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COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
Vol.14 フランス:クリーム(cream)
長年「コーヒーは目覚めの気付薬」と考えられてきたフランスではここ数年、コーヒーをワインのように、じっくり味わって楽しむ意識が高まっています。産地ごとのを打ち出して豆をセレクト・焙煎するロースターやカフェが数を増やし、メディアや流行物好きがこぞって注目。コンテンポラリーな感性で販売される上質のコーヒーは、「人を集めるトレンド商材」となっているのです。Vol.14では、旬であるコーヒーショップ・スタイルのカフェを移民街にオープンし、新しいタイプの人々を集めている「クリーム」を紹介します。
美味しいコーヒーの存在が、街の表情を変えていく。
Vol.14 フランス:クリーム(cream)
www.facebook.com/cream.belleville
パリ北東に位置する界隈ベルヴィルは、市内有数の移民街。アフリカ系、ユダヤ系、アジア系、中近東系区画が共存し、いつも人で溢れ、ダイナミックな賑わいを見せる。
なかでもベルヴィル通りは、漢字の看板が林立する中華街。この通りに、今のパリのトレンドをぎゅっと凝縮したようなコーヒーショップ「クリーム」がある。豆腐屋や餃子屋、中国系旅行会社の並ぶ歩道に、ガラス張りの粋なファサード。店に入れば、ベルヴィル通りではまず見かけないモードな装いの男女や、イングリッシュスピーカーがおしゃべりに花を咲かせている。
「確かに、これまでのベルヴィルのイメージとはちょっと違いますよね」
そう答えるのは「クリーム」共同経営者のひとり、マキシム・アルマンドさん。開業は2014年の11月、友人のジョー・エリオットさんが共同経営者だ。アルマンドさんは28歳、エリオットさんは24歳という若さながら、確かなバリスタ技術でいれるコーヒーの味とお店のコージーな魅力で、あっという間に人気カフェになった。
「ベルヴィルは元々、クリエイターや映画関係者のように、感度の高い人が多く住んでいるんです。家賃も物価も安いし、異文化が入り交じるパワーがありますからね。ただ商店はどうしても、伝統的に外国系のお店が多い。今っぽい場所で美味しいコーヒーを飲みたいな......と思ったら、ここから歩いて30分くらいのサンマルタン運河沿いまで行かなくてはいけなかったんです。やっと地元に美味しいコーヒーショップができた!と、大喜びで来てくれるご近所さんも多いですよ」
トレンドコンシャスなご近所が口コミで広め、サンマルタン運河沿いを拠点にするハイエンド客が足を運び、メディアが取り上げるようになった、というわけだ。今ではここを目指して、観光客もやってくる。
引き寄せられるのはお客だけではなく、新しいギャラリーや食材店も、同じ通りに続々オープン。美味しいコーヒーは人を呼び、街の表情までも変えるトレンドセッターになっているのだ。
「でも、それもよしあしですね......コーヒーショップっぽいメニューと店構えにすれば儲かる!と、安易にカフェを開業する便乗組も増えているんです。僕たちは本当にコーヒーが好きだから、残念だなぁと思います」
マキシムさんたち自身はもちろん、コーヒーをトレンド商材としては捉えていない。信頼する焙煎家が丁寧にローストした豆を、自分たちが「美味しい」と信じる味わいに仕上げる仕事は、真剣そのものだ。たとえばお店の看板商品「ル・クリーム」(店名の由来でもある)は、カフェオレとフラットホワイトに着想した独自開発のレシピ。コーヒーとミルクのハーモニーが奏でる奥深いうまみとコクを実現するため、試作を重ねた。外の天候に合わせて微調整するため、使用するエスプレッソ用豆を月に1〜2回変えるなど、目指す味への取り組みに余念がない。パリでは珍しい「コルタード」を出すのも、「ミルクとコーヒーを組み合わせたドリンクをスペシャリテにする」という決意の表れだ。
そして彼ら自身、このベルヴィルという街が大好きだ、とくったくのない笑顔で言う。
「飾り気がなくて、活気があって、庶民的。いつもたくさんの人が行き交っているこの場所で、家に人を迎えるようにコーヒーを出せたら、と思ったんです。だからお菓子もスープもサンドイッチも、すべて自家製なんですよ。そうして僕たちも、この街の活気の一部になれたら嬉しいですね」
クリーム(CREAM)
50, rue de Belleville 75020 Paris
+33(0)9 83 66 58 43
営業時間=月〜金 7時30分〜18時30分、土・日 8時30分〜19時30分
週休なし