世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
アメリカ・ハワイでは、ワイキキから車で約10分の街、カカアコのお洒落なリノベーション・カフェに注目が集まっています。Vol.18ではそんなカフェの先駆け的存在で、アートの発信地ともなっている「フレッシュ・カフェ」をご紹介します。

外壁のアートも料理も、フレッシュな魅力。

Vol.18　アメリカ：フレッシュ・カフェ（FRESH CAFE）
www.freshcafehi.com

　2009年のオープン以来、カフェだけでなく、アートやファッション、若手アーティストの育成などにも力を注いでいる「フレッシュ・カフェ」。ニューヨークやパリでデザインを学んだデザイナーと流行に敏感なビジネスマン、２人のオーナーがこのスペースを最大限に生かし、アメリカ本土に遅れをとっていたハワイのカフェ文化を進化させたといっても過言ではない。

　まず、全体がアートで覆われている外壁が圧巻だ。これはカカアコ周辺で数々の外壁ペイントを手掛けているロコ（地元民）アーティスト集団「POW! WOW! HAWAII（パウ・ワウ・ハワイ）」によるもの。もとは産業用倉庫だった建物を真っ白のキャンパスに見立て、大胆に描き上げたペイントは自動車整備工場に囲まれた立地のなかで、遊び心や反骨心を示す象徴として存在している。若手育成に積極的なパウ・ワウ主催のカカアコ・アートを巡るバスツアーもサポートしており、高校生を中心とした将来のハワイ・アート界を担う学生を応援。「このイベントとは別に、学生を乗せたスクールバスがお店の前にやって来て、うちの外壁を見学しているわよ」と、マネージャーのバネッサさんは誇らしげだ。
　カフェ裏にある車庫スペースでは、詩の朗読会や音楽・アートイベントなどお酒が飲めるイベントも開催。詩の朗読会は「穴倉のような雰囲気の空間で、ひっそりと自分の想いをスピーチしている姿に静かな情熱を感じる」そうで、多いときには若者を中心に300人以上が来場するというから、その人気の高さが伺える。

　なによりも、このお店が客を惹きつけている理由はサラダやサンドイッチ、スープなどフード類が充実していること、そして味の確かさだ。ハワイで手に入るほとんどの食材はアメリカ本土からの輸送に依存しており、収穫されたその日に食卓で味わうことは難しいのだが、ここではフレッシュ・カフェという名のとおり、使用している野菜など食材の多くが地元・ハワイ産。朝は、近くのビジネス街で働くサラリーマンがミーティングがてらサンドイッチをほおばり、昼どきには主婦や学生が新鮮なサラダ・ランチを求めて賑わうのも納得だ。本土のものに比べると割高であるにも関わらず、地元産を使う理由として「私たちは、この場所がハワイの人たちのコミュニティ場所になることを期待しているの。その一環として地元農家と連携し、貢献していくことは意義があることだと思う」。フード人気に押され気味なコーヒーもあなどるなかれ。100％コナを使用したコーヒーはフレンチプレスで1杯ずつ抽出され、本格的な味わいが楽しめる。料理との相性も抜群だ。
　昨夏には２店舗目がダウンタウンにオープン。店舗の増加に伴い「フレッシュ・カフェ」の流儀がハワイ全体に広がりつつある。

＊１ドル＝約119円（2015年4月現在）
文・写真／井上慶
ホノルル市在住

更新日：2015/5/15