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コーヒー海外事情

古き良き時代のカフェを、街の文化遺産に。

左から:カフェ・トルトーニの定番メニューのコルタード、チュロスとメディアルナ。/カフェ・トルトーニの地下劇場では毎晩タンゴショーが行われている。

 19世紀にパリをモデルに都市開発が行われたブエノスアイレスは、南米で最もヨーロッパの影響が色濃い街だ。威風堂々とした近代建築が過去の繁栄を感じさせる中心街には、社交場として栄えたカフェが今なお残る。
 現存するなかで最も古い、創業1858年のカフェ・トルトーニは、重厚感漂うインテリアが魅力で、訪れる観光客が終日絶えない。壁には、かつてここに集った芸術家たちの絵画が掲げられ、店の奥には生前に通った文豪ホルヘ・ルイス・ボルヘスやタンゴ歌手カルロス・ガルデルらの彫刻が飾られている。まるで博物館のようなカフェはこの街の歴史を知る上で必見だ。

名店カフェの認証と、ブエノスアイレス市の取り組み。

カフェ・トルトーニ勤続40年の名物ウェイターのアンヘルさん。

 今も栄える老舗がある一方、再開発や好不況の時代の波に飲まれて閉店を余儀なくされるカフェも多い。ブエノスアイレス市は、街の栄華の軌跡を残そうと歴史的、文化的価値のある古いカフェやバーを街の遺産として保護する法令を1998年に施行した。
 保護対象とされたカフェやバーは、「カフェ・ノターブレ(名店カフェ)」と定義され、改装が制限される代わりに、市による広報の後押しを受ける。
「登録店は市の観光局、文化局とカフェ・ノターブレ代表の三者が選定します。現在は、73店舗が登録されており、年々増えています」と観光局のソラヤ・チャイナさんが語ってくれた。
観光局は今年、名店を巡る月一度のグルメ・ツアーを開催中だ。レストラン、バーなど毎回異なる4店舗ほどの飲食店を巡るのだが、カフェ・ノターブレも訪問先に入っている。
 一方、文化局は、カフェ・ノターブレを舞台にした音楽イベントを毎年主催している。タンゴ、フォルクローレやジャズなどの音楽家に発表の場を与えつつ、カフェを活気づけるのが目的だ。

きっと見つかる、お気に入りの老舗カフェ。

 カフェ・トルトーニのほかにも人気のカフェ・ノターブレをもう二つ紹介しよう。高級住宅街レコレータのラ・ビエラは、モータースポーツがブームの最中だった1950年代に店名を今のものに変えた。「ビエラ」とはエンジンパーツの名称で、店内には当時のブームが感じられる白黒写真が展示されている。おすすめは屋外の路面席。天に向けて枝を伸ばした樹齢200年以上のゴムの木の木漏れ日の下でコーヒーが楽しめる。南米の雄大な自然を背景にした街のあり方と歴史が感じられるカフェだ。
 世界三大劇場に数えられるコロン劇場からほど近いプチ・コロンは、金色のカウンター周りと濃い褐色の木製調度品が、まるで琥珀に閉じ込められたかのような空間を演出している。劇場の名前を冠して恥じないその内装は、演劇や音楽の鑑賞後の余韻に浸っていたいひと時にもってこいだ。
 73店舗もある古き良き時代のカフェ。街を歩けばきっとあなたのお気に入りの店が見つかるはずだ。趣のあるカフェの、窓辺の席でコーヒーを味わいながら通りを眺めれば、それまで以上に街の魅力が感じられることだろう。

左から:ラ・ビエラ入り口に鎮座するホルヘ・ルイス・ボルヘス(左)とアドルフォ・ビオイ=カサーレス(右)の彫刻。ともにアルゼンチンを代表する作家だ。/琥珀色の内装が美しいプチ・コロン。

Argentine Republic
アルゼンチン共和国

アルゼンチン主要情報
■ 面積:278万平方キロメートル(日本の約7.5倍)
■ 人口: 推定4,359万人(2016年、アルゼンチン国立国勢調査統計研究所)
■ 首都:ブエノスアイレス

取材・文・写真 仁尾帯刀/コーディネーション 常盤雄介
更新日:2017/08/10



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