世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
　甘いものが大好きなイタリア人がコーヒー屋に求めるのは、コーヒーと相性のよい美味しいお菓子。さらにはコーヒーそのものをデザートに仕立てたものも、ミラノでは人気を博しています。今月はそんなコーヒースイーツが際立つ、人気の2店舗をご紹介します。ミラノで話題の新しいカフェでは、ナポリ風のデザートコーヒーとボリュームたっぷりのスイーツが大人気です。

毎日焙煎する新鮮なコーヒーでデザートコーヒーを楽しむ。

Vol.90　イタリア：キッコ・カフェ（CHICCO cafe）
www.chiccoitaly.com

　ミラノの中心地から5分ほどトリノ通りを南下していくと、たくさんのカフェが並ぶショッピングエリアに入る。観光客も多いそのカッロッビオ地区の真ん中にできたのがナポリ風のコーヒーが評判の「キッコ・カフェ」だ。ナポリはイタリアでも最もコーヒーが美味しい土地と評判で、ミラノでもナポリ風カフェは人気急上昇。なかでもこの店は自家焙煎コーヒーが自慢で、コーヒーの味がナポリ風なのはもちろんのこと、スタッフにもナポリ人が多く、店内のお菓子やランチもナポリ風を楽しめる。このカフェから歩いて10分ほどの距離にビストロとピザ屋、カフェに宿泊施設も備えた大きな本店があり、料理やお菓子の美味しさは折り紙つきだ。

　コーヒーの楽しみ方も基本はミラノスタイルで、朝と午後は立ったままコーヒーをさっと流し込む人が多いものの、観光客も多いエリアなので、座ってコーヒーを楽しんだりランチを食べる人も多い。特に午後には、店内にゆっくり座ってコーヒーとケーキを食べる人たちの姿を多く見かける。店内で出すコーヒーメニューは約10種類。中でも人気が高いのは、ナポリコーヒーの奥深い香りに甘さを加えたデザートコーヒー。小さなカップに美しく注がれ、飲むというより食べるという感覚に近い。エスプレッソベースのデザートのよさは、半分は飲むことができ、半分は食べることができること。つまりコーヒーでありデザートでもあり、その2つが同時に楽しめるところなのだとバリスタが教えてくれた。少量なので価格も手頃で、コーヒー代わりに頼む客も多い。

　デザートコーヒーのベースを支えているのは、オリジナル焙煎のコーヒー。ミラノでは少なくなってしまった自前の焙煎所を持ち、職人が毎日この店のために豆を焙煎しているのが強みだ。最大の特徴はメキシコ産の豆を使っていることで、店の看板にも「メキシコ」の文字があるほど、その味にはこだわりがある。やわらかく深みがあり、クリーミーなメキシコ豆の特徴を生かし職人が毎日5種類のオリジナルコーヒーを焙煎している。甘いもの好きだけでなく、ミラノのコーヒー好きも通い詰めるのは、コーヒーの格別な美味しさのためだろう。

＊1ユーロ＝約127円（2019年4月現在）
写真＝フランキー・ヴォーン　取材＝坂本きよえ（ミラノ市在住）
更新日：2019/5/15