COFFEE BREAK

世界のコーヒー

世界のコーヒー-World-

2020.02.15

顧客への運搬にヨットや自転車も活用し環境に配慮 ドイツ:オロモ

 世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
 東西ドイツが統一して30年。再び統一ドイツの首都となったばかりのベルリンは、実は新しいビジネスアイデアが次々と生まれる場所でもありました。近年は欧州スタートアップのメッカとしても知られています。 SDGsをテーマとしたコーヒービジネスを追うシリーズ、今回はサステイナブルなコーヒー・スタートアップの中から、環境に配慮しながら美味しいコーヒーを提供する「オロモ」を紹介します。

顧客への運搬にヨットや自転車も活用し、環境に配慮。

Vol.104 ドイツ:オロモ(OROMO) oromo.coffee

ドイツ:オロモ(OROMO)

環境に最大限配慮しても誰も買わない高価格になっては意味がない。そのバランスと手段を模索中だという。今月は、オンライン販売だけでなく、オンラインとリンクした試着専門店にも実験的に出店。在庫が必要ないなど、メリットが多い。お客は商品についたQRコードからオンラインストアに入り、購入する。


「目標は、欧州市場のトップになること!」と、言うのは、2019年初め、ベルリンで設立された、スタートアップ「オロモ」の創業者、フィリップ・フォン・ハーヴェ。
 若干21歳で最初のスタートアップを立ち上げ、AIを使ったソフト開発の分析プラットフォームなど、これまで数々のテック系のスタートアップを成功させてきた彼が、なぜコーヒーに興味を持ったのだろうか。
「実は、ドイツ人の75%がオフィスで飲むコーヒーに満足していないというアンケート結果もあり、特にオフィスでの高品質のコーヒーの需要はいま急激に高まっています。私は、コーヒーオタクではないからこそ、マニアックすぎず、多くの人に美味しいと思ってもらえるコーヒーをシンプルに提供できるんじゃないかと思ったんですよ!」と、フィリップさんは笑う。

ドイツ:オロモ(OROMO)

[左]実験的に出店中のカフェでは、生分解可能かつCO2ニュートラルなカップを使用。リユースカップなどのサービスも考えたが、販売する量を考えると、こちらの方が環境負荷が低いと考えたという。[右]カプセル式コーヒーメーカーは、ポンプ圧力で滑らかなクレマのコーヒーを入れることができる反面、使い捨てのカプセルが大量にでるという批判が強かった。100%生分解可能なこのカプセルで、その問題も解決。


「オロモ」では、コーヒー豆自体の品質、味にこだわるだけでなく、できるかぎりゴミを出さないゼロウェイストを目標に、輸入、パッケージング、配送まで、サスティナブルな方法で行っている。
 コーヒー豆の作り手からできる限り直接仕入れて、オンラインでオフィスや個人に販売するーという形態は、前回の「コーヒーサークル」と同じだが、コーヒー豆の精製方法には、現地で貴重な水をできるだけ使わない、ドライメソッドを採用。また、ドイツへ輸入する際の運搬方法も、CO2排出量を考え、ヨットで運ぶなどの試みも行った。
 顧客への運搬は、自転車だ。美味しさを損なわないため、焙煎からすぐ、大量注文のオフィス向けの場合でも、遅くとも1週間以内に届けるのが鉄則。また、カプセル式コーヒーメーカー用のカプセルも、これまでは生分解可能な場合マシンの圧力に耐えられるものがなかったが、オロモでは最近開発されたばかりの100%生分解可能なパッケージをいち早く取り入れ、好評を得ている。

ドイツ:オロモ(OROMO)

[左]現在はB2B、オフィスへの大量通販が主のため、再利用可能な大きなタンクにまとめて入れてゴミを削減。[中央]創業者のフィリップ・フォン・ハーヴェ(左)と、COO(最高執行責任者)として、販売部門などの実務を担当するクリストフ・ガイディーズ。[右]2020年からは、パッケージもイスラエルのスタートアップが開発した、コーヒー豆の香りを逃さず、生分解可能なものに変更する予定だ。悩ましいのが、銀色のビニール剥き出しのものの方が生分解が簡単だが、紙を貼ったものの方が「エコっぽいイメージ」があり、顧客からの高感度が高いということだという。


「ミレニアル世代の消費行動において、環境への配慮は最重要事項。しかし、何かを我慢したり、買わないという形ではなく、オプションとしてサスティナビリティのあるものを提示し、それを選んでもらう。それが自分も含めてミレニアル世代の、そして今後主流となっていく消費の在り方ではないでしょうか」

オロモ(OROMO)
oromo.coffee
*1ポンド=約122円(2020年 1月現在)
文=河内秀子
写真=Gianni Plescia (ベルリン市在住)
更新日:2020/2/15
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