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コーヒー・ワンダーランド

自然豊かなコスタリカの、コーヒー農園ツアー。

自然豊かなコスタリカの、コーヒー農園ツアー。

エコツーリズムで海外からも人気の観光地モンテベルデ。自然豊かなその土地で、農業・教育・観光の3つの活動を軸にサスティナビリティとフェアトレードを実践するコーヒー農園を訪ねた。

17ヘクタールのLIFEの農地。そのうち8ヘクタールは環境保護林だ。カフェ・モンテベルデ農園は他に近隣に3つのコーヒー農地を運営。

 色鮮やかな鳥や蝶やカエルが棲息することで知られるコスタリカは、中米の自然の宝庫だ。政情が長きにわたって安定していることも手伝い、海あり、山ありの自然の恵みを満喫しようと海外から訪れる観光客も増えている。

 中でも首都サンホセから西北西へおよそ140㎞に位置するモンテベルデは、エコツーリズムで人気が高い。そこに持続可能な農業と教育、観光の三つの活動を軸として、コーヒー栽培からカフェ経営までを行う農園があると聞いて訪れることにした。

 サンホセから陸路で約5時間、モンテベルデの中心地区サンタエレナでは、エコツアーやアドベンチャーツアーへと誘う英語の看板が立ち並び、欧米系の旅行者が散策する姿が目立った。

「観光ツアーが豊富なモンテベルデで、私たちはコーヒー農園の体験ツアーを営んでいます」とカフェ・モンテベルデ農園の経営者の一人であるギジェルモ・バルガスさん。農園直営のカフェでコーヒーカップを傾けつつ、農園の複合的な活動について語ってくれた。

 昨年4月にサンタエレナの中心エリアに開店したそのカフェ2号店では、製法や煎り具合の異なるコーヒー豆6種を販売しており、流行を取り入れた様々な飲み方が楽しめる。店舗正面に掲げた農園のロゴの下に「コーヒーツアー農園&焙煎所」と英語で表記したのが功を奏したのか、2号店開店以来、農園ツアーの参加者数は好調に伸びているそうだ。

飲食店やツアー会社が多いサンタエレナ地区の中心街で営業するカフェ・モンテベルデ2号店。1日2回、午前9時と午後2時開始の農園ツアーはカフェや周辺のホテルから出発。参加費はヴァンによる送迎付きで35ドル(学生28ドル)。


ニカラグア出身の収穫人との、深くて熱い信頼関係。

ニカラグアのオメテペ島からのピッカーたち。取材時には計33人が従事していた。農園は毎年12月から翌年3月まで彼らを迎え入れる。

 カフェ・モンテベルデは、バルガス兄弟が旧友のサンタマリアさんと1989年に設立したコーヒー農園で、合計作付面積約20ヘクタールの4つの農地を運営している。そのうちLIFEと名付けた最も大きな農地では、2008年から学生を主な対象とした環境教育を行い、後の2012年から農園ツアーを行っている。

 ツアーでは、苗床から収穫までのコーヒー栽培の工程とその後の焙煎、カッピングまでをガイドの案内のもとに2時間半にわたって体験、見学できる。

 カフェ・モンテベルデの農地の標高は最も低いLIFEでも1350mとコーヒー栽培の上で申し分なく、有機質豊かな火山灰土壌と雲霧林に囲まれた湿潤な気候もまた、良質なコーヒーをつくるのに適しているのだそうだ。

 このツアーの醍醐味は、コーヒーの実を実際に手で摘み取ることだ。ガイドに勧められて真っ赤な実をかじると、果肉の優しい甘さが口いっぱいに広がった。収穫体験は30分程度だったが、「農園の収穫人は、朝6時から夕方4時まで手摘みを行います」とスペイン語に加えて英語とフランス語にも堪能なガイドのセルヒオ・バリオス・マイレナさんが説明してくれた。

 ニカラグア出身のマイレナさんもかつては収穫期に国境を越えて訪れる季節労働者だった。ギジェルモさんらは向上心旺盛なマイレナさんの学費を賄い、農園のガイドに育てたのだった。

 産業が多様化したコスタリカでは、コーヒーの実の摘み取りを周辺国からの季節労働者に頼っているのが現実だ。中でも国境を接し、一人あたりGDPがコスタリカの1/3であるニカラグアからのコーヒー労働者は全体の約4割を占めている。

「残念ながら季節労働者の扱いに課題を残す農場もあります。しかし私たちは査証や契約の面で法に従い、適正な賃金を払って、信頼関係を築いて働いてもらっています」とギジェルモさん。

 この農園で働くコーヒー収穫人はみな、ニカラグア湖のオメテペ島出身で、多くが血縁関係にあり、農園とは既に3世代の付き合いがあるそうだ。農園は、彼らが健やかに働けるよう、調理人も共に同じ島から呼び寄せている。

 ギジェルモさんら経営者は、収穫人たちをより良く知るためにオメテペ島を訪れたことがあり、歓待を受けたその時の感動を懐かしんで語ってくれた。

 真にフェアトレードでありたいとギジェルモさんらが願う背景には、教師で博愛精神の強かった父の影響があるそうだ。農園を経営する前にはギジェルモさんもまた、農学校や大学で教職に就いていた。その後も全国のコーヒー労働者子弟の教育を支援する基金を設立するなど教育活動に熱心だ。

左から:焙煎やカッピング、コーヒー豆の梱包と販売が行われる「コーヒー・ラボ」。農園ツアーはここからスタート。/12月上旬、赤く染まり始めたコーヒーの実が、収穫期の訪れを告げる。

コーヒー栽培を通じて探る、健全な社会と環境の保護。

左から:写真のセルヒオ・バリオス・マイレナさん含む3人がガイドを務める。/自ら摘み取ったコーヒーの実を試食。

左から:さすが! ピッカーの収穫は手際良く速い。/苗の畑への植え替えについて説明。写真の品種はカティグア。/色鮮やかなレッド・カトゥアイとイエロー・カトゥアイのコーヒーの実。

 ギジェルモさんが農園で尽力するのがLIFEの教育事業だ。LIFEとはLow Impact for Earth(地球に低負荷)の頭文字をとった名称で、主に学生向けに農業体験を中心とした持続可能性についての講座を行っている。

 その内容は、コーヒーやその他のオーガニック野菜の栽培の実践に加えて、LIFEが取り組む持続可能な農業のあり方やエコツーリズムで知られるモンテベルデの歴史についてレクチャーするものだ。プログラムは農業や自然環境を専攻している学生だけでなく、広く参加を呼びかけており、コスタリカに観光目的で訪れ、LIFEまで足を延ばすものもいるのだそうだ。

 あいにく取材に訪れたのが学校のテスト期間と重なる12月初旬だったこともあり学生の姿はなかったが、アメリカのミシガン州立大学、ロリンズカレッジ、エコ・ティーチ、あるいはカナダのブライス・アカデミーなど複数の教育機関と長年の交流を続け、近年は年間約2千人の国内外からの学生を受け入れている。現在の農園の収入源はコーヒー生産と観光・教育事業がおよそ半々だそうだ。

「あらゆる経済活動は、従業員から消費者までを対象とした教育的イニシアティブをとるべきだと考えます。モンテベルデには自然の恩恵によるエコツアーが多いのですが、農業と環境に関して教育する人がいなかったので、それこそが私たちの使命だとLIFEを始めました」とギジェルモさん。

「私たちのコーヒーは完全有機栽培ではありません。化学肥料の使用は極力抑え、植樹して森林を守り、多様な作物を植えて土地が疲弊しないように努めています。有機栽培には、周囲からの水や風も影響するので、農家単体では簡単にできないのです」と厳しい。

 持続可能性について尋ねれば、それは環境保全のことだけでなく社会や経済が健全であることも指すという。

「持続可能性に完成形はありません。それに向かって挑み続けるしかないのです」と言うギジェルモさん。農業がいかに、人間社会と自然環境の調和に貢献できるのかを探求し、伝えていきたいとその口調は穏やかながら確かだ。

 新型コロナウイルスの影響で、5カ月間中断していた農園ツアーをようやく8月上旬に再開した。農場はその間、新たな品種のコーヒー豆の栽培と植栽の改善に取り組んできた。観光に頼る小さな町にあって、カフェ・モンテベルデは、地域社会とともに自主的に感染症対策に取り組んでいる。

左から:生産されるコーヒー生豆の4割を輸出。残り6割のうち多くは農園で焙煎され、農園とカフェで販売されている。/ツアーの最後に焙煎人の案内でカッピングを体験。

左から:焙煎したばかりのコーヒーをパッキング。新型コロナウイルスの流行を機にコーヒー豆のインターネット販売を検討している。/経営者の3人。左から教育担当のギジェルモ・バルガスさん、生産担当のセサル・サンタマリアさん、経営担当のホセ・ルイス・バルガスさん。

LIFEのさまざまな活動

 夏冬休みの期間中、LIFEは主に学校からの紹介で国内外から訪れる学生たちに農業を基にした環境教育を行っている。林業技士でもあるギジェルモさんが企画する体験学習は、植樹や生態系についてなど、地域の豊かな自然を生かした内容となっている。コーヒーに関しては、ピッカーとともに苗の植え付けやコーヒーの実の採集を行う。

 敷地内ではヤギや鶏などの家畜を飼育し、有機農法による野菜を栽培している。これらは商品ではなく、サスティナブルな農業を学ぶための資材として、あるいは学生の食事のために活用されている。近年中には、コーヒー農地内に新たに宿泊施設を建設する予定だ。

左から:学生の提案で設置したバイオダイジェスターで生ゴミからメタンガス燃料をつくる。/コーヒーのカス、皮、実と家畜の糞からつくったミミズ堆肥。/施設で消費する乳製品をつくるために飼育するヤギ。かつてモンテベルデは酪農が盛んだった。

左から:さび病に強いオバタ種の栽培に取り組む。/無農薬だとさび病の被害が著しい。/木々で囲み隔離した完全無農薬の実験農場。

Café Monteverde
カフェ・モンテベルデ

左から:コスタリカの陶製コーヒーメーカー「バンドーラ」を握るバリスタ。/明るい店内にスタッフの仕事ぶりが映える。

コーヒー豆は浅煎り、中煎り、深煎り、ハニープロセス、ナチュラルプロセスと「雲霧林」ブレンドの6種類を販売。

 モンテベルデに2店舗を構える農園直営のカフェ。1号店は観光客の少ない地域住民のコミュニティで、2号店は商業エリアのサンタエレナで営業中。ドリップ、エスプレッソからカプチーノまで、世界で定番の飲み方で楽しめる。販売用コーヒー豆は試飲でき、モンテベルデ土産として人気だ。

Café Monteverde
カフェ・モンテベルデ

住所:Vitosi, Costado Oeste
Farmacia, Santa Elena, Monteverde
営業時間:8:30-19:30(無休)
電話:+506 2645 5419
■ https://cafedemonteverde.com/


取材・文・写真 仁尾帯刀
更新日:2020/10/12



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