COFFEE BREAK

世界のコーヒー

世界のコーヒー-World-

2018.06.15

Vol.74 イギリス:クォーター・ホース・コーヒー(Quarter Horse Coffee)

世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
英国に増えているコーヒー愛好家と本格的な焙煎所つきカフェ。今回は、バーミンガム唯一のカフェ兼焙煎所を訪ねました。

焙煎所と客席の間にガラスを設置するべきか? それが問題だ。

Vol.74 イギリス:クォーター・ホース・コーヒー(Quarter Horse Coffee) quarterhorsecoffee.com

イギリス:クォーター・ホース・コーヒー

店内は、右手がカフェカウンター、中間の柱部分が客席、左端が焙煎所とパッキング作業場と1/3に区切っている。白で統一され、すっきりとした空間のなかで、各々が共存している。焙煎音が心地よいバックグラウンドミュージックだという顧客もいるほど。


 バーミンガムは、200年前に興った産業革命で繁栄し、英国第二の都市規模を誇る。その街で唯一の焙煎所兼カフェとし人気を集めるのは「クォーター・ホース・コーヒー」だ。32歳でアメリカ出身の焙煎マスター、ネイザン・レッツァ氏が、英国人の妻の故郷に3年前オープンした。中心地から少々離れてはいるものの、朝8時の開店から学生、オフィスワーカー、フリーランサーたちがひっきりなしに訪れ、客の流れが途切れることはない。その秘密は?「焙煎所付きのカフェが珍しいということと、ぼくが焙煎するコーヒー豆が美味しいから!」とレッツァ氏は笑う。

イギリス:クォーター・ホース・コーヒー

[上左] 英国焙煎チャンピオンを目指すレッツァ氏が愛するオランダのギーセン焙煎機は、テクニックを要する達人向けロースターだ。[上右] ご自慢のダークホース・エスプレッソ豆を使うラテ、3ポンド。奥は、人気の朝食メニュー、天然酵母トーストのアボカドマッシュ、5.10ポンド。[下] 焙煎豆の味を純粋に堪能したい人が昨年から増え出し、注文が多くなったフィルターコーヒー、2.90ポンド。


 店内に入ると、右手にカフェ、中心に客席テーブル、左に焙煎エリアが設けられ、仕切りがないオープンプラン形式だ。そのため開放感あふれる空間になっており、これが客に愛される理由のひとつだ。ただし、何事も一長一短。焙煎機から発生される作業音がそのまま天井が高い店内にエコーする。客から苦情はでないのかと気になるが、レッツァ氏は「経営者としその心配をしたけれど、顧客は焙煎所だからそういう音は想定内だと理解を示してくれ、文句がでたことはない。なによりも焙煎作業中は、コーヒー豆の売上げが跳ね上がり、これには驚きます」焙煎過程を実際に見ることで、コーヒーを丁寧に淹れることに興味がわくのか、焙煎された豆、ドリッパー、ペーパーフィルター、ドリップポットなど一式を揃える客が着実に増えているとも話す。

イギリス:クォーター・ホース・コーヒー

[左] 店内に保管する生豆は衛生面を考慮し、3段のパレット台に置いたまま。床は常に清潔に保たれている。[右] 歴史的建築保存指定がかかっている建物のため、ダクト出口は店の裏側に設置。街並の景観保護を重視する英国ならではの処置である。


 現在、この店では週200キロという少量の焙煎量のため、一日4時間、週に2日間の短時間の焙煎稼働で対応できる。ただし、近い将来には焙煎量が週300〜350キロに増える可能性があり、そうなると早急なる防音対策が求められる。まずは、焙煎日を週2日から3日にする案がある。または、長期的な対策とし、焙煎所と客席の間に複層ガラスを設置することも考えられる。これで作業音をシャットアウトできるが、カラス越しでは客とのコミュニケーションがとれなくなる可能性がある。話し好きで常連客との対話を大切にしたい彼にとり、これが目下の悩みの種である。
8月には、14人のロースターが技を競い合う「英国・焙煎チャンピオンシップ」に出場し、優勝を狙っているほど焙煎への情熱を持ち合わせるレッツァ氏。焙煎所ならではの職人的な雰囲気を保ちつつ、カフェの客にも心地よく過ごしてもらうためには、どうすればよいのか。まだ手探り中である。

〈カフェ情報〉
クォーター・ホース・コーヒー Quarter Horse Coffee quarterhorsecoffee.com 88 - 90 Bristol Street, Birmingham B5 England TEL.44 (0)121- 448-9660 営業時間 8:00〜18:00(月〜金) 9:00〜18:00(土・日・祝)
*1ポンド=約154円(2018年5月現在)
写真・文=かがわみちこ(ロンドン市在住)
更新日:2018/6/15
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