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COFFEE BREAK
文化-Culture-
コーヒー焙煎士、パリの流儀 Vol.2
焙煎は、コーヒー豆が語り出すとき。
独自の賞味法を確立し、パリにおけるコーヒーの地位を刷新した焙煎士は、300人もの教え子を持つ「コーヒー界のゴッドマザー」でもある。美食の都で活躍する、個性豊かな仕事人たち。その流儀に迫る連載。
2001年より独自の「カフェオロジー」を提唱し、パリでコーヒーの地位向上に貢献してきた「ラ・カフェオテック」。創業者グロリア・モンテネグロさんはグアテマラ出身、元駐仏大使の経歴を持つ異色の焙煎士だ。
「カフェオロジー」は、コーヒーの文化・流通生産・加工・賞味を総合的に学ぶ学問。中でも賞味方法に特徴があり、抽出したコーヒーを15分かけて味わい、その風味の特徴をワインと近いボキャブラリーで分析・表現する。
「これほどの美食の国で、コーヒーの風味表現が存在しなかったのは驚きでした。コーヒーがワインに嫉妬して生まれたのが、カフェオロジーなんです」
2007年にはカフェオロジーを学ぶ場として、学校を開設。彼女の下で学んだ焙煎士やバリスタは、全世界で300人に上る。
コーヒーを飲む、その豆の声を聞く。
名産国で4歳からコーヒーを飲み、コーヒーチェリーをつまみ食いして育ったが、仕事でコーヒーに携わったのは40歳を過ぎてから。大使として自国産の生豆をPRするため、自ら焙煎を手がけたことがきっかけだった。
グロリアさんにとって、焙煎とは「コーヒーが語り出すこと」だという。
「生豆に潜むコーヒーの物語は、焙煎を経て、初めて明らかになります。育った土地、風土、日照、生産者の手間 暇。焙煎した豆を抽出して飲むと、その声がはっきりと聞こえてくる。コーヒーを飲むこととは、その豆の物語に耳を傾けることなのです」
そのため、豆を可能な限り丁寧に扱うのが彼女の流儀だ。豆はよく知る生産者からシングルオリジンのみ、11.4kgの専用麻袋で仕入れ、焙煎はそれをさらに2回に分けて行う。焙煎機はトルコのメーカー「Toper」の5kg用。
「業界ではドイツのプロバットが主流だけど、私には大きすぎるの」。大切に煎り上げた豆は、「ファインコーヒー」 と独自の名で呼ぶ。
「ファインコーヒーは胃に落ちるのではなく、頭にふわっと上っていくんです。優しく、ふっと消えてしまう儚い酸味があって、風味のバランスが安定している。口中をなめらかに満たし、無意識の記憶を呼び覚まします。そんなコーヒーを飲んでいるとき、人生は信じるに値する、と思える。その思いは人と人を繋げてくれます。いつかコーヒーにノーベル平和賞が授与されたらと、本気で思っているんです」
エスプレッソのフィルターフォルダー
エスプレッソこそ、コーヒーのエスプリだと言うグロリアさん。「コーヒーの一番いいところが出る抽出法。クレマの中には、その豆が持つアロマのすべてが込められていると思います」
オリジナルの生豆輸入用麻袋
通常生豆用袋は60kg入りだが、「豆は少量ずつ、丁寧に手渡すべき」との考えから、容量11.4kgのオリジナル袋を製作。ラ・カフェオテックのロゴをあしらい、仕入れはすべてこの袋で行う。
カップ
磁器の名産地リモージュと共同で行った、コーヒーカップ・コンテストの優勝作品。温度が下がらないよう二重構造になったエスプレッソカップを「素晴らしいアイデア!」と熱愛している。
ラ・カフェオテック
表に焙煎所兼ブティック、その奥に研修用のアトリエ。隣接してイートインスペースがある。
52 rue de l’ Hôtel-de-Ville, 75004 Paris
www.lacafeotheque.com