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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
平野レミ【料理愛好家】
仕事と私とコーヒーと。 Vol.20
平野レミ【料理愛好家】
元気いっぱいの料理コーナーが評判のレミさん。振り返ると、人生の折々にあったかいコーヒーの思い出が。たくさんお話していただきました。
コーヒーの思い出というと、真っ先に浮かぶのは、詩人でフランス文学者の父、平野威馬雄氏のこと。
「私が幼い頃からずっと、朝起きると父が必ずコーヒー豆をガリガリ挽いていました。淹れ方はドリップ式の日もあれば、サイフォンでボコボコやっている日もあり、いろいろ楽しんでいましたね。茶色になったネルのフィルターを庭に干していたのもよく覚えています。豆はブルーマウンテンが多かったかな。嬉しそうにコーヒーをカップに注ぎながら〝飲んでみるか?〟と私に勧めるのですが、苦くて絶対にヤダって、ずっと思っていました」
月日は流れ、今も自宅では日本茶党だが、仕事場や外食の際には不思議とコーヒーに手が伸びる。
「さあ撮影だ、という時には必ずコーヒーを飲みますし、外で食事、特に洋食の後には飲みたくなります。意識しているわけじゃないけれど、コーヒーがある意味、オン・オフのスイッチになっているのかもしれませんね」
これまでにコーヒーを使ったレシピも幾つか開発している。「お目覚めコーヒーご飯」は、インスタントコーヒーを入れて作るチャーハンだ。
「子供たちが小学生の頃、朝、眠いとか、学校行きたくない、なんていうので、よし、じゃあチャーハンでシャキッと目を覚ましてもらおう、と思ったのがきっかけです。コーヒーを少し加えると味に深みも出て一石二鳥です。『カフェ・オレ・パスタ』も子供のために考案しました。炒めた具材に水で溶いたインスタントコーヒー、トウモロコシ、パスタを加えて数分煮て、生クリームとチーズを加えます」
レミさんのコーヒーレシピのおかげか、二人の息子は大のコーヒー好きに。
「近所に住む息子夫婦の家から、〝お母さん、コーヒーが入りましたよ〟と連絡が来ると、いつも飲みに行っています。もう一人の息子夫婦は私を訪ねてくる時、自分たちが飲みたいからって毎回必ず新しいコーヒーを買ってくるんです。そう考えてみると、最近はわりと飲んでいますね、私(笑)」
名画で名を馳せた、ウィーンのカフェ。
約30年前に家族で旅したウィーンにも忘れられない思い出がある。
「息子が小学生と中学生の夏休み、和田さん(夫でイラストレーターの和田誠氏)が、ウィーンには映画『第三の男』で一躍有名になったカフェ・モーツァルトがあるから行こう!といって、みんなで行ったんです。映画が大好きな和田さんは大喜びで、ウィンナーコーヒーを飲みながら〝ウィンナーコーヒーはもともと馬車の御者が飲んでいたコーヒーで、ホイップクリームが上に乗っているのは、馬車の上でもコーヒーがこぼれないようにするためなんだよ〟と説明してくれました。それからしばらくして、私がシャンソンのアルバムを出す際に、『第三の男』で流れる『カフェ・モーツァルト・ワルツ』という曲を入れることになったのです。もともとは歌詞のない曲なのですが、和田さんが『俺が歌詞を書く』といって世界で初めて歌詞をつけてくれて......とっても素敵な歌が出来上がったんですよ。私の人生にたくさんの輝きをくれた和田さんには、本当に感謝です」
フランス文学者、平野威馬雄氏の長女として東京に生まれる。文化学院在学中より佐藤美子氏にシャンソンを学び、日航ミュージックサロンでデビュー。シャンソン歌手、料理愛好家としてNHK『ごごナマ』や『きょうの料理』ほかテレビ、ラジオで活躍。エプロンや「レミパン」などキッチングッズの開発も行う。最新作『新版 平野レミの作って幸せ・食べて幸せ』には故・和田誠さんの大好物が紹介されている。絵とデザインは和田誠さんによるもの。写真の猫のコーヒーカップも和田さん作。