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COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
環境に配慮しながら地元の産業を応援する、アムステルダムのカフェ
世界的なオーガニック志向の流れを受けて、酪農王国のオランダでも注目を集めているのが植物性ミルク。小さなメーカーの活躍が目立ち、アムステルダムには、『ROA』というオーツミルクのみを手がけるブランドも登場しました。牛乳でも、大手乳業メーカーのものに替わって地元の小さな酪農家の商品の人気が増しており、これらを選ぶカフェも増えています。今回はミルクにこだわり、味わいとサステイナビリティを同時に追求する2つのカフェを紹介します。
アムステルダムのビーガンカフェの先駆者、『コッフィー・エン・デ・クック』
オーガニック・ビーガンカフェ『コッフィー・エン・デ・クック』のオープンは2014年。ベジタリアンやビーガンを掲げる店は、アムステルダムでは珍しい頃だった。現オーナーのひとりであるルビーさんは、足繁く店に通ううちに、当時スタッフで働いていたレオニーさんと意気投合。前オーナーが引退した昨年夏、ビジネスを引き継ぎ二人は共同経営者となった。
「性格が正反対だからこそ、お互いをフォローし合うことができる」と微笑むルビーさんは23歳。レオニーさんは25歳と、バイタリティーに溢れる若きオーナーたちである。
店を受け継いだ若き二人にとって、何を守り、どこを新しくしていくかを見極めることは重要な課題のひとつだった。シグネチャーメニューであるパッションフルーツチーズケーキやスモーク豆腐バーガーのレシピは大切に受け継ぐとして、考えなければならなかったのは、自分たちらしい冒険。その答えのひとつが、アムステルダム発のオーツミルクブランド『ROA』を取り入れることだった。
大手メーカー製品から切り替えた背景には、ローカルプロダクトを積極的に取り入れ、自分たちと同じこの街の若いビジネスを応援したいという気持ちもあった。『ROA』にした決め手は、味とテクスチャーだ。バリスタ用に成分調整がなされているため、やや弾力のある泡立ちになりラテアートに適している。さらに、オーツの自然の甘みがうまく引き出されていて、口当たりもよい。
「オーツミルクはまずいという先入観を持つ人はまだ多いですが、ここのラテを飲むとみな驚くんです。こんなに香り豊かでおいしいなんて!って」と語る、レオニーさんの嬉しそうな笑顔が印象的だった。
ROAのサイトによれば、オーツミルクと牛乳の生産工程を同量分で比較すると、オーツは温室効果ガス発生量が牛乳の20%、使用エネルギーは40%、そして使用する水の量は10%と、エコロジカル・フットプリント(消費活動に対する負荷の指針)は格段に小さい。おいしさの追求は、もはや持続可能性と切り離しては考えられない。そんな新時代の製品が次々と市場に出回り始め、カフェシーンにも新しい提案をもたらしている。
Koffie ende Koek
www.koffieendekoeck.nl
Haarlemmerweg 175, 1051 LA Amsterdam
020-7372 731
営業時間/火〜日 10:00〜17:00
定休日/月
16世紀築のモニュメントに店を構えるオーガニックカフェ『コッフィースヘンケライ』
現存する建造物ではアムステルダム最古とされる旧教会にある、カフェ『コッフィースヘンケライ』。店は、サスクリスティ(聖具室)として1517年に建てられた別館にある。国の史跡に指定されており、ほぼ建設当時のままの姿を残しているため誰もが足を踏み入れた瞬間に16世紀にタイムスリップした気分にひたれるのは間違いない。
店名の『コッフィースヘンケライ』とは、"コーヒーパーラー"の意味。地産、オーガニックを重視する店として定評がある。
コーヒー豆はアムステルダムやアイントホーフェンにある焙煎所から、品質はもちろんのことトレーサビリティーやフェアトレード、環境への配慮を重視するサステイナブルなブランドを使っている。
そして、ミルクは、植物性はこの街で生まれた『ROA』のオーツミルクを、牛乳はアムステルダム郊外の農協から仕入れることにした。
「ですが、牛乳はあえてオーガニックは選びませんでした。有機飼育の場合、季節や天候の影響で脂肪分の割合が不安定なためラテアートに適さないからです。でも、地産は譲りませんでした。大手メーカーのものより味はよいし、地元の生産者の支援は重要ですから」
種類が豊富なオーガニックのタルトやケーキは、アムステルダムのアーティザン(職人)たちが作っている。こちらも地元の縁を大切にしながら、絶品スイーツを提供しているのだ。
店内のインテリアにも、ヨブさんのこだわりが光る。
「あえて照明やテーブルにメタル素材を取り入れて、モダンな印象を加えました。中世の雰囲気に合わせた調度品で揃えると、下手をすればただクラシカルなだけの重苦しい空間になってしまいますからね」
そんな言葉の通り、5世紀分の歴史の中にも軽やかさが演出された店内は老若男女、観光客とアムスっ子がバランスよく入り交じった客層で連日賑わう。誰もがくつろげる居心地のよい人気店。それが、最高のホスピタリティを追求するヨブさんが作り上げたカフェである。