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COFFEE BREAK
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世界のコーヒー-World-
パースのコーヒーには、地球を愛する気持ちが香る。
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パースのコーヒーには、地球を愛する気持ちが香る。
Mary Street Bakery メアリー・ストリート・ベーカリー
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左から:ズラリとショーケースに並ぶドーナツ、ペストリー、サンドイッチ類は壮観。/店が入っているQV1ビルには西オーストラリア州の基幹産業である鉱業や法律関係のオフィスが多く入る。/ビジネスミーティングをするキャリアウーマン。パースっ子気質は「保守的」とされ、ここだと決めた店には通い続けるのだそう。
パース市内に5つの店舗を構える繁盛店。コーヒーは自家焙煎。パンやペストリーも全て自社製だ。今回取材したのは観光地中心にも近いビジネスビル「QV1」にある3号店。午前10時、朝のコーヒーブレイクを求めてオフィスワーカーの常連客が引きも切らずに訪れる。大半の人がグラブ・アンド・ゴー、すなわちテイクアウトだ。オーナーのポール・アーロンさんはメルボルン生まれ。13年前にパースに移り、バーやレストランの経営で成功を収めた後、2014年にコーヒービジネスに進出した。先進のコーヒー文化で知られるメルボルンと比べ「パースには5年くらい前までコーヒー文化と呼べるものはなかった。それほど遅れていた」とアーロンさんは言う。
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左から:オーナーのポール・アーロンさん。故郷メルボルンで培った感性でパースのコーヒーシーンに革新をもたらし、リードしている。/ピンクのネオンがレトロでどこか温かい印象を与える。/もう一つのキーカラーはパステルトーンのライトブルー。
味わいと店の姿勢に、共通する「透明性」。
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左から:グラブ・アンド・ゴー(テイクアウト)が中心だが、つい店内で話し込む人も。/多く飲まれるのはラテやフラット・ホワイトなどのエスプレッソ・ドリンク。
単一産地の豆を使用したドリップ・コーヒーはビーカーに注がれ、ガラスのコップとコーヒーの詳細(味わい、国名、畑の名前、プロセス、品種、畑の標高、いれ方)が記されたシートを添えて出される。クリアな味わい。この「透明性」こそが店の全てに通じる特徴であり、また魅力なのだと感じた。
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左から:カラフルなドーナツ。写真上から時計回りにローズウォーター・ピスタチオ、レモン・メイプル・ピーカン、塩キャラメル。/シングル・オリジンのセット。添えられるシートには、コーヒーのデータが事細かに記されている。/テイクアウト用のタンブラー(大29.99AUD、小27.99AUD)。
La Veen Coffee ラ・ヴィーン・コーヒー
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オリジナルの煉瓦造りの壁を生かし、重厚な雰囲気を演出する一方で、大きく取った窓からの光で店内を生き生きと輝かせている。
共同オーナーの一人、ベンジャミン・セオさんによると、開業は2009年。ただし、それはスビアコというパース西郊でのこと。「たった8人しか座れない小さな店でした。もっと広い場所を探していて、キング・ストリート沿いのこの場所と出会い、13年に移ってきました」。
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左から:ベーグルサンドイッチやペストリーは契約ベーカリーから。/グアテマラ・エスプレッソ(右)とオリジナルブレンドの「ヘリテージ」(左)。/店名は「緑」を表す造語。
コーヒーを楽しんだら、植物の種を植える?
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左から:揃いのデニムのエプロンを着けたスタッフ。今年7月、レインスクエアに2号店がオープンした。/ラテを作るスタッフ。エスプレッソ・マシーンは6つの抽出口を持ち、一度に12杯のエスプレッソをいれることができる。
店名はフランス語のVert(ヴェール)と英語のGreen(グリーン)をくっ付けた造語。いずれも意味は「緑」だ。環境重視の姿勢をそのまま店名にしたのだとセオさんは言う。その姿勢がよく表れた商品が「コーヒー・ドリップ・ポット」。ティーバッグのようなスタイルでドリップ・コーヒーを楽しむことができるキットが紙製のボックスに納められているもの。使用後はボックスをプランターに、コーヒー豆の滓を土代わりにして、栽培が楽しめる。この店の浅煎りコーヒーの柔らかな味わいにはセオさんたちの緑を愛する気持ちが含まれている。
左から:エッグ・ベネディクト。/エスプレッソ・ティラミス。ビスケットの下面をエスプレッソに浸してある。/コーヒーは浅煎りで繊細な味わい。/本文で紹介した「コーヒー・ドリップ・ポット」。プレゼント用としても客に喜ばれているという。
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左から:オーナーのベンジャミン・セオさんは韓国から移ってきた。/「トニックプレッソ」は氷とトニックウォーターを入れたグラスにエスプレッソを注いで飲む。/トニックウォーターの甘みと泡がコーヒーの風味を引き立てて美味。
Antz HQ アンツHQ
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同経営の3店舗は全てイーストヴィクトリアパーク地区にあり、ターゲットが違う。この店は「滞在型」を狙う。
経営母体がロースタリーとあって、豆のクオリティには自信がある。常時5つの豆をラインナップ。「本日のコーヒー」は日替わり。低めの温度でじっくりと焙煎された豆でいれるコーヒーは味わいもまろやか。
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左から:キャロットケーキ。/フラット・ホワイト。その日によって使う豆や配合を変えている。/ドラフトビールに使うようなサーバーから注がれるコールドブリュー・コーヒー。
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左から:常連客とのやりとりが楽しい、とスタッフは言う。/カウンターの背後には、再利用可能カップの使用によって廃棄を免れた紙製カップの数が掲げられている。
一軒のコーヒーショップから、世界が変わる予感......。
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ベーグルは、4種の生地、11のトッピングからセレクト。ビーガン、グルテンフリー、砂糖・牛乳不使用にも対応。
環境問題に取り組むこの店のポリシーに触れて、家族について語ったケンワーシーさんの言葉を思い出した。きっと両者は同じところから発せられるものなのだろう。世界中のコーヒーショップに、この動きが伝播する日は案外遠くない気がした。
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左から:スイーツは4つのサプライヤーから。菓子職人にとってはこの棚がポップアップ的な役割を果たす。/「繰り返し使えるカップのみ使用可」の断り書き。/ベーグルをサービスするスタッフ。
Telegram Coffee テレグラム・コーヒー
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ミニマリズムの極致と言える外観。閉店時には舵輪のような取手を回すことで開閉部が閉じられる。
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左から:開店は朝6時。界隈のオフィスに勤める人々のアイオープナー役を担う。/フィルター・コーヒー「ブラジル」はアナエロビック(嫌気発酵)プロセスという珍しい工程を経たもの。/パースのシンボル、黒鳥をラテアートで。
頑固に変えないものと世界から受け入れるもの。
オーナーのルーク・アーノルドさんは16歳からバリスタをしてきたと言う筋金入りのエキスパート。フィルター・コーヒーでは、地元パースはもちろん、国の内外を問わず、世界中の優れたロースターの豆を紹介したいと考えている。一方で、エスプレッソ用の豆は12年来の付き合いになるロースターの豆に据え置き。自らが起き抜けに飲みたいコーヒーはみんなを気分良くしてくれると信じている。アーノルドさんの特技は、顧客の名前とバックグラウンドを記憶すること。取材中も、訪れる客の一人ひとりに名前で呼びかけ、その人がどんな仕事や趣味を持っているのかを説明してくれた。その数は数千人に及ぶと豪語するアーノルドさんに、秘訣を訊ねたら「関心のあることは覚えられる。それだけのこと」と言う答えが返ってきた。
アーノルドさんは2009年には生分解性素材のカップを使っていたと言うエコロジストでもある。この店でもマイカップを持参した人にはコーヒーを50セント引きで販売している。
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左から:ペストリーはパース西郊ネッドランドのラ・ギャレ・ド・フランスから。/メルボルンのロースターの豆。/オーナーのアーノルドさんは生粋のパースっ子。