COFFEE BREAK

世界のコーヒー

世界のコーヒー-World-

2014.10.15

Vol.7 ブラジル:コーヒー・トラック(Coffee Truck)

世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
コーヒーの国、ブラジルで人気なのが、場所を選ばず美味しいコーヒーをサービスすることができる「出張カフェ」です。Vol.7ではブラジルで愛されるワゴン車の移動カフェをご紹介します。

アンティークなワーゲンバスが話題の出張カフェ。

Vol.7 ブラジル:コーヒー・トラック(Coffee Truck)
www.biobarista.com.br/

コーヒー・トラック

ワーゲンバスと80年代のラジカセが醸すレトロ感に誘われて、街ゆく人が立ち止まりコーヒーを注文する。ヴァンといえば、ブラジルでは国産のワーゲンバスしかなかった時代が長かった。それゆえ、多くの人がこの車種にサウダージ(懐かしさ)を感じるのだ。

 人口1千100万人を抱える南米最大の都市サンパウロは、19、20世紀のサンパウロ州内陸でのコーヒー産業の発展とその後の工業化によって育まれた街だ。それでも、この街でコーヒーの消費文化が洗練されてきたのは最近十数年のことだ。
 欧米の流行に習ってサンパウロでもバリスタが"かっこいい"職業として人気を博すようになり、更には独立して新たなビジネスを始めるバリスタも出始めている。レトロで愛らしいフォルクスワーゲンのワゴン車トランスポーター(俗称ワーゲンバス)で出張カフェ「コーヒー・トラック」を営むアレックス・ペレイラ・サントスさんもそんな一人だ。
 アレックスさんが出張カフェを開くのは主にトレンド発信エリアの歩道や広場だ。エスプレッソマシンを搭載した改造ワーゲンバスの出張カフェがユニークだと大手メディアが紹介したこともあって、わざわざ見に訪れる人もあるほどの人気ぶり。

コーヒー・トラック

(左)廃車にされてもおかしくなかったワーゲンバスを見事に街で話題の一台に改装・改造した。 (中)路上でうまくエスプレッソを入れるには、まずは平らな駐車スポットを確保するのが大切。 (右)紙コップでも丁寧にラテーアートを施すアレックスさんは国内のバリスタ選手権出場経験者だ。

 給料が据え置きだったカフェ勤務を辞めて、もっと自分らしくコーヒーをいれて暮らしていけないものかと思案していた頃に、住宅街を巡って雑貨を販売するくたびれたワーゲンバスに「この車売ります」の張り紙を見つけたのがアイディアの発端だった。改装・改造によって74年製ワーゲンバスは、2013年12月に出張カフェとして生まれ変わったのだった。

コーヒー・トラックのメニュー

(左)エスプレッソ(5レアル)とカフェラテ(6レアル) (右)営業には、アシスタントのフェリッペ・ヴィエイラさんと2人で臨む。

 コーヒー豆は、開業当初からアレックスさんのビジネスを応援する、名産地アルタ・モジアナ地域のフォルタレーザ農園のものを使用。欧米にも輸出されている注目株のコーヒーだ。有名なカフェと違って物珍しさで立ち寄るお客も多い。バリスタとして10年の経験のあるアレックスさんは、美味しいコーヒーとは?とうんちくを語るのも自らの役割だと自負している。
「カフェ内だと、コーヒーをいれるバリスタは、案外お客さんと語らう時間が少ないんだよね」というアレックスさん、今ではアレックスさんはコーヒーをいれるだけでなく、アシスタントとともに接客、会計もこなす。旧型ワーゲンバスそのものが会話の主役になることもしばしばだ。「お客との会話がきっかけで、イベントへの出店を依頼されることもあるよ」。スタートして1年に満たない新しい試みでありながらも、自らのビジネスに感じる可能性は確かなようだ。
 愛車は未だ改造半ば。ブラジルが真夏を迎える今年の年末までには、流し台とクーラーボックスを設置してコールドドリンクも提供できるようメニューを充実させたいとの意気込みだ。

〈カフェ情報〉

コーヒー・トラック(Coffee Truck)

www.biobarista.com.br/

主にオスカー・フレイレ広場(Rua Oscar Freire, 974)で出店

Tel.+55-11-96562-7126 (携帯電話)

営業日・時間:不定期

*1レアル=約44円(2014年9月現在)
写真・文=仁尾帯刀
サンパウロ市在住
更新日:2014/10/15

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