カプチーノのデザインが得意なアーティスティックなカメリエレ、ミケッレ・バノッブさん。
カフェは、ふらっと入ってコーヒーを飲むだけの場にあらず。個性派揃いの店主や軽妙なカメリエレ(男性給仕)と言葉を交わすだけで、滞在時間はぐっと彩り豊かになる。お国柄によって異なる、カフェでのコミュニケーションを学んでみよう。
会話でカフェを楽しもう!
カウンターでの立ち飲みができるイタリア式のカフェは"バール"と呼ばれ、カウンターでさっとコーヒーを飲んで立ち去る客も多い。カウンター越しにカジュアルな気分で、会話を楽しんでみよう。
※「メニューを読み解こう!」は
こちら。
■ 入店時
Buongiorno! こんにちは!
Buonasera! こんばんは!
礼儀としての挨拶の意味もあるが、イタリアのバールのカメリエレの中にはのんびりした人も多いので、「ここに客がいますよ」という意思表示として入店時の挨拶は必要だ。朝から午後3時くらいまでは「Buongiorno!」、夕方になったら「Buonasera!」。
Un caffè per favore.
客:コーヒーを飲みたいのですが。
Vuole sedere?
店:座りたいですか?
Prego venga pure.
店:こちらにどうぞ。
カウンターで立ってコーヒーを飲む人が多いのが、イタリアのバールの特徴だ。コーヒーのオーダーから支払いまですべてカウンターですませられる手軽さと、1杯の価格も安いことも人気の理由だろう(立って飲むと0.80~1.00ユーロ。座ると1.5~2.00ユーロ)。入店時に「座りたいですか?」と聞かれることも多い。座りたいときは「スィ Sì(はい)」と答えて案内してもらおう。座る場合はカメリエレにまずその意思を伝えよう。また、イタリアのバールは一日中軽食を出しているため、入店時に、「ブォーレ マンジャーレ Vuole mangiare?(お食事ですか?)」と聞かれることも多い。
Posso sedere fuori?
客:屋外の席に座っていいですか?
ミラノの飲食店では、2001年の法律改正により室内はすべて禁煙となった。スモーカーは外の席(イタリアでは、テラス席という言い方はしない)でタバコを吸うしかないので、屋外の席に案内してもらうのだが、冬の間は外に席を出す店はほとんどない。スモーカーたちはみな、春になってバールの屋外の席に座ることができるのを待っている。屋外席のテーブルに灰皿が見当たらなかったら、カメリエレに「ポッソ アヴェーレ ウン ポルタチェーネレ Posso avere un portacenere?(灰皿をお願いします)」と頼もう。
■ 注文時
Scusi!
客:すみません!
Ha deciso? / Cosa desidera?
店:お決まりですか? /何をお求めですか?
Posso avere il menu per favore?
客:メニューをいただけますか?
メニューはテーブル席にすでにセットされている場合や、客が座るとカメリエレが持ってくる場合などまちまち。こちらに気づいてくれないときは、声をかけて頼もう。イタリアのコーヒーの種類の多さは多分世界一だ。メニューを見ながら迷うのもバールの楽しみのひとつ。
Un caffè normale e un caffè macchiato per favore.
客:エスプレッソをひとつ、カフェ・マッキアートをひとつ、お願いします。
イタリアのバールで一般的に頼むのは"カッフェ caffè"。これはエスプレッソのこと。そのほか、カプチーノやカフェ・マッキアートなどが人気メニューだ。"マッキアート"は"汚れた"という意味がある。カフェ・マッキアートはミルク少なめのカフェ・オ・レのようなもの。
Un caffè americano per favore.
客:(エスプレッソではない、普通の)コーヒーをください。
日本で出されているようなドリップコーヒーを飲みたい場合には、"アメリカーノ americano"をオーダー。この場合は、エスプレッソとお湯が別々に供されて自分でエスプレッソを湯で薄めることになるので、びっくりされないように。"カッフェ・ルンゴ caffè lungo(薄めのエスプレッソ)"も同様。イタリアにもデカフェ(カフェイン抜き)コーヒーはあるが、人気があるのは"カッフェ・オルゾ caffè d'orzo"という大麦コーヒー。「ウナ タッツァ グランデ? Una tazza grande?(大きな器で?)」と聞かれることもあるので、ごくごくいっぱい飲みたい場合は 「Una tazza grande」と指示しよう。
■ 滞在中
Posso avere un bicchiere d'acqua di rubinetto?
客:水道水を1杯いただけますか?
イタリア、とくにミラノのバールでテーブル席に座った場合、水は出てこないので、お金を払って水をオーダーする(19ページのメニュー参照)。だが、カウンターでコーヒーを飲んだ場合は水道水を頼んでもよい。ローマ、ナポリなどの南の地域では、コーヒーを頼むと水がついてくる場合が多いが、基本的にミラノでは水は有料というイメージだ。
■ お会計時
Posso pagare subito?
客:今、支払ってもよいですか?
Possiamo pagare separatamente?
客:別々に支払ってよいですか?
カウンターで飲んだ場合は、レジに行ってオーダーしたものを申告してお金を払う。テーブル席に座った場合は、店を出るときに代金を置いて帰るか(お釣りがない場合)、カメリエレを呼んでお勘定をしてもらう。カフェ1杯の場合はお勘定も早いが、食事をした場合は少し時間がかかってしまうこともあるので、早めに「Scusi!」とカメリエレを呼び、「イル コント ペル ファヴォーレ Il conto per favore(お勘定をお願いします)」と頼むのが賢明。イタリアではチップをあげる習慣があまりないが、お釣りから1ユーロに満たない端数のみを置いていく人はいるし、とくに感じがいいカメリエレが席の担当になった場合は、気持ち程度のチップを渡すと喜ばれる。
■ 退出時
Grazie mille. Buono il caffè.
客:ありがとう。美味しかったです。
Posso avere il vostro biglietto da visita?
客:ショップカードをもらえますか?
È aperto di domenica?
客:日曜日は営業していますか?
バールから出るときには、カメリエレから「ブォナジョルナータ Buona giornata !」と挨拶されることが多い。これは「よい一日を!」という意味なので、にっこり「グラッツェ アリヴェデルチ Grazie. Arrivederci(ありがとう。さようなら)」と返事をして別れを告げよう。
文・坂本きよえ / 写真・フランキー・ヴォーン
更新日:2013/06/25