世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
ここ５年ほどでサードウェーブ系コーヒーショップが隆盛し、伝統のスタイル以外にも多くの選択肢が増えているパリのコーヒー事情。中でもパリのトレンドセッター的存在であるデパート「ル・ボン・マルシェ」では、新しい視点のカフェやコラボ商品が作られ、話題を呼んでいます。期間限定「最新のパリ」で選ばれたカフェは...？

百貨店発、パリの最新コーヒースタイル。

Vol.46　フランス　Café Lomi／Le Bon Marché
www.lebonmarche.com

　パリ７区の高級住宅街に位置するデパート「ル・ボン・マルシェ」は、創業１８５２年、フランス最古の高級デパート。伝統のフレンチ・シックなモードとアール・ド・ヴィーヴル商品が揃う店として、パリの富裕層から高い支持を受けている。特に各国の都市をテーマに期間限定で年１回行う６週間の催事は、品揃えとも最新の感性が光り、人気が高い。
　その「ル・ボン・マルシェ」が２０１６年９月、鳴り物入りで開催したのが「パリ！」と題された催事。お膝元の街を経営陣・製作陣がバスで周り、自分たちも知らない「秘められたパリ」や、「最新のパリ」をピックアップ。今のパリを最も魅力的に表すクリエイターやショップと組み、期間限定のコラボ商品を展開した。

　コーヒーの分野で、パリを象徴する場所として選ばれた中に、１８区のロースター「カフェ・ロミ」がある。近年パリに隆盛する新世代コーヒーショップの先駆者でもある彼らが提案したのは、「ジェ・ドゥー・アムール（私には二つの愛がある）」という名を冠したオリジナルブレンドだ。
「百貨店からは二つのコラボ方法の提案がありました。一つが私たちの「コーヒーの学校」を百貨店内に開くこと。もう一つが、オリジナルブレンドの試飲・販売で、私たちは後者を選んだ、というわけです」
「カフェ・ロミ」の広報担当者、ルシーさんは言う。
　オリジナルブレンドの名前は、１９３０年代にパリを席巻したアーティスト・ジョゼフィン・ベーカーの歌に着想したものだ。
「二つの愛というのが、ぴったりだったんです。ロミはパリと、シングルオリジンコーヒーへの愛から生まれたお店ですから」
　このブレンドが目指したものは、まろやかなアロマ。数多くのパリジャンに愛される、間口の広い印象を最重視した。チョコレート的な豊かさを持つブラジルのアラビカ・ブルボンをベースに、エチオピア産アラビカ・ヘアルームで明るいニュアンスとフルーティーな後味を添える。まろやかながら味わい深く、濃厚な飲み口だ。
　オリジナルブレンドは「ル・ボン・マルシェ」の食品館、「ラ・グランド・エピスリー・ド・パリ」１階で販売。豆はパリ市の形を模した、期間限定販売のチョコレートケーキの材料としても使われた。

　また売り場にはトラックを模した特設屋台が設けられ、パリらしく軽やかで、楽しげな演出がなされた。ロミのコーヒーは他の食コラボレーション品と組み合わせたギフトセットとしても提案され、人気を博したという。
「ル・ボン・マルシェのように、クオリティを追求する企業とのコラボレーションは私たちにもとてもいい経験になります。また機会があったら、ぜひ挑戦したいですね」

＊１ユーロ＝約115円（2016年10月現在）
文・写真＝高崎順子（パリ郊外在住）
更新日：2016/11/15