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COFFEE BREAK
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Vol.20 イギリス:「オールド・スパイク・ロースタリー」(Old Spike Roastery)
ホームレス支援のカフェで、社会を変える。
Vol.20 イギリス:「オールド・スパイク・ロースタリー」(Old Spike Roastery) www.oldspikeroastery.comロンドン南部のペッカムは、都市再開発のおかげで若者の流入が多く、新規の店が次々と開業しているエネルギッシュなエリアである。ペッカム・ライ公園に面する自家焙煎のカフェ「オールド・スパイク・ロースタリー」も、今年3月にオープンしたばかりの新顔だ。 「オールド・スパイク・ロースタリー」の誕生は、ジェマル・エゼルさんがロンドン橋駅前でビッグイッシュー誌(ホームレスが売る雑誌)をひとりのホームレス女性から購入するところから始まる。定期的に購入するうちに、女性の名前はルーシー、3年前にルーマニアからロンドンに出稼ぎに来て以来、ホームレスの生活を送っていることを知る。
30歳になり、人生の岐路に立ったジェマルさんが決意したのは、ホームレス支援が目的の非営利団体カフェを立ち上げることだった。友人リチャード・ロビンソンさんと一緒に設立したカフェでの最初の支援候補者は、もちろんルーシーさん。支援内容は、カフェでバリスタ修行と接待業を6ヶ月間特訓し、技術を身につけ、のちには外食産業で定職に就き自立した生活を送ってもらうこと。「バリスタなら短期間の集中トレーニングで一定のレベルに達することができるから"卒業"もはやい」とリチャードさんは説明する。
このカフェでは、研修中に時給9ポンドを支払う。これはホームレスの人に定収入を得る喜びを味わってもらうためである。加えてルーシーさんに英語力をつけるため、英語学校に通学してもらう費用も抱える。将来の自立生活を見通した支援レベルは高いと言えよう。
また、ジェマルさんは確実な売り上げを確保するために、カフェで焙煎するコーヒー豆を通信販売する戦略も立てた。ブレンド名は、18世紀、ホームレスの人々に慈愛を注いだ聖人ベネディクトにちなみ「ベネディクト」と命名。カフェの趣旨に賛同する固定購買客がすでに500名近くにも増えており、草の根パワーを発揮している。
この物語はここで終わらない。2人組は、コーヒー豆の売り上げを次なる支援プロジェクトに投資しているからだ。それは、オート三輪を移動式カフェに改造し、ホームレスの人がコーヒー販売をし、収入を得てもらうこと。「一杯のコーヒーから社会を変える」と意気込むジェマルさんとリチャードさんである。
営業時間 7:00〜14:00(水〜金)、9:30〜17:00(土、日) 休:月・火(焙煎のため) ●チェンジ・プリーズ(カフェを運営する非営利団体) www.change-please.co.uk