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COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
都市封鎖とともに、豆の売り上げが20倍に ロンドンから
都市封鎖とともに、豆の売り上げが20倍に。 逆風を追い風に変えてくれたのは、近所の常連客。
Vol.128 イギリス・ロンドンから。 フィリピンのタガログ語でコーヒー・ハウスを意味する「カピハン」の創立は、母の昔話から始まる。フィリピンからイギリスに移住した母が繰り返し繰り返し語ってくれた故郷フィリピンの思い出が発端なのだ。かの地で毎朝祖父が嗜んでいたバラコ(農民が好む濃厚なブラックコーヒー)の描写は、幼い子供たちに強い印象を残したと思われる。
長男デヴィットと次男ナイジェルは、ロンドンで金融マンと弁護士という安定した職種に就きながら、母が語っていたバラコのことが頭から離れず、ついに脱サラを決意。二年前にカフェ「カピハン」開業に到った。ただし、単なるカフェではない。生まれも育ちもロンドンでありながら、兄弟は自らのアイデンティティーを重んじ、店で使う豆はフィリピン産を中心に東南アジアから輸入。また、店内で販売するパン・ペストリー類は、母からフィリピン風レシピを教わった末娘ローズマリーが早朝から仕込み、焼いている。
移民が多く多様性にあふれるロンドンのなかでも、フィリピン産の豆やフィリピン風ペストリーを提供する珍しさもあり、たちまちの間に評判が広まり、店は順風満帆に......と言いたいところだが、実は開業半年でコロナ禍に遭遇してしまった。近所の有名な建築事務所のスタッフや王立美術大学院の美大生たちで連日賑わっていたカフェだが、都市封鎖とともに客が退いた。「家族全員で落ち込みましたが、救いは身近なところにあったのです」と次男坊。
住宅地の片隅で家族経営している小さなカフェを応援しようと、在宅勤務になったご近所さんたちが都市封鎖中でもテイクアウトに来てくれるようになったのだ。おまけに、フィリピン豆の味に惚れ、豆を購入するファンもじわじわと増え始めた。店頭販売している豆は一週間に数袋しか出なかったのに、都市封鎖とともになんと20倍にまで売り上げが伸びた。サブスクリプションで定期的に豆を購入してくれる常連客も徐々に増え、順調な動きが見えてきた。これに自信を得た兄弟は、ついに焙煎機の店内導入を決断し、この6月にはやくも設置工事が始まる。「背中を押してくれたのは、辛い時にサポートしてくれたご近所さんたち。コロナという逆風を追い風に変えてくれた人たちの顔がみえる」と目を細めて喜ぶ一家だ。
なお「カピハン」の快進撃はまだ続く。好評を得ている末っ子担当のフィリピン風パナデリア(ベーカリー)部門を近々独立させるのだ。カフェ近くで物件を見つけ次第、今年の秋までにはなんとかパナデリアを開業させたいと意気込んでいる。毎朝開店と同時にカフェ前に行列が出来るように、新しいパン屋にも焼きたてパンを求め、地元民が並ぶ様子が今から目に浮かぶ。
Kapihan (カピハン) 13A Parkgate Road, London SW11 England www.kapihan.coffee 営業時間 7:30~15:00(火~金) 8:00~14:30(土、日)(休)月、祝