COFFEE BREAK

インタビュー

インタビュー-Interview-

2014.06.27

首藤康之【バレエダンサー】

首藤康之【バレエダンサー】

朝のコーヒーとレッスンが日課です。
首藤康之【バレエダンサー】

バレエをはじめ、さまざまな舞台で活躍する首藤さん。身体ととことん対話する日々に、コーヒーブレイクは欠かせないそうです。

 朝食のときに飲むコーヒーと、その後のダンスのレッスン。どちらも僕の毎日に欠かせないものです。コーヒーはフレンチローストやイタリアンローストなど濃い味が好きで、朝はけっこう大きなマグカップで2杯飲みます。お砂糖やミルクは入れません。

 レッスンは最低でもバレエの基本的なメニューを3時間くらい、時間があるときにはもっと続けます。身体は毎日違うので、その日の状態を確認し、身体の声を聞きながら行います。たとえば、友達同士の会話がどんどん盛り上がったときに時間の経つのを忘れてしまうということがあるように、身体との対話もすればするほどさまざまなことがクリアになって、それがまた新たなダンスの動きにつながるような発見があったりする......そういうことがおもしろくて、稽古の時間は僕にとって、とても大切なひとときです。

母が教えてくれた、コーヒーの美味しさ。

海外に長期滞在するときは、キッチン付きのホテルを選ぶ。毎朝、自分でコーヒー・フィルターにお湯を注いでいると気分が落ち着くという。

 若い頃は、身体に対して〝黙って踊れ〟という意識でいたので、身体の声を聞こうともしませんでした。32歳のときにフランスのリヨンで、舞台上で靭帯を切る大怪我をしてしまい、何カ月も動けない時期が続きました。それが身体を見直すきっかけになりました。最近はとても調子がよくて、対話しやすい身体になっています。

 母がコーヒー好きで、子供の頃からコーヒー豆を買いに行くのが僕の役目でした。ブルーマウンテンやキリマンジャロを〝真空パックで200グラム〟と頼まれて、自転車で近所のデパートの地下の食料品フロアまで行くのです。

 母が豆を挽いてお湯を注ぐと、家の中になんだかいい香りが広がってきます。でも、飲ませてもらうととても苦くて、なんでこんなものが美味しいのか、と不思議でした。その後、ミルクを入れたらとても美味しく感じられて、小学校高学年の頃からはミルクを入れて飲んでいました。

 今は基本的にコーヒーを飲まない日はありません。ダンサーの中には本番前や夜は意識して飲まないようにしている人もいますが、僕は本番前にも飲むことがあります。コーヒーが心と身体をすっきりとリセットしてくれるような気がするのです。僕個人の思い込みかもしれませんが、食べ物は、それをいただくときの意識で身体への作用も違ってくるのではないかと思っています。コーヒーをゆっくり飲んだり、美味しいものを食べたりすることは、僕にとってはポジティブな気持ちにつながることなのです。

 若い頃は、40過ぎのダンサーはとてもおじさんに感じられて、まさか自分がこの年まで踊って、これからも踊り続けようと思っているなんて考えてもいませんでした。それなのにどうして今も踊っているんだろうと考えると、答えはシンプルで、もっとバレエがうまくなりたいからなんです。10年前から教えることにも携わっていますが、バレエダンサーを育てたいというよりも、人間を育てたいという思いでやっています。それぞれが人としてちゃんと立っていけるようになればいいなと。自分自身もそうありたいですね。

文・牧野容子 / 写真・大河内禎 更新日:2014/06/27
INFORMATION
【首藤康之の出演作品】 サイトウ・キネン・フェスティバル松本 +まつもと市民芸術館共同制作 ストラヴィンスキー:『兵士の物語』 上演予定: 2014年8月21日(木)、23日(土)、25日(月)、27日(水) 会場:まつもと市民芸術館 実験劇場 料金(全席指定・税込):一般5,000円 大学生以下3,000円 主催:サイトウ・キネン・フェスティバル松本実行委員会 一般財団法人松本市芸術文化振興財団 チケット発売:2014年6月7日(土)10時より チケットに関するお問合わせ: まつもと市民芸術館(☎0263-33-3800)
ストラヴィンスキー:『兵士の物語』
PROFILE
首藤康之(しゅとう・やすゆき) 1971年生まれ。9歳でバレエを始め、中学時代に単身ニューヨークやロンドンに渡り、レッスンを受ける。17歳でソリスト、19歳で主役デビュー。モーリス・ベジャール、イリ・キリアン、マシュー・ボーンなど、名だたる振付師を虜にし、数々の舞台で活躍。2007年、自らのスタジオ「The Studio」をオープン。舞台に立ちながら、子供達の指導にも力を入れている。 撮影協力:ポ・ブイユ(☎03-3791-8845)
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