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コーヒー海外事情

コーヒーの可能性をさぐる、〝カフェの街〟メルボルン。

コーヒーの可能性をさぐる、〝カフェの街〟メルボルン。

 オーストラリアはカフェが元気な国。シドニーにあるカフェの数はパリのそれを凌ぐという。そのシドニーも敵わない〝カフェの街〟がメルボルンだ。この街ではコーヒーが美味しいのは当たり前。さらにその先にある、コーヒーとカフェの可能性を模索する、こだわりの4軒を紹介しよう。

St. Ali South
セント・アリ・サウス

 少々硬い話になるが、国際政治学的に見ると、オーストラリアは〝ベンチャー型中小企業国家〟であるという。専門的な知識や技術をフルに使って未開発分野で成果を上げ、それがまた新たな投資を呼ぶという仕組み。それは中規模国家であるこの国が長年の模索から生み出した、生き残るための術だった──。カフェ&コーヒー文化の隆盛と活況を目の当たりにするとき、この国のユニークな在り方が、そこにも色濃く現れているように思える。

メルボルンのカフェ界で、中心的存在の成功者。

左:ローストの研究に余念がないパージャーさん。23歳の、若き天才バリスタだ。
中央:オーナーのマラテスタさん(左)とバリスタのパージャーさん(右)。
右:“マジック”(フラット・ホワイトのコーヒーを倍量にしたもの)を運ぶスタッフ。8年前に考案されたヒット作だ。

 サウス・メルボルンのこのカフェは、〝豪州ミドルパワー〟を肌で感じることができる場所だ。創業者のマーク・ダルトンさん(現「セブン・シーズ」オーナー)、2年後に店を引き継いだサルヴァトーレ・マラテスタさん、この2人の名前を抜きにこの10年のメルボルンのカフェ・シーンは語れない。マラテスタさんは複数のカフェやレストランの経営に加え、旅行・IT・建設など88ものビジネスを興し、年商は1800万豪州ドル(約16億9000万円)以上。成功者として講演の機会も多いマラテスタさんだが、語るのはあくまでもカフェとコーヒーのこと。

「コーヒー屋が天職なんです」。ポップスターのような出で立ちのマラテスタさんが言う。「私たちはこの街のコーヒー・カルチャーに〝第3の波〟を起こしているという自負があります」。

左:店内奥のロングテーブル席。他にも5人席、4人席、6人席がある。
中央:仕事の合間に午後の一杯を楽しむ女性客。
右:ウェアハウスを改装したもので天井が高く開放感がある。

 7、8年前には、コーヒー豆の出所について人々はアフリカか南米かくらいの違いしか問題にしなかった。それが今では、どの地区の、どの農園でいつ収穫されたものかを多くの人が語っている。20年ほど前に本格的なエスプレッソが吹かせた風は、カフェの数と優秀なロースターやバリスタを増やし、人々に「外でコーヒーを飲む習慣」を根付かせた。マラテスタさんが言う〝第3の波〟とは、コーヒーのポテンシャルを最大限に引き出すいれ方・飲み方のさらなる進化であり、コーヒー原産地へのコミットメントだ。セント・アリはコロンビアに20エーカーのコーヒー農園を所有し、カフェで使う豆の一部を自給している。バリスタのマット・パージャーさんが提案する新しい飲み方「コーヒー・ショット」は、エスプレッソマシーンでいれるロング・ブラック(※)。次なる展開は何か? 前進を止めないカフェの動きに地元の人々も快く巻き込まれているようだ。

※エスプレッソをショート・ブラックというのに対して、エスプレッソをお湯で薄めたものをロング・ブラックという。

左から順に:新メニューの〝コーヒー・ショット〟(6豪州ドル)/〝マジック〟はコーヒーの風味を強調してヒット(4豪州ドル)/ポーチドエッグとアスパラ(12豪州ドル)/サーモンのニョッキ(22豪州ドル)


St. Ali South
セント・アリ・サウス

新しい抽出法とコーヒー産地へのコミットメントで、メルボルンのカフェ&コーヒー文化に〝第3の波〟を起こす。(メルボルン市内に姉妹店あり)
■ www.stali.com.au

Market Lane Coffee
マーケット・レーン・コーヒー

三面ガラス張りでマーケットの雰囲気とつながりが感じられる店内。

バリスタのアイヴィーさん。

 オーストラリアのカフェでは「ロング・ブラック」「フラット・ホワイト」といった独特の名称に出会う。前者はエスプレッソにお湯を加えたもの。後者はエスプレッソ1に対してスチームド・ミルク2を加えたもの。ラテやカプチーノと比べてフロック(泡)が少なく、一口目からコーヒーの風味が楽しめる。「もっと美味しいコーヒー」への飽くなき探求。その思いこそがこの国のコーヒー文化の発展を支えている。

 市街南部、プラーン・マーケットの一角にあるこのカフェが数年前から力を入れて「探求」しているのがポワ・オーバーという抽出法。平たく言えば、日本でお馴染みのペーパードリップ法である。「ずっと私たちはエスプレッソの精度を追求してきましたが、より繊細なアロマを引き出すにはドリップの方が向いているので」とバリスタのアンソニー・アイヴィーさん。

人々を「コーヒー啓発」する、というフィロソフィー。

左:店内に据えられたロースター。
中央:産地(エステート)といれ方で色分けされたコーヒー豆のパッケージ。
右:ポワ・オーバーのスタートアップ・キット(60豪州ドル)。

 このカフェにはポワ・オーバーによる3種類のエステート・コーヒーを飲み比べることができるセットメニュー(2人用、12豪州ドル)があり、それぞれの豆のバックグラウンドと味わいが記されたカードが添えられる。レジ横にはポワ・オーバー・スタートアップ・キット(ドリッパー、ペーパーフィルター、コーヒー豆のセット)が並ぶ。これらのセットにも表れているのがマーケット・レーン・コーヒーのもうひとつの姿勢である。それは「コーヒー啓発」とでも呼ぶべきもの。週に2回(金曜と土曜の午前10時~11時)、カッピングの無料体験講座も実施している。一般の人々に、コーヒーに対する理解を深めてもらおうという試みだ。コーヒーを単に利潤追求の商材とは考えていないということだろう。カップテイスティング大会での優勝歴もあり、メルボルンでもよく知られた日本人スタッフが講師を務めることもある。

左:ポワ・オーバー3種類の飲み比べセット。
中央:グァテマラのサンタ・イザベル農園産のコーヒー(7豪州ドル)。
右:ラテなどエスプレッソ系ドリンクも依然人気。


Market Lane Coffee
マーケット・レーン・コーヒー

マーケットでの買い物の帰りにふらっとカフェに立ち寄ってコーヒーを一杯。ついでにカッピングの無料体験講座に参加してコーヒーのお勉強も──。(メルボルン市内に2店舗姉妹店あり)
■ www.marketlane.com.au

Mart 130 Cafe
マート130カフェ

19世紀に建てられた駅舎がそのままにカフェに。今も10分おきにトラムが停車する。

 店名の「MART」は正式には「R」がひっくり返って鏡文字になっている。鏡に写して見ると「TRAM」。このカフェは1887年に建てられたトラムの駅舎が基になっている。今もホームはトラム96号線のミドル・パークという無人駅として利用されており、10分おきに電車が停車する。メルボルンの中心部から約4.5キロメートル。地元の常連客の他、カイトボードのメッカとして知られるセント・キルダ・ビーチに向かう人々が途中下車して立ち寄る。オープンは2005年12月。現在のオーナー、リチャードとケイトのアンステー夫妻が前のオーナーからバトンを受け継いだのは2011年10月のことだ。「私たちは元々この店の客でした」と、妻のケイトさんが説明する。「自分たちでカフェの経営をしようと動いていたのですが、ある物件が決まる直前にキャンセルされてしまって。その話をこの店でしていたら、前のオーナーが『ちょうどこの店を売る相手を探していたんだ』って」。

その日の天候によって、豆の量や抽出時間を調整。

バリスタのチョウさん。7時半~15時という営業時間の当店で、コーヒーの担う役割は大きい。

 夫のリチャードさんは長らくメルボルンの一流ホテルで接客やマネジメントの指導をしていた人。〝プロ中のプロ〟が目指すのは「カフェとレストランの間のような存在」。前のオーナーが創り出した居心地の良い雰囲気はそのままに、フード・メニューを強化するなどして、「カフェでも美食」が当然のメルボルンっ子たちを唸らせている。ここのビルヒャー・ミューズリーやパンケーキを求めて、わざわざ訪ねてくるツーリストも多い。バリスタを任されているのはレイ・チョウさん。1970年にイタリアからの移民が創業したジェノヴェーゼ・コーヒーから焙煎したコーヒー豆を仕入れているが、その日の天候によって豆の量や抽出時間を微調整し、スタッフのチェックを経て提供している。

左:カフェから出るとすぐホームで、地面には線路が。店名にある「130」は駅につけられた通し番号。
中央:メニューを手書きするスタッフ。
右:オーナーのアンステー夫妻は元々この店の常連だった。

左:トリプル・パンケーキ・スタック(16.9豪州ドル)。
中央:グラノーラと季節のフルーツをトッピングした“名物”ビルヒャー・ミューズリー(11.9豪州ドル)。
右:バナナとホワイトチョコのマフィン。


Mart 130 Cafe
マート130カフェ

古い無人駅の駅舎を利用したユニークな外観。ビーチに遊びに行く人が途中下車してコーヒーを一杯。

Silo by Joost
サイロ・バイ・ヨースト

ニュージーランドから留学中の大学生ケイトさんと彼女の様子を見に来た両親。

 ハードウェア・ストリートにあるこの店は、アーティストで環境活動家のヨースト・バッカーさんがオープンした。そのコンセプトは「ゴミ・ゼロ」。店の傍にはコンポスト・マシーンが鎮座。野菜くずや抽出後のコーヒー豆などの生ゴミはすべてここで処理され、バッカーさんの家業である花卉栽培に利用される。近在の農家や酪農家と直接交渉し、野菜も卵も牛乳も紙パックやビニール袋などは使わず、繰り返し使える容器で納品してもらうようにしている。すべてはゴミを出さないためのアプローチだ。店としては、直接生産者とつながることで中間マージンを省くこともできる。浮いたお金は生産者側に還元される。ゴミ=無駄と考えると、省くべきものはいろいろある。

持続可能な生活スタイルを、コーヒーがつなぎ、広げる。

店は飲食店が並び活気があるハードウェア・ストリートに面している。

 アイスコーヒーを注文すると、ジャムなどを入れるガラス製の空きビンで出てくる。これは「再利用」の実践。「ゴミ・ゼロ」はサステーナビリティを目指す行動なので、当然、店で使う食材もオーガニックということになる。

 コーヒーは、以前は複数の豆を使ってきたが、6ヵ月前、リバーサイド・コーヒー・ロースターズというサプライヤーにカスタム・ローストしてもらうブレンド1本に絞った。ソフトな味わいで、フード・メニューの素材重視の味を殺さぬよう、配慮がなされている。このサプライヤー自体がオーガニックやサステーナビリティを標榜しているところ。コーヒーを飲みに来ていた大学生のケイト・マッケヴィットさんは、「ここに来ると、自分がとてもまともなことをしている気がして、気分がいいんです」と言う。「ゴミ・ゼロ」に象徴されるライフスタイルがサプライヤーや顧客へと広がっていく。その媒介の役割をコーヒーが務めている。

左:アイスコーヒー(3.5豪州ドル)は空きビンで。
中央:右からクッキー、ミューズリー・バー、マフィン(各3~4豪州ドル)。
右:フラット・ホワイトの仕上げ中。


Silo by Joost
サイロ・バイ・ヨースト

〝カフェ文化、繚乱の街〟メルボルンの最先端をいく店は、サステーナビリティがコンセプト。
■ byjoost.com/silo/

1豪州ドル(AUD)=約94円(2013年12月現在)

取材、文・ 浮田泰幸 / 写真・片岡弘道
更新日:2014/02/26



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