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コーヒー料理に挑戦した、コスタリカのシェフと編集人。

コーヒーやカフェに関する本は海外でもたくさん出版されていますが、日本語に翻訳されるものはわずか。本連載では、味わい深い洋書を著者インタビューとともに紹介します。第5回は、コスタリカ発。各地のコーヒー畑を撮影した編集人とフレンチシェフが制作したコーヒー料理のレシピ本です。

 軽食やお菓子のお供に、あるいは食後の口直しにと、コーヒーと料理とは互いを補う極めていい関係だ。

 中米コスタリカで制作された『コーヒーの料理』は、その相性の良さを追求すべく、コーヒーを食材や隠し味に使った料理を紹介するレシピ本だ。

「この本の制作はライターだった亡き妻ヤスミン・ロスと私の発案でした」と出版社オーナーにして書籍編集と写真撮影を行うルシアーノ・カペリさん。

「私たちは以前、コスタリカコーヒー協会の写真集『コスタリカのコーヒー』を制作したのですが、その経験からコーヒー消費文化のグルメ化がコスタリカでも起こりつつあることを感じました。それはこの国の外食産業がより豊かになる時期と重なりました。そこでコーヒーを使った創作料理の本をつくることにしたのです」

コーヒーのレシピとともに、生産から淹れ方も紹介。

 レシピづくりに招いたのは、首都サンホセでレストラン「カルー」とカフェ「カフェオテカ」を営むフレンチシェフのカミーレ・ラットンさんだった。
「コスタリカはコーヒー生産国だけど、コーヒーを料理に使う習慣はないわ」とラットンさん。旧知の編集人の誘いには創作を楽しむ気分を携え、二つ返事で応じた。掲載されたレシピはアペタイザーから順にメインディッシュ、デザート、ドリンクへと続く計20点だ。

「ほとんどが本のために創作した料理なのですが、コーヒー豆を使うキッシュ(P19参照)やケーキは、以前から作っていました。エスプレッソを隠し味に使った揚げ物のソースは、今もカルーでお出ししています」とラットンさん。2014年にカルーで行った出版記念会では、本で紹介した料理を招待客に振る舞ったことを語ってくれた。

 本書の前半ではコーヒーの基礎知識やコスタリカ全8生産地域、また様々なコーヒーの挽き方や淹れ方が紹介されている。生産地域の紹介には、カペリさんが撮影した風光明媚なコーヒー農園の風景写真が掲載されている。

「農園の写真は『コスタリカのコーヒー』を制作したときに撮ったものです。コーヒーの花の咲く季節や光の美しい時期を待つために、撮影に3年を費やしました。何か所かではオートジャイロに乗って上空から撮影しました。コーヒー畑の上を飛ぶ気分は爽快そのものでした」とカペリさんは振り返った。

 コーヒーの淹れ方については、コスタリカで伝統的なネルドリップスタンド「チョレアドール」(P18参照)から日本発「V60ドリッパー」まで8つの方法が紹介されている。

「本を発表した当時は、コーヒーのトレンドが海外からやって来た頃だったので、コーヒーの色々な楽しみ方を紹介したかったのです。僕はイタリア人ということもあってエスプレッソが好きだけどね」とカペリさん。

 コスタリカ在住33年のカペリさんは、近年、国内で販売されるコーヒーの質が良くなったことを感じている。かつては母国から訪れる友人にコーヒー豆を運んでもらっていたが、最近は逆にコスタリカ土産に持っていっていた。

 本書は初版から6年が経った。その間、サンホセではコーヒー豆にこだわるカフェが増え、その消費文化は発展しているという。出版社とシェフは、時代の変化に合わせて、内容を刷新した第3版を制作する相談を始めている。

LA COCINA DEL CAFÉ『コーヒーの料理』
生産国としては、ブラジルに次ぐコーヒー国内消費量を誇るコスタリカ。かねてからの消費習慣に海外のトレンドが加わり、より洗練された文化へと開花しつつあったさなかに、コスタリカコーヒー協会の協力を得て制作された一冊。「コスタリカの再発見」をモットーとするオハラ出版は、児童書、写真集、料理本の3つのジャンルで国の魅力を紹介する。本書は料理本第1号として2014年に発表された全112ページのレシピ本だ。
出版社:Ojalá Ediciones / 価格:25USドル
言語:ポルトガル語 / カラー
19.8(タテ)× 20cm(ヨコ)

著者
レシピ:Camille Ratton カミーレ・ラットン
パリのル・コルドン・ブルーとリヨンのポール・ボキューズ料理学校で料理とレストラン経営を習得したフランス系3世のシェフ。

文:Yazmín Ross ヤスミン・ロス
メキシコ・ヴェラスケス出身。サンホセで通信社記者として務めた後、2006年にカペリ氏とオハラ出版を設立。2017年に他界。

編集・撮影:Luciano Capelli ルシアーノ・カペリ
イタリア・ボローニャ出身。30年以上にわたり映像作家、写真家、音楽プロデューサー、書籍編集人として活動。2020年に他界。

タラス地区で撮影された満開のコーヒーの花。タラスでは、決まって4月の最初の雨から10日後にコーヒーノキが開花する。生産者にとって、開花の具合は、その年の収穫量を推し量るうえでの道しるべだ。

花の命はわずか2日!
コーヒーの花は開花期間が2日ほどと短いので、開花したらすぐに知らせてもらえるように生産者にお願いし、電話を受けて、駆けつけて撮影しました。花の美しさを見てもらいたくて最終ページの見開きに掲載しました。

コーヒー生産地としては新しいコスタリカ北部グアナカステ。同地区にはサンカルロス、ニコヤ半島、モンテベルデなどの産地が含まれ、標高600mから1300mに位置する。

8種類のコーヒーの淹れ方をそれぞれ見開きで紹介。コスタリカで伝統的なチョレアドールからサイフォン、ケメックス、V60ドリッパーまで、コーヒー消費のグルメ化に合わせて、自ら淹れる楽しみを紹介した。

飾り模様が魅力です
コスタリカの伝統なので、淹れ方紹介の冒頭に掲載しました。布フィルターと木製スタンドという素朴な器具で、現在でも家庭や郷土料理店などで使われています。独特な模様がペンキで描かれているものもあります。

細かく挽いたコーヒー豆を生地に練り込んだグリーンアスパラガスのキッシュ。具材は、アスパラガスの他、卵、パルメザンチーズ、リコッタチーズなど。前菜の一品として紹介。

定番料理がコーヒーで変身
アスパラガスのキッシュは、フランスの伝統的な料理の一つです。細かく挽いたコーヒー豆を生地に練り込むことで、いつもとは異なる舌触りと風味を楽しむことができます。

黒ビール、ブラウンシュガー、こしょう、パプリカ、挽いたコーヒー豆などを牛テンダーロインの塊に擦り込んで、包み、30分間マリネした後に、フライパンで軽く焼き、オーブンで仕上げた一品。

コーヒー豆の粒を焦がさないように
フライパンで全面を焼いた後は、こしょうなどの調味料と一緒に肉の外側をコーティングした粒状のコーヒー豆を焦がさないように、低温で時間をかけて加熱するのが調理のコツです。

バナナをバターと砂糖とともにソースパンで炒め、濃いめのコーヒー、バニラビーンズ、ダ-クラムを加えて、フランベしたデザート。写真の作例はバニラアイスクリームを添えて、ミントの葉を散らした。

乾燥したコーヒーの実の果皮(カスカラ)とオレンジリキュール、オレンジジュース、ブラウンシュガーを湯で割った酸味が爽快なドリンク。フレンチプレスで濾して飲む。

Why is Costa Rican coffee so good?
写真集『コスタリカのコーヒー』について

 コスタリカコーヒーの振興事業運営団体シンテルカフェの30周年を記念して、コーヒー協会が2012年に発行した写真集。コスタリカコーヒーの歴史、全国8つのコーヒー生産地区の特徴や、同国のコーヒー産業の技術革新、持続可能性への取り組みなどが、217ページにわたって紹介されている。コーヒー農園の風景やコーヒー労働者たちの働く姿などの写真は、そのほとんどをルシアーノ・カペリ氏が撮影。時間をかけて取り組まれたことが写真の内容から感じられる。文章は、ヤスミン・ロス氏と音楽家兼作家のハイメ・ガンボア氏による執筆。2016年発行の最新の第3版では、レシピ本『コーヒーの料理』も紹介されている。表紙は、実のなるコーヒーノキに巣をつくった極小のノドジロフトオハチドリ。

『Cafe de Costa Rica』
発行元:コスタリカコーヒー協会
価格:42.46 USドル
言語:スペイン語、英語 
26(タテ) × 28.5(ヨコ)cm

取材・文・写真 仁尾帯刀
更新日:2020/12/28



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