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COFFEE BREAK
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【コーヒーと世界遺産】国立西洋美術館
巨匠・ル・コルビュジエが、作り上げた心地よい空間。
国立西洋美術館
美術館のカフェにはさまざまな人が行き交う。待ち合わせに使う人。鑑賞の合間の休憩で、次は何を見ようかとプランを練る人。そして、絵画や彫刻の名作の余韻に浸りながら、一杯のコーヒーで心を落ち着かせる人も。
東京・上野の国立西洋美術館のカフェは本館にあり、その建物は近代建築の旗手であるル・コルビュジエが設計したことでも広く知られている。
川崎造船所初代社長の松方幸次郎のコレクションを公開する施設として、美術館が設立されたのは1959年のことだった。松方が蒐集した印象派の絵画やロダンの彫刻など約370点のフランス美術は第二次大戦中、フランスにあり、差し押さえられていた。それが戦後の日仏文化協定で日本に寄贈返還されることになり、美術館の設置が要望されたのだ。日本政府はその設計をル・コルビュジエに依頼し、彼の弟子である日本人建築家、坂倉準三、前川國男、吉阪隆正が建設に協力した。
光へのこだわりは、カフェの外側にも。
2016年、国立西洋美術館が、世界7か国にあるル・コルビュジエの17の資産の一つとして世界遺産に登録された。
「国立西洋美術館は、ル・コルビュジエが追求した〝無限成長美術館〟のコンセプトに基づいて建てられています」と話す山名善之さん。
「その考えは渦巻貝の構造から得たものです。1階中央にある19世紀ホールから2階の展示室へはスロープで移動する流れになっています。19世紀ホールを中心に螺旋を描くように外側に向かって延びる順路が設定されており、コレクションが増えたら外周部に展示室を増築できるような構造になっている。これは無限成長美術館の特徴です」
ル・コルビュジエは鉄筋コンクリートの特性を生かし、従来のような壁で支える建物ではなく、柱で支える新しい建築スタイルを実現した。
「国立西洋美術館の1階入り口部分のピロティは柱で持ち上げられた建物の下の、天井のある外部空間です。19世紀ホールには吹き抜けがあり、天井にある三角形の窓からたっぷりの自然光が入ってきます。ル・コルビュジエは建築空間の中に太陽の光を入れ込むことを重視し、中にいる人の心地よさを追求しました。カフェの窓の外側には、コンクリートの縦格子が並んでいます。これも室内に入る光に変化を与えるためのものです。また、本館の外壁やコンクリートの前庭はさまざまなサイズで区切られていますが、それはル・コルビュジエが考案した比例関係に基づく寸法で、視覚的に調和を感じるようなサイズになっています」
建築の見どころも多い国立西洋美術館。カフェには美術ファンのみならず建築ファンも多く訪れ、思い思いのくつろぎの時間を過ごしている。
1990年、東京理科大学卒業。フランス政府公認建築家、博士(パリ大学パンテオン・ソルボンヌ校)。ICOMOS他のメンバーとして建築保存、文化遺産分野で活動。『ムンダネウム』(翻訳・解説)、『国立西洋美術館----ル・コルビュジエの無限成長美術館』など。