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コーヒー海外事情

持続と追跡の可能性で、コーヒー新時代に挑む。

コスタリカコーヒー協会理事長 シニア・チャベス氏

 首都郊外の国際空港からサンホセへと向かう道中、ハイウェイの両側からはコーヒー畑がちらほらと視界に入り、早速、生産国に降り立った実感を覚えた。

 そんなよそ者の感動とは裏腹に「1980年代には、まだこの周辺は一面コーヒー畑だったよ」と熟年のタクシー運転手が懐かしんだ。住宅や商店、工場やコンベンションセンターが織りなすその景観は、国の発展と主要産業の変遷を象徴しているようだった。

 19世紀後半には、コーヒーがコスタリカの輸出総額の90%を占める時代が続いたが、今では3%程度となり、医療機器(29%)が主要な輸出品目となった。産業の変遷に伴いコスタリカのコーヒー業界は、Icafe(コスタリカコーヒー協会)主導のもと、量より質を重視する戦略に舵を切り、生き残りをかけてきた。

 Icafeは全国の生産者、処理業者、輸出業者、焙煎業者を統括すべく1933年に設立された非政府系公益法人だ。

Icafeの指導により、国際的な高評価を得るように。

CR-Caféの紹介動画。コスタリカの生産者の情報がどこでもアクセス可能に。

「コスタリカが抜本的にコーヒーの質の改善に取り組んだきっかけは、1989年の国際コーヒー機関による輸出割当制度の廃止でした」とシニア・チャベスIcafe理事長。同制度の廃止は、生産国間の競争激化とコーヒー価格の下落を招いたのだった。

「それ以後、Icafeの主導で処理業者にコーヒー鑑定士を置き、各生産地域のコーヒー豆の特徴と市場のニーズの把握に努めるなどして、私たちが生産したいコーヒーを追求してきました」とチャベス氏は続けた。

 近年、国際的な品評会で高評価を得るなど、コスタリカコーヒーは質の高さで定評を得ている。元来コスタリカは日照量、降水量、気温、標高などコーヒー栽培に適した条件に加えて、火山灰による豊かな土壌に恵まれているのだが、今日の地位と信頼は、Icafeの指導に基づいた品質管理と業務改善によるところが大きい。

消費者の積極的関心を促す、コスタリカコーヒー。

 それでもコスタリカコーヒーの前途は多難だ。2018-2019年度の収穫量が最近43年間で最も低かった上、新種のコーヒーサビ病の流行が懸念されている。そんななかコスタリカコーヒーは、サステイナビリティ(持続可能性)とトレーサビリティ(追跡可能性)という付加価値による差別化を推し進めて、世界のコーヒー市場に売り込んでいる。

 コスタリカは目下2021年に世界初のカーボンニュートラル国家となることを目指しており、Icafeはコーヒー産業におけるNAMA()の取り組みでこれを後押ししている。世界初の農業分野でのNAMAとして、肥料使用量の低減、コーヒー豆処理における水とエネルギーの効率的な使用、コーヒー生産へのアグロフォレストリー導入のための金融メカニズムの促進などに取り組んでいる。

 またトレーサビリティに関しては、生産から輸出までの様々な情報を開示するスマートフォンアプリ「CR-Café」を昨年8月に発表した。今後、業界全体のデータを集積し、生産者から消費者までをインターネットでつなぐ試みが図られる。

 新時代のコスタリカコーヒーは、カップ一杯を通じて、消費者を賢い選択へと招いているようだ。

※Nationally Appropriate Mitigation Actionsの略語で、開発途上国の自主的な温室効果ガス排出緩和活動を指す。2007年の気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)で採択された計画で、現在69カ国で計画、実施されている。


Republic of Costa Rica
コスタリカ共和国

コスタリカ共和国主要情報
■ 面積:51,100平方キロメートル(九州と四国を合わせた面積)
■ 人口:約499万人(2018年 世界銀行)
■ 首都:サンホセ(標高1,200メートル) ※外務省HPより(2019年12月5日現在)

取材・文 仁尾帯刀
更新日:2020/04/16



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