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コーヒーと私

村治香織【ギタリスト】

公演の待ち時間には、コーヒーが欠かせない。
村治香織【ギタリスト】

 今年、2012年の春、演劇の舞台に立つという初めての経験をしました。『シダの群れ 純情巡礼編』で、「ギターの女」という役をいただいたのです。台詞や演技はなく、物語の要所要所でギターを弾く。俳優さんの台詞を聞きながら弾く場面もあり、これはとても新鮮でした。台詞や演技の空気を感じながら、台詞の邪魔をしないように、でも、音はしっかりお客様の心に届くように弾く……というのが、なかなか難しい。台詞を聞きすぎてしまうと自分の演奏がおろそかになるし、演奏に集中しすぎると表現が大きくなりすぎてしまうし……最初はとまどいましたが、やっていくうちに徐々にその微妙な心理バランスを自分で楽しむようになっていきました。

 物語をつなぐストーリーテラーのような役目もあったので、お客様の存在を意識しつつ、身体の半分は物語の中にいるという、以前には感じたことのない心理状態を味わいました。

 そんな状況で約1カ月、28回の公演が続くので、心身のバランスをよい状態に保つことがなにより大事。集中する時間とリラックスする時間を自分なりにうまく使い分けることに務めました。たとえば、リラックスしながら適度に自分のテンションを高めるために、待ち時間にはコーヒーが欠かせませんでした。コーヒーは大好きで、普段の自分のコンサートでも、本番前のリハーサルの後に必ず1、2杯は飲んでいます。カフェインのおかげか、気分がしゃきっとするのがいいんですよね。

スペイン暮らしでは、朝のバルでコーヒーを。

Illustration by takayuki ryujin

 子供の頃からずっと、コーヒーは大人の飲み物というイメージがありました。私の母が毎晩、コーヒーを飲んでいたのです。いつも同じ陶器のカップで飲んでいた姿を、今もはっきりと覚えています。夕食後のほっとくつろぐ時間だったのか、おいしそうにコーヒーを飲む母の様子が印象的で、自分でも飲んでみたいけれど、〝子供は眠れなくなるからだめよ〟といわれて……。大人にならないと飲めないものなんだ……というような、ほのかな憧れのような気持ちもあったかもしれません。

 初めてコーヒーを飲んだのは、高校生のとき。ギタリストとしてデビューしたら、レコード会社の方が仕事の後にレストランに連れて行ってくださったりすることがあって、食後にコーヒーが飲めるんです。私は最初からお砂糖もミルクも入れず、ブラックで飲んでいました。ちょっとおませだったかもしれないけれど、きっと母のイメージがあったのでしょうね。お仕事で高校1年生のときにパリ、2年生でイタリアにも行きましたが、そこで飲むコーヒーは日本のコーヒーとはぜんぜん違っていて、苦いけどおいしかった。その影響か、以来、いちばん好きなコーヒーはエスプレッソです。

 中でも、スペインで飲むエスプレッソはすごく濃いものが多いのですが、大好きですね。もともとスペインではエスプレッソのような濃いコーヒーが一般的で、〝カフェ・ソロ〟という名前で、小さなカップに入って出てきます。ここ4年ほど、1年に数カ月アパートを借りてスペインに滞在しているのですが、朝はバルに行って、パン・コン・トマテ(トーストしたバゲットにニンニクをすり込み、トマトをのせてオリーブオイルをかけたもの)とオレンジジュースとコーヒーの3点セットで幸せな気分になります。朝だけは、たまにミルクを入れた〝カフェ・コン・レチェ〟にすることもあります。

パッケージも愛らしい、コスタリカのコーヒー。

最近は“思い立ってぶらりと行く旅”にはまっている。訪れた街で、こだわりのコーヒー屋さんを見つけて入るのが好きなのだとか。
撮影協力:ジャッジョーロ銀座
☎03-5537-2233
www.giaggiolo.jp

 最近行って、印象深かったのは、中南米のコスタリカのコーヒーです。上品な酸味があって、とても飲みやすいと思います。コスタリカには珍しい生物がたくさんいるのですが、私が一番好きなのが、アカメガエルという、オレンジ色の目をしたカエル。身体は黄緑で、脚の途中から指先までが目と同じオレンジ色なんです。それまで私はカエルが苦手だったのに、その愛嬌にすっかり魅了されて、アカメガエルがパッケージにプリントされているコーヒー豆をみつけて、お土産にたくさん買ってきてしまいました。

 今も、実家に帰ったときは、私が起きる前に母がコーヒーをいれてくれています。目が覚める頃に、家の中でコーヒーの香りがしてくるのが大好きで、私にとって、それはひとつの幸せのかたちなんです。いつか私も、家族にそんなふうにコーヒーをいれてあげたりするようになるのかなと、ちょっと考えることもありますが、まだまだそれは先の話ですね(笑)。

文・牧野容子 / 写真・大河内禎
更新日:2012/10/26

Profile

村治佳織(むらじ・かおり)
東京・台東区生まれ。3歳からギターを始め、1992年、ブローウェル国際ギター・コンクールと東京国際コンクールで優勝。93年、リサイタル・デビュー、続いてCD『エスプレッシーヴォ』をリリース。●10月の公演予定=10/6取手市民会館、10/13富士ロゼシアター、10/20鎌倉芸術館、10/21岡崎シビックセンター。
村治香織
Information

村治佳織の作品より 『プレリュード』
ユニバーサル ミュージック クラシック ¥3,000 (税込)
洋楽、クラシックの名曲10作品を収めた最新作。注目は、音楽家坂本龍一が村治のために書き下ろした新曲「プレリュード」と、同じく坂本作曲の「スモール・ハピネス」。「スモール・ハピネス」はカンヌ映画祭にも出品された映画「一命」の挿入曲としても知られる。ほかにビートルズのヒット曲「フール・オン・ザ・ヒル」なども。
プレリュード


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