に現役を引退し、翌年、日本フェンシング協会の会長に就任しました。就任直後からフェンシングのコアなファンをしっかり作っていくことを念頭に置いて、さまざまな挑戦を行っています。
2018年の全日本選手権大会、個人戦の決勝を、演劇公演などでおなじみの劇場で開催し、選手の心拍数をモニターで表示したり、会場内をカラフルなLEDでライトアップするなど、新しい演出を取り入れてみました。さらに昨年は、選手の剣先の軌跡を可視化する「フェンシング・ビジュアライズド」を導入しました。結果として、どちらの年も観客動員数を大幅に増やすことができました。
全日本選手権は以前から観客がとても少なくて、僕がロンドン五輪(12年)で銀メダルを獲得した翌年でも客席はガラガラでした。でもエンターテインメント性を重視して見せ方を変えると、見る人は感動してくれるのだということを実感しました。「フェンシング・ビジュアライズド」は、東京五輪での導入を目指してさまざまなテストをしているところです。フェンシング日本代表の選手たちのご活躍を心から応援するとともに、五輪の成果を未来につなげるレガシープロジェクトを成功させることを目指して、日々、全力で仕事に取り組んでいます。
1985年滋賀県出身。小学3年生からフェンシングを始め、高校2年生で全日本選手権優勝(当時、最年少記録)。2008年北京五輪、フルーレ個人で銀メダル、12年ロンドン五輪、フルーレ団体で銀メダル。15年、世界選手権で優勝。17年、日本フェンシング協会会長に就任。18年、国際フェンシング連盟副会長に就任。趣味の一つがスキーで、シーズンになると限られた休みを利用して仲間とスキー場に集まっている。