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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
上村愛子【元女子モーグル日本代表】
コーヒーもモーグルも出合いはカナダ。
上村愛子【元女子モーグル日本代表】
1998年の長野大会から5大会連続で冬季五輪に出場した上村愛子さん。味わい深く、ちょっとほろ苦い競技人生は、まるでカフェラテのよう?
朝食はいつもヨーグルトとコーヒー。お店でひいてもらった豆をペーパーフィルターでいれています。ミルクを足したり、カフェオレにすることが多いですね。コーヒーを飲むと身体が一気に目覚める感じがするので、私にとっては朝のスイッチみたいなものです。現役の頃は、朝起きたらまずビタミン補給のために100パーセント・オレンジジュースを飲んで、次にコーヒー、というスタイルを続けていました。
幼い頃、実家は長野県の白馬村でペンションを経営していました。毎朝、キッチンからコーヒーをドリップするいい香りが漂ってきます。でも、いざ飲んでみると苦い。子供心にコーヒーは、近寄れそうで近寄れない大人の飲み物でした。しかし、そんな私とコーヒーの距離が一気に縮まるときがやってきました。16歳、カナダのウィスラーという町でモーグルのサマーキャンプに参加していたときのこと。宿舎のホテルの近くにカフェがあって、そこのアイスカフェラテが仲間内で密かな人気になっていたのです。日本ではまだカフェラテがほとんど知られていない頃でした。私も注文して飲んでみると、ほろ苦くてまろやかで魅惑的な美味しさ! 16歳の私にとって、練習の後にカフェで飲んだこの一杯が大人への第一歩だったのだと思います。
一度離れてみて、気づいた多くのこと。
じつは、私がモーグルと出合ったのは、14歳でカナダに旅行したときでした。コーヒーを飲めるようになったのもカナダ。私にとって、何かとご縁のある国なのです。1998年の長野から5回連続でオリンピックに出場しましたが、なかでも2010年にカナダのバンクーバーで開催された大会はとても印象深いものになりました。
07年~08年シーズンにW杯で5連勝。翌シーズンの世界選手権ではシングルレース、デュアルレースの2冠を達成し、絶好調。残すは翌年のバンクーバー五輪だけでした。モーグルに出合った土地で開催されるオリンピックに自分が選手として出場できるのは、まさに奇跡です。私はきっとメダルを獲得して競技人生を終える。そんなストーリーを思い描いていました。
でも、結果は4位。ここで失敗はできないというちょっとマイナスな気持ちが、ほんの少し、競技に向かう自分の心にブレーキをかけていたのです。小さな後悔を残しつつ、4回目の五輪が終わりました。次の五輪までの新たな4年間を続けていけるのだろうか。悩んだ末に私は休養に入ることにしました。もうこのまま辞めてしまうのかなと思うこともありましたが、結果的にこの休養が私にさまざまなことを気づかせてくれたのです。東日本大震災が発生し、被災地を訪れたときには、多くの人が声をかけてくださいました。みなさん、ご自分たちが大変なときなのに「オリンピックずっと見てたよ」「次もがんばってね」と私を気遣ってくれる。たくさんの方々に支えられているのだということを改めて感じて、それが〝もう一度挑戦してみたい〟という思いへとつながっていきました。
1年間のブランクを経て臨んだソチ五輪。結果は前回と同じでしたが、このときは心から満足していました。それまでの4回のオリンピックとは全く違う景色を見ることができましたし、いっさい心を残さずに競技人生を締めくくることができた。それは本当によかったと思っています。