COFFEE BREAK

世界のコーヒー

世界のコーヒー-World-

2023.05.31

グアテマラ国立コーヒー協会の環境対策とプロモーション戦略

 中央アメリカ諸国でホンジュラスに次ぎ、コーヒー輸出量第2位に位置するグアテマラ。良質な火山灰質の土壌と栽培に適した気候により、長年、質の高いコーヒーを世界中に提供してきた。グアテマラにとって輸出相手国第2位の日本はコーヒービジネスでの重要なパートナーであり、日本にとってグアテマラはコーヒー文化に欠かせない生産国のひとつだ。日本人も日常的に親しんでいるコーヒーの生産国の取り組みとは?グアテマラのコーヒー産業を統括する国立コーヒー協会による気候変動への最新の対策と販売促進への取り組みに迫る。

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アナカフェ第3地方事務局管轄のグアテマラ県フライハネス市のコーヒー農場。©Anacafé

 太平洋とカリブ海に面し、4000m級の火山も含むシエラ・マドレ山脈とクチュマタネス山脈が、豊かな河川と湖を織りなすグアテマラ。北海道の約1.3倍に相当する108889㎢の国土には、300を超える亜熱帯性のマイクロ・クライメイト(局所気候)が存在し、その気候的多様性が、地方ごとに異なる特徴をコーヒー豆に授けている。品質の高さからグアテマラのコーヒーは、アメリカを筆頭に日本など世界各国から求められている。

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日本を含むアジアは、輸出先地域として22%を占める。

 国としてその品質を管理しているのは、産業を統括する1960年設立の国立コーヒー協会(以下、アナカフェ)だ。多様性豊かな生産地を8地域に区分し、7か所に地方事務局を構え、全国の約125千人の生産者を統括、支援している。

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首都グアテマラシティの第14地区に本部ビルを構えるアナカフェ。

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生産地域それぞれ年間最優秀コーヒー豆を「グアテマラン・コーヒー」ブランドとして販売。

 生産者への支援のなかでも、アナカフェが近年力を入れて取り組んでいるのが、気候変動への対策だ。2015年に国連総会で採択された17の「持続可能な開発目標(SDGs)」のひとつに「気候変動に具体的な対策を」がある通り、コーヒー産業においても気候変動による環境や生態系への影響が懸念されるようになってきているためだ。

 中米諸国のコーヒー産業が被った今世紀最大の危機もまた、気候変動が招いたサビ病の流行であった。高温多湿な環境で繁殖力を増すカビの一種であるサビ病は、温暖化による気温の変化で、2012年ごろから数年間にわたり中米諸国に蔓延した。

 グアテマラでは2012年末、全国の約70%のコーヒー農地にサビ病の被害が及んだとアナカフェは報じている。2015年には調査対象の97%の生産者が、コーヒーの木の葉の光合成機能を失わせ、木を枯らせてしまうこの病気に作物が侵されたことを報告した。これによりグアテマラのコーヒー輸出量は2012/2013年度から2014/2015年度までの3年間下降線を辿った。

 中米諸国をしばしば訪れるハリケーンもまた、近年温暖化の影響でその威力が増している。202011月に中米諸国を襲った2つのハリケーン「エタ」と「イオタ」は、地域に人的・経済的被害を及ぼし、グアテマラのコーヒー産業は同年、生産・輸出量を減らした。

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サビ病の流行で2012/2013年度から2014/2015年度まで総輸出量が減少。

生産者のSOSをアプリでキャッチ

 気候変動によるコーヒー産業への打撃が生じているなか、アナカフェは国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に賛同し、以下の4つの活動を環境・気候変動対策の主軸として取り組んでいる。1)気候変動への適応と緩和への取り組み、2)国の環境法および国際的協定の遵守、3)水資源の統合的管理、4)生物多様性の保存と持続可能な管理。

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コーヒークラウドは病気・害虫の情報の他、気象に関するデータも公開している。©Anacafé

 気候変動への適応と緩和への取り組みのひとつとして2016年に導入し、2020年にリニューアルしたのが、スマートフォンアプリ「コーヒークラウド」だ。これは、生産者がアプリに登録することで、コーヒーの木にサビ病などの病気や害虫が発生した際に、速やかに対応できるよう解決策などの情報を公開しているほか、生産者が情報を発信することでアナカフェと他の生産者が病原菌の流行とその規模を察知できるようにしている。スマートフォンの普及率は、特に若手の生産者で高く、次世代も見据えたプロジェクトだと言えそうだ。

 アナカフェのスタッフは、即時チャットに応対する体制をとっている。アナカフェが地方事務局を通じて、このアプリの普及に取り組んできた結果として、現在グアテマラ全国には約6000人のユーザーがいる。

法令遵守とSDGs啓蒙のために

 国内全340の自治体のうち204市町村で生産されるコーヒーは、グアテマラの一大産業だ。総面積305千ヘクタールの農地の約98%がアグロフォレストリーによる木陰栽培で生産されており、生態系に負荷の少ない農法が伝統的に実践されてきた。

 コーヒーのアグロフォレストリーにおいても1996年制定の森林法が適用されており、その第53条で樹木の伐採や間伐について規定している。コーヒー農園の日よけに使用される樹木の種類によっては薪や木材などの副産物を得ることが許可されているが、適正な伐採と農場管理のために、生産者にはアグロフォレストリーを行う農地を最寄りのアナカフェ事務局を通じて、国立森林研究所(INAB)に登録する義務が課されている。

 こうした国の法令の遵守やSDGsの理解を促すため、アナカフェは生産者に対して定期的にレクチャーを行っている。

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生態系保全と法令遵守などについてのレクチャーの様子。©Anacafé

生物多様性の象徴ジャガーと共に

 アナカフェはパンデミック中の2021年に国産コーヒーのロゴマークを刷新した。その意図するところをアナカフェ戦略的経営コーディネーターのマルタ・イレアナ・ビジャグラン・ラミレス氏が説明してくれた。

「両耳と頭部中央にコーヒー豆の絵柄が入ったジャガーが新しいロゴです。ジャガーは、グアテマラに生息する野生動物で、このロゴはコーヒーの未来を変える機敏で大胆な精神を表しています」

 従来のロゴはGUATEMALAN COFFEESという文字を帯状の赤緑黄青の4色が四角く囲った遊び心のないものであった。そこから一転、力強いイラストと共にフォントの大小で産地の多様性を示したことで、グアテマラのコーヒーの認知をこれまで以上に後押ししそうだ。

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刷新されたグアテマラ・コーヒーのロゴは一度見れば消費者の記憶に残る強さがある。©Anacafé

 202110月末にアナカフェ本部で行われた新しいロゴの発表式典には、アレハンドロ・ジャマテイ現大統領も出席。コーヒーが国の輸出品目としていかに重宝されているかが窺える。

 ロゴは、もっぱら海外でのグアテマラ・コーヒーのプロモーションに使われているが、海外への渡航者、または外国人旅行者を対象に、グアテマラ土産として販売するためにグアテマラシティの国際空港に設けられたアナカフェのコーヒースタンドでも、新たなロゴを前面に押し出し、ブランドアピールを行っている。

 今年は、すでにドバイ、アメリカ・ポートランドなどでのコーヒーイベントに参加。6月にはアテネでジャガーのロゴをあしらったブースで出展予定だ。

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グアテマラシティのラ・アウロラ国際空港内のアナカフェのコーヒースタンド。

 
写真・文/仁尾帯刀
更新日:2023/5/31
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