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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
舞の海秀平【元大相撲力士、スポーツキャスター】
コーヒーがつないでくれた、男の友情。
舞の海秀平【元大相撲力士、スポーツキャスター】
関取時代、「技のデパート」と呼ばれてお茶の間に親しまれた舞の海さん。コーヒーとの出会いも、そんな大活躍の現役時代中にあったのだそうです。
私がコーヒーを飲むようになったのは力士になってからでした。26歳くらいの頃だったと思います。私のちょんまげを結ってくださっていた床山さんに勧められたのです。彼は当時40代の半ばで、私とは親子に近いくらい年が離れているのですが、なぜか気が合うので、地方巡業に行ったりしたときも常に一緒に行動していました。この床山さんが大のコーヒー好きで、1日に10杯以上飲むような人なのです。ある地方巡業の際、一緒に喫茶店に入ったときに「まあ飲んでみなさいよ」と勧められたのが、私の人生初のコーヒー体験でした。
コーヒーと何気ない会話が、リフレッシュ・タイム。
私はそれまでぜんぜんコーヒーに興味がなかったのですが、勧められるままに飲んでみると、それがなんだかほっと落ち着くようなおいしさで......。ああ、いいもんだなと素直に思ったのです。それ以来、私もコーヒーが好きになりました。最初は砂糖もミルクも入れて飲みましたが、ほどなくブラックで味わうようになりました。
東京で本場所があるときは、相撲をとり終えると、相撲部屋が国技館から近いのでいつも歩いて帰るのですが、途中で喫茶店に寄って、コーヒーを1杯飲むようになりました。地方に行ったときも無意識のうちに喫茶店を探して、時間があるとコーヒーを飲んでいました。土俵と相撲部屋の往復だけだとなんだか息が詰まってしまうので、自然と喫茶店に足が向いてしまうのです。
床山さんと一緒にコーヒーを飲みながら、のんびり会話をするうちにだんだんと気持ちが休まってくる。そうすることで、取組後の緊張した身体と心がほぐされて、自分なりのストレス解消になっていたのだと思います。不思議なもので、力士仲間にはなかなか話せない話も、床山さんには話せたりすることもありました。本場所で負けたときにはとくに、その日の取組のことを引きずっていると次の日のためにもよくないので、なるべく意識して気持ちを切り替えるようにしていました。その意味でも、帰りに立ち寄る喫茶店のコーヒータイムは役に立っていたと思います。当時、喫茶店は本当に私にとって、〝憩いの場〟でした。
今もコーヒーは毎日必ず飲みます。朝からコーヒーを飲まないまま午後になって、一息つくと、なんだか忘れ物をしている気がして、「あ、今日はまだコーヒーを飲んでいないなあ」と気づくこともあります。
私にコーヒーの味を教えてくださった床山さんには、引退するときまでずっと頭を結っていただきました。彼は現在も相撲協会の床山のトップで活躍していらっしゃいます。私が引退してからも、人生の先輩として、変わらずおつきあいを続けてくださっています。夜、ちょくちょく一緒に食事をしたり飲みに行ったりするのですが、彼はお酒が飲めないので、バーに行ったときなどは私がお酒で、彼はコーヒーを飲みながら延々語り合っています。コーヒーがつないでくれたご縁ですね。ブラックなコクのあるおつきあいがずっと続いています(笑)。