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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
有森裕子【元女子マラソン選手】
大好きなカップと過ごす至福のとき。
有森裕子【元女子マラソン選手】
バルセロナ五輪銀メダル、アトランタ五輪銅メダルと、女子マラソンの歴史に輝かしい記録を打ち立てた有森さんはコーヒーカップの収集にはまっています。
お気に入りのコーヒーカップでゆっくりとコーヒーを味わう。私の大好きな時間です。アンティークを中心に、カップを集めています。
最初の出合いは、実業団でマラソンを始めてしばらく経った頃でした。オフの日、御茶の水を歩いているときに、ふらりと入った西洋アンティークのお店。そこで、取っ手のない美しい青磁のカップをみつけたのです。とても薄くて軽くて、手にとった瞬間、思わず「あーっ」と声をあげて、一目惚れ。値段も聞かずに「これください」と言っていました。後で聞くと、かつてイギリスのリバプールにあった窯で焼かれたものだそうです。
そして、買うときに、お店の人からこう言われました。
「アンティークだからといって、飾るだけにしないでくださいね。器は使ってこそ価値があるのだから、ちゃんと命を入れてあげてください」
そのときから20年近く経ちますが、今もそのカップでコーヒーを飲んでいますし、カップはアンティークのものでもすべて使うようにしています。
備前焼の器との、運命的な出合い。
カップのコレクションの中には、備前焼の作家さんの作品もあります。それは、カフェオレ・ボウルのような深い器で、かつて東京の青山にあったコーヒー屋さんで、ミルクをたっぷり入れたコーヒー専用の器として使われていたもの。雑誌でその記事を見て、一目で気に入ってしまったのです。
お店の名前まではわからなかったのですが、あるとき偶然に入った青山のギャラリーで、そのボウルが並んでいるのを発見しました。思わず、「この器で〝ミルクコーヒー〟を出しているお店を知りませんか?」と聞いたら、すぐ近くにあるというのです。そこから歩いて1~2分でした。コーヒー屋さんに着くと、「ああ、ギャラリーの人から聞いていますよ」といって、ミルクコーヒーを出してくれたのです。備前焼のボウルは2客買いました。以後、そのコーヒー屋さんにはよく通ったものです。そんなふうに、それぞれのカップにそれぞれの思い出が詰まっています。
引退後は、スポーツを通して国境や人種やハンディを超える活動を支援するNPO法人の代表理事を始め、さまざまなことに挑戦させていただいています。いってみれば、現役の頃は〝自喜力〟~自分を喜ばせるために自分の力を出してきましたが、今は〝他喜力〟~スポーツを通して他の人々が喜んでいただけることに出す力が多くなった、という感じですね。
なかでも毎年開催しているキッズキャンプには力を入れています。これは、小学生がプロ選手やオリンピック選手と一緒に多様なプログラムに挑戦する3泊4日のキャンプです。小学生のときにどんな体験をしたか。それが心身の軸となって将来にも大きな影響を与えます。スポーツ選手というよりも、〝強い人間〟を育てたい。そんな思いでやっています。あらゆる可能性を秘めた小学生たちと過ごす時間は発見の連続で、楽しいんですよ。