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COFFEE BREAK

世界のコーヒー-World-
食の都リマと歴史の街クスコ、それぞれのコーヒー物語。

食の都リマと歴史の街クスコ、それぞれのコーヒー物語。
Puku Puku Café プクプクカフェ

左から:壁材、空調、装飾品などを再利用の建材で内装を仕上げたパルド・イ・アリアガ店。/自身の出身地であるクスコにもプクプクを開店したいと願うゴルディージョさん。/ソファ席で談笑する女性たち。壁にはコーヒー産地での作業風景の写真を展示。
ペルーの首都リマは、南米の「食の都」として称えられる。中でも街並みの整ったサン・イシドロとミラフローレスは、高級感のあるレストランやバーが集中する華やかなエリアだ。 両地区で3店舗を営む「プクプクカフェ」は、ペルー産の上質なコーヒー豆を使ったカフェとして親しまれ、今年8月で創立から5年を迎えた。
左から:敷地面積120㎡の広々とした店舗で、総勢12人のスタッフが働く。バリスタの真摯に働く姿が印象的だった。オフィス街とあってテイクアウトの注文も多そうだ。/メイプルシナモンコーヒー(11.5ソル)とクルミとリンゴのパイ(12ソル)。/スペイン風カフェオレのコルタード(6.9ソル)と南米のお菓子アルファホール(5ソル)。
暁の鳥のように、新たな文化の到来を告げる。
サン・イシドロのオフィス街に位置するパルド・イ・アリアガ店には、コーヒーを飲みながらミーティング、おしゃべり、勉強、デートなど、客がそれぞれの目的で店舗を利用する、居心地のよいカフェらしい光景がある。 「当店では、プノ、クスコ、カハマルカ、パスコという異なる名産地の小規模農家から直接購入する豆でコーヒーをいれています。農地に出かけて生産者との信頼関係を続けるのも、私の仕事の一つです」と創業者で共同経営者の一人であるハイメ・ゴルディージョさんが店舗を案内してくれた。 こうした専門的なカフェが営めるのは、世界の流行に乗って最近十数年で、コーヒーの消費量が増し、味にこだわる人も増えてきたお陰だという。リマでコーヒーといえば、以前は食後の口直しに嗜む程度の飲み物だったそうだが、今ではようやく、豆の質にこだわるカフェが街で15店ほど営業するようになったとのことだ。 「コーヒーだけでなく、メニューのケーキ類や販売用のオリジナルグッズも小規模生産者が作る品です。またこの店舗の内装のあちこちには再利用の建材を使っています。上質なコーヒーをお出しするだけでなく、フェアトレードやリサイクル、持続可能性といった今後ますます必要とされる文化を、コーヒーを通じて発信していきたいのです」とゴルディージョさん。 プクプクとは暁に鳴くアンデスの野鳥の名称だ。カフェはこの鳥のように新しいコーヒー文化の到来を告げる。
左から:あちこちに現れる小鳥のマーク。/産地別にコーヒー豆を販売。ラベルには生産者の名前も表記。各100グラムで12ソル。/プクプクとはアンデスに生息するノドジロヒバリチドリの俗称。朝に鳴く早さを雄鶏と競うという民話がある。
Neira Café Lab ネイラ・カフェ・ラブ

仲の良さが印象的だったスタッフの皆さん。右から二番目がハリー・ネイラさん。右端は、カフェのロジスティックスを担うネイラさんの父親。

左から:細長い45㎡の店舗には全21席。カウンターで販売するコーヒー豆「チャベラ」は店内奥のロースターで焙煎した3つの産地の豆のブレンドだ。/焙煎やスタッフ教育も担うルイスさんは、ネイラさんのいとこで、独自のコーヒービジネスも行う。
美食の国での、コーヒーの可能性。
ネイラさんが取り扱うのはカハマルカ、クスコ、ビジャ・リカという3つの産地のコーヒー豆。それらを週4回、店内奥のロースターで焙煎する。ネイラさんにとって焙煎とは、コーヒー豆に情熱を注ぐひと時なのだそうだ。 焙煎した豆は、店でコーヒーをいれ、販売するだけでなく、レストランにも卸している。卸先の一つが、2018年度「世界ベストレストラン50」で6位に選ばれた「セントラル」だ。 「ペルーは、美食の国として知られています。コーヒーもまた、美食の要素として成長し、認識されていくように働きかけています」とネイラさん。 街角のカフェの居心地と世界でのペルーコーヒーの認知度という異なるベクトルで質を求める姿勢は、ネイラさんのコーヒー愛の強さゆえだろう。
左から:路上にカフェの温もりが伝わってくるような夕暮れのひと時。/エスプレッソ(6ソル)とカヌレ(7ソル)。コップにデザインされたネイラさんの髪型とメガネが店舗ロゴだ。/ドリップコーヒー(10ソル)とシナモンがほんのり効いた「バナナとイチジクのケーキ」(7ソル)。
Eusebio & Manolo エウセビオ&マノロ

かつて、サンブラスは教会御用達の工房が多かった地区でその風情が残る。インカの石材を利用してスペイン人が街並みを造った。

左から:スペインでペルー人の奥様と知り合い、クスコに移住したアロンソさん。/モカ(9ソル)とシャンテリー、オレオ、ブルーベリーをトッピングしたワッフル(10ソル)。/マキアート(5ソル)とキヌアケーキ(8ソル)。散策途中にひと息。
小さなカフェならではの、お客様との気さくな会話。
世界的な観光地とあって、来店者の8割は観光客だ。見どころが尽きないクスコだが、3400mという高地にあり、石畳の坂道が多い。散策に思いのほか体力を消耗するため、道すがら出合ったこのカフェに、ひと時の憩いを求めて立ち寄る客が多いようだ。 現在、コーヒー豆は国産一種類を使用しているが、年末までにコーヒーミルを増やして複数の豆から選んで飲んでもらえるようにしたいという。加えて2号店の経営も検討中だ。 「街の中心のアルマス広場近くに、ここと同じような小さな店舗を開けたいです。観光客の多くは、一生に一度きり、しかも数日しかクスコに滞在しません。せっかくなので、お客様には街歩きのアドバイスをして差し上げたい。小さな店だとお客様と気さくに話すことができます。それが、小さなカフェにこだわる理由です」 コーヒーを飲みながらアロンソさんの穏やかな口調に耳を傾ければ、その後の散策に新たな行先が加わるかも。
左から:小ぢんまりとかわいらしい店舗は5、6人も入れば満員御礼だ。コーヒーは、エスプレッソをベースとしたドリンクが全18種類。/ネクタイにワイシャツの姿がきりっとしたバリスタ。夜間には別の店でバーテンダーを務める働き者だ。/店名は祖父二人の名に由来。壁には粋にバイクにまたがる祖父たちの写真を展示。
La Valeriana ラ・ヴァレリアーナ

開放的な回廊の席は観光客にも人気のスポット。写真右側の柱の合間からラ・メルセー教会が望める。
初めてのカフェ経営に、感じる手応えと喜び。
「ラ・ヴァレリアーナ」は5年前に市内の別の場所に1号店が、2年前にこの2号店がオープン。いずれも観光スポットの目の前に位置する。 「この店舗は、公益法人が所有する不動産で、入札を経て私たちが営業することになりました。観光地ゆえ立地選びがとても大切です」とニシヤマさん。 「カフェの経営は、『ラ・ヴァレリアーナ』が初めてなのですが、これまで経営してきた飲食店のなかで、最も集客の多い店です」とカフェの事業に手応えと喜びを感じているようだ。 店の自慢は約30種のパティスリー。そのなかでも目を引くのが、虹色のクスコ市の旗にちなんだカラフルなケーキ「ウニコルニオ・ネイキッド」だ。子供ならずとも童心を失わない客に人気の様子だ。コーヒーは、クスコ県キジャバンバ市産の豆を使用している。目下、リマとペルー第二の都市アレキパでの営業を計画中で、隣国でのフランチャイズの誘いも受けているそうだ。クスコ発のコーヒー&スイーツが国内外に広がるか、今後の展開が楽しみだ。
左から:アメリカン・コーヒー(6ソル)と「ウニコルニオ・ネイキッド」(12ソル)。/カフェ・ラテ(8ソル)とレモンパイ(8ソル)。/スタッフ20人で稼働する2号店。これより小さなスペースの1号店は古代インカの神殿コリカンチャの正面に位置する。