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コーヒーと私

姜 尚中【政治学者】

仕事と私とコーヒーと。 Vol.18
姜 尚中【政治学者】

 政治学者としてのご活躍はおなじみの姜尚中さん。20代から愛してやまないコーヒーの魅力について、地方創生の視点からもお話ししていただきました。

 大学時代、ジャズ喫茶でコーヒーの美味しさに開眼。20代が終わる頃には2年間のドイツ留学で、さらに新しいコーヒーの魅力に出会った。
「私にとって、世界で一番、朝のコーヒーが美味しいのはドイツです。まろやかで口当たりが良くて、何杯も飲めるけれど、どういうわけかあまり胃にこたえない。インビスと呼ばれる屋台(軽食スタンド)があって、冬の寒い朝、焼いたソーセージにマイルドな辛子を塗ってパンに挟み、それを頬張りながら飲むコーヒーは、優しさと温かさが身体に染み渡る味でした」

 今もコーヒーは毎日欠かせない。執筆中はもちろん、休みたい時にも。
「コーヒーでひとときのタイムスリップを楽しむ。そこに甘いものがあれば、もういうことなしです」

 意外なようだが、甘いもの好きだ。
「家の近所のよく行くカフェはフレンチプレスを使っています。この店に程よい甘さのクリームが入ったロールケーキがあるのです。フレンチプレスで淹れたコーヒーは豆の生の感じがダイレクトに伝わってきて油分も豊富ですが、そのロールケーキと一緒にいただくと、油分がクリームでいい具合に中和されて、とても美味しいのです」

熊本ならではの、コーヒー文化を育てたい。

Illustration by takayuki ryujin

 政治学者としての活動に加え、2016年1月に故郷の熊本県立劇場の館長に就任。毎月、地元に帰省している。
「帰ると必ずコーヒーを飲みに行く喫茶店もあります。ただ、ご存知のように2016年4月に熊本地震が発生し、それによって昔から営業している多くのコーヒー店が廃業に追いやられました。もともと大型チェーン店の進出で稼働率が落ちていたところに、地震で焙煎機や用具が破壊されたことが主な原因でした。そのような状況を見て、私としては、熊本のコーヒー文化を絶やさないように劇場としてできることはないかと考えるようになりました。街のコーヒー屋さんたちが長年、作り上げてきた、彼らにしか出せない味や雰囲気をこのまま絶やしてしまうのは勿体ない。劇場にはスペースがあります。そこを提供し、たとえば廃業になった方々を組織して、何かコラボレーションできないかと思ったのです」

 今年、熊本県立劇場ではジャズ・コンサートや夏の盆踊り大会の際に、劇場のホワイエ(ロビー)でコーヒーや豆の販売を予定しているそうだ。
「朝の30分、今日のトピックスのようなミニレクチャーを開催し、そこでコーヒーを飲んで会社に行く。そんな場があるのもいい。コーヒーを通じて人が集まり、そこでつながった異業種の人たちが連携してコーヒーを盛り立てていくことで、街の活性化にも期待できるのではないでしょうか」

 小さな店にも手間暇かけて作られた技術の集積がある。それを地域の中で生かしていく発想を持つことが、今後の地方創生には大切なこと。コーヒーは、まさにその一例だという。
「コーヒーとは単なる飲み物ではない。人と人をつなぐ不思議な可能性を秘めたものです。そのように考えると、今後、コーヒーからいろいろなことが広がっていくかもしれません。改めて熊本のコーヒー文化が街に根付くように、できることをしていきたいと思います」

文 牧野容子 / 写真 河内彩
更新日:2020/04/16

Profile

姜 尚中(かんさんじゅん)
1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍している。著書に100万部超のベストセラー『悩む力』を始め、『漱石の言葉』、『母の教え 10年後の悩む力』ほか多数。
協力/舘田珈琲焙煎所(TEL.03-6263-0433)
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