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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
ブラザートム【歌手】
仕事と私とコーヒーと。 Vol.6
ブラザートム【歌手】
歌手、俳優、ラジオパーソナリティ、そして絵本作家と、多彩な活躍のブラザートムさん。そのコーヒー物語は、母親との温かい思い出に根ざしています。
「子供の頃に母がいれていたコーヒーの香り。それが僕の中で一番初めのコーヒーの記憶です」 と話すブラザートムさん。 「1950年代の終わり~60年代の初め頃ですよ。コンロの火に直接かけるガラス製のパーコレーターのような器具を使って、ぼこぼことコーヒーができあがってくると、一瞬にして家の中がアメリカになるんです。埼玉の田舎の、普通の日本の家なのに......」
まだ一般家庭にはコーヒーがほとんど普及していない頃。晴れた日に、母は窓を開けてコーヒーをいれていた。 「こうばしい香りが窓からふぁーっと外まで出て、お隣の養豚場の匂いも全部消して、さらに彼方まで広がって......近所の人が、〝なんだ~、それ?〟といって集まってくる。そんなシーンが強烈な記憶として残っています。それが僕にとってのコーヒー。当時、アメリカ人の父はもう家にはいなくて。母は、いつか会いたい父のことを思ってコーヒーをいれていたのかもしれません。あの時代に埼玉県でコーヒーを飲んでいた貧乏家族は、きっとうちだけだったと思います」
数十年後、大人になってしばらくして、その記憶に近い香りと再会した。 「都内のカフェで、たまたま出されたコーヒーの香りに、あ、これは......と記憶を呼び起こされまして。聞けば、ハワイのコナコーヒーだということでした。父親がハワイ出身なので、もしかしてうちにあったのもハワイのコーヒーだったのかと、考えたりしたものですが、母は既に亡くなり、あのコーヒーの正体は今も謎のままです」
コーヒーを傍らに、オープンエアーでワイワイ話をするのが好き。仕事の打ち合わせや会議も、できれば外で行いたいのが本音なのだとか。
「企画会議には嘘と夢がないとつまらないと思うんです。僕の理想は近所の公園。視界がうんと開けたところで話をすると、可能性の一番遠いところにある惑星の隅っこをぴゅっとつかまえたような、思いがけないアイディアが出てきたりするものです。見慣れた会議室では思考も手近なところで収まってしまう。会議をするなら、意外性のある場所がおすすめですよ(笑)」
震災を経験した犬との、運命的な出合い。
息子が生まれてから絵本の魅力を知ったトムさん。今は自ら絵本をつくり、読み聞かせのイベントも行っている。 「今の世の中、子供たちに伝えなくてはいけないことがたくさんあると思う。僕はそれを絵本にしているんです」
東日本大震災の被災地から預かっている犬について描いた『ラース 福島からきた犬』も、残しておかないと忘れられてしまう記録のひとつだった。 「被災地で保護された犬をひきとったんです。保護時の写真に写っていた地名を頼りにその村の住民の避難先に連絡すると、電話に出た職員の方が写真を送ってくださいというので、お送りした。すると、なんとその職員の方が犬の飼い主さんだったのです。名前がラースだということもわかりました。今年、その飼い主さんが帰村できることになりました。約5年間一緒に暮らしたので寂しさもあるけれど、ご家族との約束なので......。ラースは春には故郷に帰っているはずです」