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コーヒー海外事情

内藤毅の世界探訪 Vol.2[タンザニア]

世界120カ国を旅して、数え切れないほどコーヒーを飲み、カフェの写真を撮ってきた。
第2回目は、東アフリカのタンザニア。美味しいコーヒーと素朴な笑顔に出会えます。

コーヒー屋に笑顔が集まる、タンザニアの美しい港町。

キゴマ近郊のカトンガで撮影。右:タンガニーカ湖に面した斜面いっぱいに、天日干しされた小魚ダガー。左上:主食のウガリを作る女性の耳元には、なんと携帯電話が当てられていた。左下:ダガーの天日干し現場に近い民家の調理場で、ダガー料理を作る少女。

 魚の好きな私は驚いた。白銀色の小魚が、青い湖面へ続く赤砂利の急斜面に天日干しされている。

 ここは東アフリカのタンザニアの西部。アフリカ第二の湖・タンガニーカ湖の港町キゴマの近郊の漁村だ。小魚はその湖で獲れた長さ3~4センチのダガーという魚だ。男が鋤のような道具でダガー全体に日が当たるように引っ繰り返している。近くで見ると、ダガーは日本の煮干しによく似ている。北のビクトリア湖でも獲れ、東アフリカではよく食べられている。

 青い湖面には木の小舟が何十隻も浮かび、岸辺の民家の前では若い女性が民族衣装の布を腰に巻き、しゃがみこんで主食のウガリ(トウモロコシの粉などを湯でといたもの)を、粗末なカマドにのせた鍋の中でヘラを使って練っている。何とも素朴な光景と思ったが、彼女の耳には携帯電話が当てられていた。今アフリカでは携帯電話が爆発的に広まっている。

ブラックでさっぱりと飲む、キゴマの路上のコーヒー屋。

 2009年12月、私は東アフリカのコーヒーの産地のケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジをバスで旅をしてタンザニアのキゴマにやってきた。キゴマには国連難民高等弁務官事務所などがある。難民支援の前線基地として知られ、実質的な首都のダルエスサラームからの鉄道の終着駅で、南のザンビアへタンガニーカ湖を渡る定期船が出ている港町だ。旅行者が多く、活気があり、人は気さくで親切だ。夜には何時間も停電があるが、暗い通りでは焼きトウモロコシや果物が売られている。

(左)キゴマの朝のコーヒー屋。(右上)カメラに照れるカトンガのダガー売りの女性。(右下)キゴマで撮影。西日の当たるコーヒー屋。白いカップが客を待つ。

 朝ともなれば、路上のコーヒー屋は大賑わい。店は建物と建物の間にある。面白いことに長い木の椅子と短いテーブルの脚が下の地面の土に埋め込まれている。まるで杭のように。そんな椅子の一番端に座ると、主人の若い男がやかんに入ったコーヒーを小さな白いカップに注いで渡してくれた。砂糖やミルクを入れないのがここの流儀。少し苦いがさっぱりとした味。飲み終えたカップの底にはコーヒーの粉が少し残っていた。目の前のコンロの上にはやかんがのっている。そばの台の上にはコーヒーの粉の袋があり、主人はこれをやかんに入れると教えてくれた。水の中に粉を入れてそのまま煮立てるらしい。

 客は全員が男。赤や白の民族帽を被り、中には足元まである民族服を着ている人もいる。主人がやかんをもって回り、空いたカップにコーヒーを入れている。何杯飲んでも同じ料金らしい。皆はくつろぎ、いい雰囲気。カメラを向けると、待ってました!とばかりにいい笑顔を向けてくれたのだ。

タンザニア製のしゃれたインスタントコーヒー。

 現地の人に鍋で炒っているダガーを食べさせてもらった。日本のごまめのようで非常に香ばしい。ダガー料理には、刻んだたまねぎとトマトと唐辛子を入れる。キゴマの駅の食堂で期待して食べたが、慣れないせいか、辛いだけ。でも隣の客は白いウガリにつけて美味そうに食べていた。

キゴマで撮影(上)トタン屋根の平屋建てのカフェ。(下右)主食のウガリにダガーをつけて食べる男。(下左)タンザニア産のインスタントコーヒー。

 キゴマでよく行ったのはホテルの近くの安食堂。店の前はグラウンドのように広かった。夕方、その道端に二軒のコーヒー屋を見つけた。一軒は西日を建物が遮り、暑くないからか大勢の客。反対側の店は西日がもろに当たって客は一人もいないが、実にいい。木の長い椅子の前に、高い木のテーブル。その上に白い小さなカップがいくつも伏せて置いてある。下は茶色の地面で、正面は民家の泥壁と茶色尽くしの素朴で自然なオープンカフェ。むろん屋根もなければパラソルもない。雨が降ったらお休みか。

 珍しくクーラーの効いたレストランに入った。コーヒーを頼むと、出てきたのは牛乳の入った大きなカップとインスタントコーヒーの缶だった。缶の色は金と黒のしゃれたもの。製造されたのはここタンザニアだ。

危険地帯で武装するバスと、真夜中のコーヒー。

 私はマラウイに入るために、同国中部の法律上の首都ドドマにバスで行くことにした。バス会社の名前が北欧の半島の名前のスカンジナビア。早朝五時に出発。三人掛のシートで窮屈だったが、午前中はほとんど眠っていた。午後になると、眠るどころではなくなった。何か危険があるのか、バスが停まると、バス会社の男が小屋から迫力ある銃を借りてきた。窓の外は熱帯林で緑の木の他に何もない。運の悪いことにバスはこの危険地帯で故障になり、停まってしまった。乗客は外に降りて、林の中に用を足しに行く。私も林の中へ用心しながら入っていく。以前、内戦直後のモザンビークでも同じように林の中へ入ろうとして止められたことがある。地雷があるからだ。ここでも男の声が飛んできた。その言葉は「レディース!」だ。どうやらバスの前の林の中は自ずと女性用と決まっていたらしい。バスは故障が直り、走り出し、危険地帯を過ぎたところでごつい銃を返却していた。

ザンジバルの中心ストーン・タウン(世界遺産)にて撮影。上:小さな食料品店の店先でコーヒーを売る。下:ヨーロッパとアラブ双方の影響を受けた町並みが見事だ。

 夜の八時すぎ、またバスは故障した。やっと動き出したが、真夜中の一時か二時に食事と休憩のために街の中で停まってしまった。明かりのついた食べ物屋に乗客たちが入っていく。嬉しいことに少し離れた建物の横に小さなコーヒー屋がある。横4m、縦2mくらいの店。高さ1mほどの板で周りを囲み、入口に只今閉店中ということなのか、小さな椅子が置いてある。覗いていると、そばの路上の食べ物屋のおばさんが中の椅子で横になっている店の男を起こしてくれた。出してくれたのは小さな白いカップに入ったコーヒー。カップはキゴマと同じだが味は少し濃い。隅のコンロにはコーヒーの入ったやかん。いつでも出せるように温めているのだろう。店の男は椅子の上にすぐに横になった。見知らぬ街で真夜中に飲むコーヒーは最高だ。

 ドドマに着いたのは朝の九時をすぎていた。市場では魚屋に「タンガニーカ湖産のダガーはビクトリア湖産のものより大きくて美味くて高い」と、その違いを教えてもらった。たまねぎを売る老人は美味しそうにコーヒーを飲むところを撮らせてくれた。手にしていたのはやはり小さな白いカップだったのだ。

 この後、南アフリカまで旅したが、このカップを目にすることはなかった。

キリマンジャロ登山の基点、”モシ”はコーヒーの産地。

 世界の山の中で一番好きな山は、アフリカの最高峰キリマンジャロだ。赤道直下にありながら山頂付近に雪や氷河があるのがいい。ケニアとの国境近くにあるが、山麓や近くのアルーシャ付近はキリマンジャロコーヒーの産地だ(今ではタンザニア産のコーヒーはキリマンジャロといわれる)。私が1993年にケニアから同国に入った場所がアルーシャだったのだ。野生動物を見るサファリの基点で活気もあるが、怪し気な者もいる。そんな一人が私に声をかけ、信用させようと、日本語で書かれた一枚の紙を見せた。そこには「こいつは悪い奴だ」とあまりにも気の毒なことが書かれていた。

ストーン・タウンにて。サンゴ礁が美しいインド洋を望む。夕暮れ時、空は淡いピンク色に染まり人々が集う。

 アルーシャ近くのモシはキリマンジャロの登山の基点となる町で、コーヒーの産地。ホテルのカフェで山を見ながらキリマンジャロコーヒーを飲もうと思ったが、山頂付近は雲に覆われて見えなかったのだ。残念。

 モシから鉄道でダルエスサラームへ行き、沖合いのザンジバル島へ船で渡った。島の宿で同室になった若い男は「俺の青春を返してくれ」とつぶやいた。彼は近くの島で何年も漁業指導のボランティア活動をやっている。大変なうえ将来が見えないからか。気のいい男で街をビデオ片手に案内してくれた。街の中心はストーン・タウン。細い道が迷路のように入り組み、両側に古いアラブ風の建物が建ち並ぶ。特に窓がいい。小さな食料品店の店先ではコーヒーを売っていた。お盆の上には小さな白いデミカップがいくつも置かれ、そばにはコーヒーの入った古いポット。濃い目のコーヒーだ。

 迷路を抜けると海辺に出た。サンゴ礁の海は波ひとつなく美しい。小さな木の船が何隻も浮かんでいる。岸辺の公園にはオープンカフェ。白いテーブルと椅子が緑の芝生の上に置かれていた。

United Republic of Tanzania
タンザニア連合共和国

タンザニア連合共和国主要情報

■面積:94.5万k㎡(日本の約2.5倍) ■人口:4248万人(08年、世銀)
■首都:ドドマ 首都機能はダルエスサラームに。
※外務省HPより(2011年1月現在)

生産量の約9割を輸出しているタンザニア
 アメリカ農務省(USDA)の最新データによれば2011-2012年の世界のコーヒーの生産量の見通しは135,046(千/60kg袋)。タンザニアの生産量は900(同)と、世界の約0.7%で第18位だ。アフリカではエチオピア、ウガンダ、コートジボアールについで4位。主な産地は北部のキリマンジャロ山麓やアルーシャ付近、南部のムベヤの西、ビクトリア湖の西だ。国内消費量の見通しは100(同)と少ない。ちなみに日本の国内消費量は7,125(同)。輸出の見通しは800(同)。また、日本がコーヒーを輸入している国を輸入量順に挙げると、①ブラジル②コロンビア③インドネシア④ベトナム⑤グアテマラと続き、タンザニアは6番目に登場する。

内藤 毅(ないとう・つよし)
出版社勤務を経て、フリーランスへ転向。海外での取材・撮影歴が長く、訪れた国は120カ国以上。その作品は、新聞、雑誌、テレビ番組などでも数多く取り上げられている。主な著書に『TOKYO図書館ワンダーランド―首都圏オモシロ図書館100館走破』(日本マンパワー出版)などがある。

文・写真 内藤 毅 / イラスト おおの麻里
更新日:2011/09/30



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