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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
石丸幹二【俳優】
仕事と私とコーヒーと。 Vol.21
石丸幹二【俳優】
ミュージカル界を代表する俳優の一人、石丸さん。小学6年生から続くコーヒーとの親密な関係について、じっくり聞かせていただきました。
「朝、起きて顔を洗う前にエスプレッソを飲む。それで1日が始まります」
俳優デビューから31年。ミュージカルや演劇の舞台、映像、音楽分野でも活躍を続けている。かたやコーヒー通としての歴史は、俳優人生よりもさらに十数年を遡る。
「小学6年生の時でした。私はテレビで見たサイフォン式のコーヒーに密かに惹かれていました。お湯がポコポコと湧き上がってコーヒーの粉と混ざり合い、茶色い液体がフラスコに落ちてくる。そして、それを待っている間に、徐々にコーヒーの香りがしてくる......と。私にはその一連の工程が厳かな儀式のように感じられ、コーヒーを飲むならあれがいいと思っていたのです」
ある日、楽譜を見に銀座の楽器店に行った帰り、それらしい店を見つけたので意を決して入ってみた。
「そこは水出しコーヒーの専門店。サイフォンではなく、巨大なガラスのタンクからポタ、ポタとゆっくり落ちる水で抽出するコーヒーでした。当ては外れましたが、お店の人は子供である私にも普通に対応してくれ、初めて喫茶店でコーヒーを味わうことができました。優しい味で、店内の雰囲気もとても良かったのを覚えています。子供心にコーヒーには大人の飲み物のイメージがあり、銀座の喫茶店に一人で行くなんて、早く大人になりたいという思いが強かったのかもしれません」
そうして始まった、本格的なコーヒーとの関わり。音楽大学の学生時代には新しくできたおしゃれな喫茶店が気に入り、楽器の練習の合間に通ってゆっくりコーヒーを飲んでいた。しかし、劇団四季に入団後は生活が一変する。
毎日欠かせないコーヒー、特に深煎りがお気に入り。
「毎日がハードで、朝から晩まで稽古場か劇場に籠っていました。コーヒーを淹れて楽しむような心の余裕はなかったけれど、毎朝自宅でガリガリと豆を挽くのが日課。今日の自分に気合を入れるような感じでしたね」
さまざまな豆を試してきて、一番フィットしたのは深煎りだった。
「フレンチローストやイタリアンローストなど、黒くて油脂が滲み出ているような豆が徐々に好みになってきました。濃い味つながりでエスプレッソも大好きになり、よく飲んでいます」
今や稽古場や楽屋、仕事先でもコーヒーは欠かせない。
「カフェで買って持ち込んだり、劇場にカプセル式のコーヒーメーカーを持参して、皆にふるまうことも。コーヒーを介してコミュニケーションを取ったり、演技の練習では、このキャラクターならどんな風に飲むだろうかとカップの持ち方をあれこれ試してみたり。自分と全く別の人格を生きるのが芝居の楽しさでもありますから」
50代の今、一杯のコーヒーは、落ち着いた時間の"相棒"のような存在だ。
「肉体の変化は劣化とは限らず、特に声は年齢とともに、新たな姿を見せてくれます。ありがたいことに私自身、年を重ねてこそ向き合える歌のジャンルが広がってきているんです。歌は言葉を音楽にのせて相手に届けるもの。その世界を一生かけて追究していきたい。でも焦らずに、傍にはいつもコーヒーがある。そんな人生をゆっくりと歩んでいこうと思っています」
1965年愛媛県出身。東京音楽大学でサックス、東京藝術大学で声楽を学び、90年、ミュージカル『オペラ座の怪人』でデビュー、現在に至るまでミュージカル界を牽引する俳優として活躍。現在は、舞台、映像、音楽と多方面で活躍。2017年よりテレビ朝日系「題名のない音楽会」の司会を務める。今年は大河ドラマ「青天を衝け」に大久保利通役で出演。さらに、デビュー30周年を記念するオーケストラコンサートを春から夏に全国で予定している。
スタイリング/米山裕也(CreativeGuild) ヘアメイク/中島康平