COFFEE BREAK

世界のコーヒー

世界のコーヒー-World-

2016.10.01

Vol.43 スイス:ノイマルクト(Neumarkt)

世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
スイスは世界屈指の演劇国として知られています。観客動員数は年間500万人近くという統計も。その劇場内に生まれたカフェも演劇と共に育まれてきました。「チューリッヒにノイマルクト劇場あり」といわれる名門劇場は、近年新たな局面を迎えて注目を浴びており、劇場内のカフェもにぎわいを見せています。

演劇もコーヒーも、パッションが大切。

Vol.43 スイス:ノイマルクト(Neumarkt) wirtschaft-neumarkt.ch/barcafe

coffeebiz_43_main

旧市街の中でも最も古いといわれる由緒ある建物。13世紀から使われている部分もあるという。冬の寒い日も外で飲めるテラスがあり、劇場にくる客はここで待ち合わせをする。「ノイマルクトのテラスで」が合言葉。終演時間には役者や作家、パフォーマーなど文化人で賑わうカフェだ。


 ノイマルクトはチューリッヒの旧市街にある。誰もが知る劇場の名前であり、カフェの名前でもある。 「チューリッヒにノイマルクトあり」と言われるようになった背景には、スイスの演劇界の鬼才バルバラ・ヴェバーとラファエル・サンチェスの存在がある。彼らは国内外の舞台を渡り歩き、インディペンデント系で特別な演劇人として世界中で知られるようになった。そして近年、ノイマルクト劇場の共同ディレクターとして着任したのだ。ここノイマルクト劇場で二人の作品が上演されると、さまざまな世代の観客が押し寄せ、劇場内のカフェの賑わいもさらに増しているというわけだ。

ノイマルクト

[左] 建物の右側が劇場の入り口で、これがチケット売り場。アバンギャルドな作品にもさまざまな世代の観客が訪れる。[右] 常連客で賑わうカフェ。午後になるとチョコレートケーキ(8CHF)とコーヒーを楽しむお客さんも。夜には観劇後の興奮醒めやらぬトークが繰り広げられる。


 しかし、カフェの人気を支えるのは、劇場の観客だけではない。評判のコーヒーを目当てに常連客が引きも切らず訪れる。ノイマルクトで扱うコーヒー豆は2種類。カフェのオーナー、レネ・ジマーマンさんが信頼する有機農園のコーヒーを厳選しているそうだ。
「私にはノイマルクトの演劇に負けないくらい、質の高い味わいのあるコーヒーをいれているというプライドがある。演劇もコーヒーも、作り手のパッションがなければ意味がないんだ。このふたつはスイス人には不可欠なものだね。うちでは、1日500杯のコーヒーを出してるよ」。
 劇場内にはやはり有機野菜を売りにしたイタリアンレストランもあって、アバンギャルドな演劇を観た後に、有機野菜料理とコーヒーで癒されて語り合う、そんな流れを好むファンも多いという。

ノイマルクト

[左] レネさんが考案したビアジョッキ入りのカプチーノ。8.40CHF。[右] 店内には劇場で活躍する演劇人たちのデッサンや写真、古いポスターなどが飾られている。とても雰囲気があって、長居したくなる空間だ。


 メニューにはエスプレッソにカプチーノといたってシンプルな定番が並ぶが、小型のビアジョッキ入りカプチーノはちょっと変わっている。レネさんが毎朝、眠気を取るのに2杯のカプチーノを飲んでいたところ、ある日、小型のビアジョッキにたっぷり入れて飲めばいいじゃないか!と気づいたのだそうだ。やってみたらこれが受けた。ユニークな存在として人気メニューのひとつとなっている。

〈カフェ情報〉
ノイマルクト(Neumarkt) Neumarkt  5  ch-8001 Zürich TEL: 41-044-252-7959 wirtschaft-neumarkt.ch/barcafe 営業時間  9:00〜24:00(無休) 休日 土、日、祝
*1CHF(スイスフラン)=約105円(2016年9月現在)
文=坂本きよえ(ミラノ市在住) 写真=フランキー・ヴォーン
更新日:2016/10/1
PAGE TOP