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COFFEE BREAK

世界のコーヒー-World-
2013.03.01
内藤毅の世界探訪 Vol.5

路上や市場のコーヒー屋は、旅を彩るオアシスのよう。
「マフィア」。ドバイ首長国の首都ドバイで、初老の路上コーヒー屋に撮影許可を求めるとドキッとする言葉で拒否された。だが、ひるむわけにはいかない。初めて見る三角錐の銀色のコーヒーポットは美しく、客は白いアラブの民族服を着ている。撮りたい。次の日、同じアラブのモロッコで以前撮ったカフェの写真が載った雑誌を見せると、主人の顔がほころび「エジプトか」と訊いてきた。「モロッコだ」と答えると撮影OKになった。 コーヒーの発祥の地といわれるエチオピア。ジブチとの国境に近いディレダワの駅前に若い女性が営む路上コーヒー屋があった。許可を得てカメラを向けると「私も入りたい」と母親らしき人がコーヒー入り魔法瓶を手に割り込んできた。邪魔......。次は男の客が恥かしそうに布を頭からすっぽり被ったので、周りの人が笑い出した。災いゆえに出会えた、ラオスの美しいコーヒー。
いわくつきなのがラオス。タイのカフェで泥棒談義をしていたまさにそのとき、自分の宿の部屋からバッグが盗まれた。まるで笑い話だが、バッグにはラオスのカフェの写真も入っていた。だが、禍転じて福となす。二度目のラオス訪問で市場のコーヒー屋が出してくれたのが、美しいラオス式コーヒーだった。グラスの中でコーヒーの黒と練乳の白が見事に分かれていた。 格別においしかったのが、内戦下のニカラグアで飲んだコーヒーだ。早朝5時、バスが出る広場の隅にコーヒー屋の元気な女の人がいた。石のかまどの上に、すすで黒くなった鍋をのせてコーヒーを煮立たせている。一杯頼むと赤いカップに入れて渡してくれたが、ドロリとして甘くてうまい。揚げパンを頼むとその旅いちばんの朝ごはん。もう一杯おかわりした。残念だが写真はない。治安がひどく悪いのでカメラを取り出すことを躊躇したのだ。中東 Middle East



北米 & 中南米 North America & Latin America



ヨーロッパ Europe



アジア Asia









アフリカ Africa



内藤 毅(ないとう・つよし)
出版社勤務を経て、フリーランスへ転向。海外での取材・撮影歴が長く、訪れた国は120カ国以上。コーヒー愛好家でもあり、各国でカフェのある風景、人々を撮影している。『シリーズ日本の伝統工芸-染め物"京友禅"』(リブリオ出版、産経児童出版文化賞受賞)も手掛けた。