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COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
Vol.64 フランス:La Fontaine de Belleville
今月から欧米の「焙煎所が経営するカフェ」を紹介します。
フランスでは長年カフェ経営と焙煎は別業種と考えられていましたが、サードウェーブコーヒー到来の影響から、二つの業種が融合した新しいタイプのお店が登場しています。
今回は若き焙煎士チームがスタートさせたカフェを訪ねます。
美味しいコーヒーを、普通のカフェでも。
Vol.64 フランス:La Fontaine de Belleville
lafontaine.cafesbelleville.com
ここ5、6年、パリ市内に雨後の筍のように数を増やしたサードウェーブ系コーヒーショップ。その多くの店に豆を提供しているのが、パリ北部にある「ベルヴィル焙煎所」だ。30代の若き焙煎士たちが生産地を訪ねて集めたシングルオリジン豆は、その品質はもちろん、「良いものだけを、適正価格で販売する」という善意のビジネスモデルでも支持を集めている。
その「ベルヴィル焙煎所」チームが2016年5月、パリ10区にカフェ「ラ・フォンテーヌ・ド・ベルヴィル」をオープンした。庶民的な界隈で長年続いた物件を買い取り、内装にはほとんど手をつけず、古き良きカフェ・パリジャンそのままの雰囲気で開業。一見よくあるカフェで最高に美味しいコーヒーを出すと、すぐに人気店となった。それこそまさにベルヴィル焙煎所チームの狙いだったと、共同経営者の一人トマ・ルウーは言う。
「良質のコーヒーを提供する場所は、コーヒーショップでなくともいい。どこにでもある普通のカフェでもできることなのだと示したかったんです」
このコンセプトの背景には、フランスのカフェの特殊な事情がある。コーヒー、特にエスプレッソはパリのカフェの主力商品でありながら、「いかに安く、手軽に出すか」が重視され、その品質は長年重視されずにきた。カフェを訪れる人がエスプレッソを頼むのは「そこで時間を過ごすため」もしくは「目覚ましにカフェインを摂取するため」で、「美味しいコーヒーを飲むため」という意識は存在しなかったのだ。コーヒーショップの隆盛で豆の品質や抽出法に関する消費者の意識は高まったが、大多数の街場のカフェでは依然、安価なロブスタ種の豆を使った苦みの強いコーヒーが提供されているのである。
「僕たちフランス人は、あのカフェの雰囲気が大好きなんです。他国にもあるコーヒーショップではなく、フランスならではのカフェで美味しいコーヒーを飲みたいと思ったのが、このお店の始まりなんですよ」
店づくりの核に据えたのは、焙煎所と同じ「良いものだけを、適正価格で」というポリシー。材料は全てチームで味見し、生産者から直接購入している。ビールはパリの小規模生産者、フルーツジュースはドイツのオーガニックブランド、チーズはフランス西部の農家...と一つ一つ吟味した取引先は250件にも及ぶ。「取り扱う商品に関しては、とにかく透明性が欲しかった。どう作られているかがしっかり把握できないものは、"本物"ではありませんから」
厳選した材料で織りなすメニューの軸は、カフェ・パリジャンの伝統的なラインナップ。エスプレッソ、アロンジェ(アメリカン)、ノワゼット(エスプレッソに少量のミルク)、カフェ・クレーム(カフェオレのパリ的な言い方)というコーヒーメニューの並びは、年齢問わずパリジャンには馴染み深い。パリのカフェの伝統に則り、ビールやスピリッツなどアルコール飲料も扱っている。フードメニューにもタルティーヌ(バゲットにジャム)やパンペルデュ(フレンチトースト)、クロック・ムッシュー、ハムサンドとカフェの定番が揃うが、こちらにはミューズリーやキヌアのサラダなど今風のヘルシーメニューも織り交ぜられ、経営陣の若々しい感性をさりげなく覗かせている。
「いつかはカフェの激戦区、サンジェルマンデプレにも支店を出したいですね」。ルウーはそう目を輝かせる。保守的な店が集まる界隈でこそ、新しいカフェのあり方を示したい──勢いに乗る焙煎所チームの今後の挑戦が、ますます楽しみだ。
La Fontaine de Belleville
lafontaine.cafesbelleville.com
La Fontaine de Belleville
31-33, rue Juliette-Dodu
75010 Paris
Tél +33 9 81 75 54 54
営業時間 8時〜22時
定休 なし