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COFFEE BREAK
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インタビュー-Interview-
宮本笑里【ヴァイオリニスト】
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懐かしいドイツの思い出、ピザ屋の濃いコーヒー。
宮本笑里【ヴァイオリニスト】
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物心ついたときから、コーヒーの香りが身近なところにありました。父が大のコーヒー好きで、祖父も一時期、喫茶店を経営していたことがあったのです。コーヒーを初めて飲んだのは、小学生のとき。オーボエ奏者だった父のレコーディング・スタジオをのぞいたとき、「飲んでみる?」と勧められました。もちろん、お砂糖とミルク入り。いまはお砂糖なしでエスプレッソやカプチーノをよく飲みます。カプチーノはきめ細かい泡立ちのものが大好き。ほっとするような美味しさがあると思います。家で豆をひいて、自分でエスプレッソをいれることもあります。
コーヒー関連の本もよく買います。地域ごとのカフェや夜遅くまでやっているカフェを特集した実用的なものから写真集まで、見るだけでもわくわくして行ったような気分になれます。忙しくてなかなかカフェに行けないときは、それで疑似体験することも(笑)。その中でも、『東京カフェ散歩』(※1)は最近の一番のお気に入りです。これは、96店ものカフェや喫茶店が、味わい深い写真と文章で紹介されているフォトエッセイ。写真の色合いがあたたかく落ち着いた雰囲気で、心をほっと和ませてくれます。ページをめくりながら、次はここに行きたいなと思いを巡らせるのも楽しいですね。
『パリのギャルソン』(※2)には、カフェやブラッスリー(庶民的なレストラン)のギャルソンたちが登場します。ギャルソンの制服って、どれも同じだと思っていたのですが、よく見るとお店によってさまざまなんですね。こんなふうにギャルソンを見比べたことはなかったので、とてもおもしろい。ヨーロッパのカフェのギャルソンは、みなさん背が高くて絵になるというか、本当にかっこよくて、お店の中に立っているだけでも映画を見ている気分です。
練習漬けの身体を、目覚めさせる一杯。
東京や外国でたくさんのカフェに行っていますが、いまも懐かしく思い出すのは、デュッセルドルフにあるピザ屋さん。中学生の3年間、ドイツに住んでいたときに家族でよく行ったお店で、コーヒーの味が絶妙です。とにかく濃い。でもその濃さが細胞を目覚めさせてくれるような感覚で、ヴァイオリンの練習で疲れた身体にとてもいい刺激をもらっていました。
当時はインターナショナルスクールに通っていて、学校が終わって家に帰るとまず英語の宿題。それが終わると毎晩5時間くらいヴァイオリンの練習でした。宿題の勢いでアドレナリンが出ていたのか、ほとんど寝ない勢いで毎晩練習漬け。そんな日常で、週末に行くピザ屋さんのコーヒーが身体に沁みたのかもしれません(笑)。単に味ということでいえば、いまはもっと美味しいコーヒーをたくさん飲んでいるのですが、私には、なぜかあの味が忘れられないのです。
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