- TOP
- COFFEE BREAK
- 世界のコーヒー
- Vol.47 ドイツ:THFウェルカム・カフェ
- Vol.47 ドイ…
COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
Vol.47 ドイツ:THFウェルカム・カフェ
今月のドイツは、「難民」がテーマです。メルケル首相がシリアなどからの難民の受け入れを発表してから、1年以上が経ちました。2015年だけで89万人の難民がドイツに来ているといわれています。ベルリン市内には数多くの難民収容施設がありますが、じつは、ボランティアでもしていない限り、ベルリンっ子が難民と言葉を交わすことはほとんどありません。
今回は、難民とベルリンっ子の間に横たわる壁を壊すのに大きな役割を果たしている、難民収容施設のカフェをご紹介します。
一杯のコーヒーが、難民とベルリンっ子をつなぐ。
Vol.47 ドイツ:THFウェルカム・カフェ(THF welcome Café)
www.thfwelcome.de
ベルリン市最大の難民収容施設、テンペルホーフ空港跡地。その東棟にある6つの飛行機格納庫跡地(広さは3670〜6350㎡)を宿泊、食堂、リクリエーション空間として、現在も2900人の難民が暮らしている(2016年12月現在)。
16年4月、第一格納庫の一角にカフェがオープンした。コーヒーを入れてくれるスタッフは、ここで暮らしている、もしくは以前ここに暮らしていた難民たち。組織しているのは、ボランティア団体「THFウェルカム」だ。
「この場所が収容施設になってからずっとボランティアをしていて、支援団体を立ち上げました。その最初の段階から、カフェは必ず作りたいと思っていたんです」と「THFウェルカム」主宰のリヒャルト・レマーさんは言う。ここで暮らすことを余儀なくされた人たちに、少しでもリラックスできる場所を提供したい。また、隔離されたこの場所をベルリンの日常へとつなげたい----難民とベルリンに住む人たちが出会う場になれば、と考えた。
カフェで働くスタッフ、アフガニスタンから来たカリムとファルザットは、もう1年以上この空港の収容施設にいる。「ドイツ語の勉強にもなるしね。ここを出た知人が訪ねて来てくれることも多いんだ」。ファルザットは18歳。両親を亡くし、ドイツにやってきた。カリムは24歳。カブールに残して来た家族と月に1回ほど電話するのが楽しみだという。書類や法的手続きの嵐に翻弄され、いつここを出られるかも、送り返されるかもわからない不安な暮らしのなか、このカフェでコーヒーを飲んで、ほっと一息入れられるのが嬉しいそう。
カフェの横には寄付された洋服の配布所や、ミシンが置かれたコーナーも。本国では仕立て屋をしていたと言う人も多く、自分で縫い物をしたいという要望を受けてのことだ。ドイツ語や各国語の本を集めた読書コーナーもあり、不定期にドイツ語講座も開催されている。これらの活動全てが個人のボランティアと寄付によって支えられており、国や市からの援助はない。
カフェにつながる格納庫跡地には、ベルリンのサッカーチームのキャプテン、ヴェダド・イビシェヴィッチが16年11月に贈ったミニサッカーコートがあり、子どもたちの遊ぶ楽しげな声が絶えない。自身もボスニア難民としてスイスとアメリカに暮らしたイビシェヴィッチは、自らの体験を通して、お返しをしたいという気持ちで、このコートをプレゼントしたそうだ。
しかし、リヒャルトさんは、このカフェが早くなくなることを願っている。
「皆がベルリンの街に受け入れられ、ここを去る。ボランティア団体も必要なくなって、解散する----それが理想です。でも残念ながら、少なくともあと1年、援助は必要でしょうね」。
THFウェルカム・カフェ(THF welcome Café)
Columbiadamm 10, 12101 Berlin
www.thfwelcome.de
営業時間
13:00〜19:00(月〜水・金・土) 15:00〜19:00(木) 日休
女性のみの時間あり 10:00〜12:30(月)、10:00〜15:00(金)