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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
杉山 愛【元プロテニスプレイヤー】
私を取り戻す、大切なコーヒー・ブレイク。
杉山 愛【元プロテニスプレイヤー】
プロテニス選手時代、数々の輝かしい成績をおさめ、日本女子テニス選手の記録を塗り替えた杉山愛さん。その活躍の陰には一杯のコーヒーも......?。
私のコーヒー・デビューは15歳でした。テニスのジュニア選手としてオーストラリアに遠征したときのこと。外国の選手たちと一緒にレストランで食事をした後に、地元オーストラリアの選手がカプチーノを注文したのです。私はそれまでカプチーノという飲み物を知りませんでした。
テーブルに運ばれてきたのは、コーヒーの上に白い泡がたっぷり乗っていて、さらにその上にチョコレートかココアのようなパウダーがかかっている飲み物......なんて美味しそう! 思わず私も同じものを注文しました。ミルクの泡のまろやかな味とコーヒーのほろ苦さが口の中で溶け合って、なんとも新鮮な味わい。人生最初のコーヒーは、こうしてしっかりと私の記憶の中に刻まれました。
深みのある味と、香りがしっかりとあるタイプが好きで、普段はブラックでいただきます。胃腸が疲れているときには少し軽めのものを欲する傾向があるので、どんなコーヒーを飲みたいかが、自分の体調のバロメーターになっているようなところもありますね。
夕食後のコーヒーが、明日の元気をくれた。
プロテニス選手の頃からずっと、私にとってコーヒーはリラックスするためにとても重要な飲み物でした。テニスって、身体的にも精神的にもかなりタフなスポーツなんです。私の場合、現役時代は4大国際大会(全豪、全仏、全英、全米)をはじめ、毎週違う大会にエントリーしていたので、試合に負けたらすぐ次の大会の場所を目指して移動、移動の連続。試合時間は早ければ1時間を切りますが、長くなると3時間を超すこともあります。前の試合が終わる時間が読めず、自分のウォームアップのタイミングが計り辛いこともあったりと、予測や計画の通りにいかないことも多い。そのような毎日の中で、睡眠、食事、休養、質の高い練習などの総合力できちんとバランスをとっていかないと、なかなか安定した成績を出すことができません。オンとオフを上手に切り替えて、その日の疲れをどれだけその日のうちにとれるかということが、勝負のもう一つの大きな鍵を握っているのです。
外国での試合のとき、私はなるべく夕食は着替えて外に出て、レストランで食べるようにしていました。毎日ホテルと試合会場の往復なので、それが唯一のリフレッシュ・タイムだったのです。毎年のように同じ大会に出ていると、お気に入りの店もできるので、そこで美味しい料理を食べて、最後にゆっくりとコーヒーを味わう。その時間こそが、私の完全なオフタイム。極限まで張りつめた毎日の中で、ほっと心身ともにほぐされる至福のひとときでした。今はそこまでの緊張感を味わうことがないので、あのコーヒー・ブレイクがちょっと懐かしいですね(笑)。
引退後、解説のお仕事を始め、さまざまなことに挑戦している日々ですが、今の自分があるのはテニスがあったからこそですし、17年間のプロ生活の中で培ってきたものを、今度は自分が後進や周りの人たちに伝えていくことができたらいいなと思っています。