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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
石井正則【俳優/タレント】
仕事と私とコーヒーと。 Vol.2
石井正則【俳優/タレント】
ドラマ『古畑任三郎』の西園寺守役の好演が多くのファンを惹きつけたマルチ・タレントの石井さん。1000軒に及ぶ喫茶店めぐりで得たコーヒー哲学とは?
劇作家・三谷幸喜氏もその演技力を高く評価する個性派俳優、中音域の美声が聞き手の耳に優しく響くナレーター。情報バラエティなどで見せるマルチなタレント。表現者としていくつもの顔を持つ石井正則さん。もともとは飽きっぽい性格だという彼が長年夢中になっているものが3つある。写真と自転車と喫茶店めぐりだ。
「カメラは50機以上持っています。すべてフィルム式で、現像もプリントも自分でやります。自転車はミニベロ(小径自転車)を13台持っています。巡った喫茶店の数は1000軒の大台に乗りました」
コーヒー好きが高じて8年くらい前に始まったという喫茶店巡り。過去の最高記録はなんと1日13軒。しかし、ただ闇雲に喫茶店を訪ねているのではない。彼の中には厳格なルールがある。
「喫茶店そのものを目指して出かけることはしません。何か別の用事があってたまたま訪ねる町の喫茶店をチェックするようにしているのです」
〝出会い〟こそが喫茶店巡りの重要な要素というわけか。仕事で初めての町に行く、見てみたい展覧会があるからある町に出かける。じゃあ、そこにある喫茶店を巡ってみようかということになる。もう1つの石井さんのこだわりは「喫茶店」というカテゴリーにある。カフェでもコーヒーショップでもなく、あくまでも喫茶店。
「ジャズ愛好家がジャズとは何かにこだわるのに似ているかもしれません。その定義を人にわかるように説明するのは難しいんですが、僕の中にはくっきりとした線引きがあるんです。以前、コロッケパンの美味しいパン屋さんが都内にあると聞いて出かけたら、その店の一角が喫茶コーナーになっていたことがありました。そこは僕にとっては立派な喫茶店だったので、訪ねた店の1つとしてカウントしました」
携わる人の人柄が色濃く出るのがコーヒーの魅力。
石井さんの3つの趣味に共通するのは「シンプルさ」。コーヒーは奥深い世界だけれど、その本質は、豆を煎って砕いてお湯を通すだけのシンプルなものだ。だからこそ、コーヒーには携わる人の人柄が色濃く出ると石井さんは言う。同じ豆を使ってもいれる人によって抽出されるコーヒーの味が違う。同じ店でも日によって、あるいは年月を経るにつれてコーヒーの味わいが変わる。飲む側のそのときどきのコンディションも1杯のコーヒーに影響を及ぼすだろう。喫茶店はそんな「シンプルで、人が出る」飲み物を媒介に人と人がつながっている場所だと思う。
「ある店では宝くじで大金を当てた人が興奮して話をしている。またある店では身なりのいい老紳士が外国人の若い女性にお金を貢ぐ話をしている。コーヒー1杯でたくさんの人の人生に触れられる。喫茶店って、全国のいろんな劇場で毎日さまざまな公演が行われているようなものでしょう。それが面白くってね」
自転車に乗っていて見知らぬ喫茶店の存在に気づくことも多い。気に入ったお店では許しを得て愛機で写真を撮らせてもらうこともある。石井さんの3つの趣味はそれぞれがうまくリンクして、表現者としての彼の仕事をさらに味わい深くしているようだ。