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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
鈴木明子【プロフィギュアスケーター】
コーヒー店は、ほっとできる場所。
鈴木明子【プロフィギュアスケーター】
豊かな表現力が多くの人の心をつかんだ鈴木明子さん。その活躍を陰で支えていたのもコーヒー店でした。
朝、パンを食べる日にはコーヒーが欠かせません。忙しいと、ミルクをたっぷり入れたカフェオレだけで朝食を済ませてしまうこともあります。好きな豆の種類を一つ挙げるとすれば、マンデリン。酸味が控えめで、コクのある深い味わいが気に入っています。 長年、練習場にしている名古屋のスケートリンクの近くにコーヒー店があって、早朝練習の後にはここで朝ご飯を食べます。サンドイッチが美味しいんです。それに、お店の人がとても優しくて。いつも「頑張ってね」と声をかけてくださって、試合で優勝するとお祝いにコーヒーチケットをプレゼントしてくださったこともありました。逆に、調子が悪いときには何も言わずにただ見守ってくださる。私にとってはコーヒーを楽しむだけでなく、練習の合間にほっとできる場所。このお店の人たちの温かさが現役時代の大きな心の支えになっていたと思います。 名古屋には喫茶店のモーニング文化が定着していて、子供の頃から学校が休みの日には母と一緒によく近所の喫茶店に行きました。母はコーヒー、私はホットミルクを注文。すると、トースト、サラダ、ゆで卵やスクランブルエッグなど卵料理もついて、380円。コーヒー一杯の値段でたっぷりの朝ご飯を食べるのが当たり前でした。大学に進学して仙台で一人暮らしを始めてから、コーヒーを一杯頼んだだけでは朝ご飯が出てこない、そんな喫茶店があると知って、ものすごいカルチャーショックを受けたものです。
病から復帰して得た、新たな自信と喜び。
これまでプログラムに使用した曲の中でも、バンクーバーオリンピックのフリーの演技で滑った「ウエストサイドストーリー」は思い出深い曲の一つです。この作品に出合うまで、私は自分自身がこのようなストーリー性の強い曲を表現できるとは思っていませんでした。しかし、振付の先生に「あなたに合うから」と言われ、聴いてみるとすごくエネルギーが湧いてくる気がしたのです。そして練習するほどにどんどん曲が自分のものになっていって、最終的に演技が完成したとき、先生はこう言ってくれました。「あなたは病気をしていったんスケートから離れて、そこから復帰して再びスケートができる喜びを知った。その経験があるからこそ、生きる喜びを表現することができるのではないかしら」と。 このプログラムを見た多くの方から「生き生きとしたステップを見てすごく元気になった」とか「氷の上で命が躍動しているような感じ」という感想をいただき、ああ、私はそんな風に感じてもらえるような表現ができるんだと、何か大きな自信をいただいたような、新しい自分を発見することができたような想いがしました。それ以来、ストーリー性のある曲のほうが演じやすくなったのです。 現役引退後は振付師の仕事をしていますが、特に楽しいのはノービス(10歳~14歳)の子たちです。人それぞれ個性があって、綺麗に見える姿勢も違う。一人ひとりがそれまで知らなかった自分の魅力に気づいて、それでスケートが楽しいと感じてもらえるようにと思いながらやっていますが、まだ駆け出しで難しいことばっかりです。 フィギュアスケートは、自分が諦めなければ最後まで滑ることができる競技です。何度失敗しても、気持ちさえ投げ出さなければリカバーできる。まるで人生と同じだなぁって......そこがすごくいいところだと思っています。