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コーヒー海外事情

世界でいちばんコーヒーが好き!ヘルシンキのカフェ事情。

世界でいちばんコーヒーが好き!ヘルシンキのカフェ事情。

森と湖、オーロラ、サンタクロース、デザイン……フィンランドが誇るべきものはたくさんあるが、世界一コーヒーが好きな国民であることもそのひとつだろう。
そんなフィンランドで最大の都市ヘルシンキに、話題のカフェを訪ねた。

Good Life Coffee
グッドライフ・コーヒー

夏の短いフィンランドでは、オープンエアの席が人気。ディスプレイは店主手作りのロゴ入りオブジェ。

上:街角にひっそり立つカフェ。近所だけでなく遠くからもひっきりなしにお客さんがやってくる。下:コーヒーの価格は1杯2ユーロから4ユーロ。

上・オーナーのラウリ・ピピネンさん。/下:オリジナルマグ(5ユーロ)は観光客にも人気。

 フィンランドでは、雇用契約に「コーヒー休憩」が明記されている。法で保障されているものではないが、当然の権利として社会的に認知されている。ただの休憩でなく「コーヒー」がわざわざ付くのだ。午前中に1回と午後に1回、昼食後も含めて会社にいる間に3回コーヒーを飲む時間が設けられている。当然、国民ひとりあたりのコーヒー消費量は世界トップ(※)だ。2002年にノルウェーにトップの座を奪われたときは新聞やテレビで報道され大騒ぎになったが、翌年トップの座に返り咲く。コーヒー消費量世界一はフィンランドの人たちの自慢でもある。

※「世界一」はフィンランド食料飲料産業連盟による見解。調査によってはルクセンブルクが世界一とのデータもあるが、「国内消費に限定するとフィンランドが世界一」という見解である。

ヘルシンキの小さな焙煎所で、コーヒーをいれる修業を。

 ところがこんなにコーヒー好きなのに、コーヒーの味はどこへ行ってもだいたい同じ。コーヒーメーカーでいれたコーヒーで、おまけに家庭で飲むのと同じ商品が好まれる。スーパーでもガソリンスタンドでもその味。そんな中、ヘルシンキではコーヒー事情が少しずつ変化してきている。

 今年4月にオープンしたばかりの「グッドライフ・コーヒー」は、26歳の熱き青年、ラウリ・ピピネンさんが手がけたカフェ。「自分がほんとうに美味しいと感じるコーヒーを、みんなに飲んでもらいたかった」と、各国のコーヒーを飲み歩き、ヘルシンキの小さな焙煎所でコーヒーをいれる修業をし、本やインターネットで勉強を重ねた。フィンランドには、コーヒー教室などどこにもないから、あくまでも自己流でやるしかない。

 フィンランドのカフェといえば伝統的にケーキやパンが並ぶものだが、クッキーや簡単なお菓子を置くだけにした。コーヒーそのものを味わってほしいから。ドリップコーヒーの豆の銘柄は日替わりで、エスプレッソやラテ、カプチーノなども揃える。客はその日の気分を伝えて、リクエストすればいい。店内のディスプレイもピピネンさんの手作り。フリーマーケットなどで家具を少しずつ集め、大工の父とふたりでカウンターや窓辺のベンチを作った。

 オープンしてわずか数カ月だが、いまや観光案内所が外国人旅行者に「美味しいコーヒーが飲める店」とすすめるほどの評判店になった。観光する場所など何もないような住宅街。口コミも多い。いろんな縁で集まる人たちのために、ピピネンさんは念願のコーヒー教室をそろそろ開こうと考えている。

Good Life Coffee
グッドライフ・コーヒー

今年4月、26歳の若きオーナーが手作りでオープン。フィンランドのカフェの流れを変えた話題店である。アットホームな雰囲気の店内で販売するのは、ピピネンさんが厳選した小さな焙煎所のコーヒー豆やコーヒーグッズ。
goodlifecoffee.fi

Cafe Regatta
カフェ・レガッタ

夏は穏やかなヘルシンキ湾。木造の小屋は1890年に建てられたという。犬の散歩がてら立ち寄る人も多い。

 コーヒーがフィンランドに初めて伝えられたのは18世紀初頭。当時、コーヒーは薬局で販売されていた。コーヒーを飲めば頭痛や心臓病、鬱病にも効くようだ——と人々は噂した。そんな薬のような存在から、コーヒーが嗜好品として愛されるきっかけを作ったのは、禁酒法。施行された約100年前に、食事や会議の場で、アルコールの代わりにコーヒーが提供されるようになったという。

極寒の冬にも眺めたい、バルト海へと続く湾の風景。

海からの風が心地いい外のテーブル席。コーヒーメーカーでいれたごく普通の1杯だが、この環境で味わいアップ。

 フィンランドでは今でも、コーヒーの効果を頼って飲む人が少なくない。「頭が痛いの? 今日はまだコーヒーを飲んでいないからでしょ」と急いでコーヒーの準備を始めるほど。頭がすっきりするからと起きがけのコーヒーが欠かせず、なおかつその一杯はカフェでという人も多い。そのためフィンランドのカフェは朝が早い。朝7時オープン、そのぶん夕方5時にはカフェが閉まってしまう。さらに土日は休むカフェが多く、仕事帰りに友達と会ったり、週末の散歩ついでにと、気軽に入れるカフェが少ないのだ。

 そんな中毎日営業、クリスマスでも休まず(地下鉄さえ運休する!)、朝10時〜夜11時まで営業するカフェがある。10年前、海辺にオープンした「カフェ・レガッタ」だ。オープン当初は太陽の出ている間が営業時間だった。

 ヘルシンキ湾沿岸でもひときわ目を引く小さな赤い小屋。中にはオーナーの古い私物がところ狭しと並んでいる。絵画やぬいぐるみ、置物……誰の家にもどこかに眠っていそうなものばかり。「おばあちゃん家に来たみたい!」と童心に戻れる空間だ。

おすすめスイーツはシナモンロール(2.9ユーロ)。

 バルト海へと続く美しい海を眺めるには、外のテーブル席がおすすめだ。真冬、マイナス15度くらいでも快晴なら大丈夫。ブランケットをはおって陽を浴びながら凍てついた海を眺める。もちろん温かいコーヒーといっしょに。焚き火もおすすめだ。火をおこしソーセージを炙りながらアツアツの焼き立てをいただいて、コーヒーで締める。

 最後にこの店の一風変わったサービスを紹介しよう。コーヒー(2ユーロ)を1杯おかわりするごとに、5セント(※)ずつ戻ってくるというシステムだ。飲めば飲むだけ安くなるとあって、かつて11杯おかわりした客もいたというが、さすがに2ユーロ全部を取り戻した強者はまだいないそうだ。

※1セントは100分の1ユーロ。

Cafe Regatta
カフェ・レガッタ

ヘルシンキ市民に愛される名物カフェ。ノスタルジックな赤い木造の小屋と海の眺めが素晴らしい。店内にはオーナーのサマーハウスや倉庫に眠っていたものがあちこちに。最近では常連客が自分の家から古いものを持ちこむことも。


Fuel
フエル

天井から間接的に入る自然光で、心落ち着く空間。あちこちに観葉植物もディスプレイされている。

 玄関の扉を開けたとたん、ふわっとコーヒーのいい香り、キッチンには必ずコーヒーメーカー。パパとママは子供に「人が遊びにきたらコーヒーを用意して、一緒にケーキや菓子パンを出すんだよ」と“マナー„をしっかり教える。――これはフィンランドの一般家庭の常識だ。ピクニックに出かけるときはポットにコーヒーを忘れず、本格派はやかん持参で焚き火をし、湯をわかしてコーヒーをいれる。そんなふうに親がコーヒーを楽しむ姿をそばで見ながら、子供たちは育つ。

パパ・ママ御用達カフェは、クールな最新インテリア。

上:レストルームも洗練されている。さすがに世界的な建築家やデザイナーを輩出してきたデザイン大国。/下:コーヒーは2.5ユーロ、フローズンヨーグルトは5.4ユーロ。

 そんなフィンランド人にとって子供と一緒のコーヒーブレイクはごくごく当たり前のこと。カフェには当然のようにベビーチェアが用意されている。そんな中、子連れでより寛げるところを求めて親達は盛んに情報交換する。そのためのSNSも人気だ。この「フエル」もあっという間に“パパ・ママに便利なカフェ„としてリストに仲間入りした。

 「フエル」はデザインやローカルフード、オーガニックを意識したショッピングモール内のフードコートにできたカフェ。真っ白でクールな内装を手掛けたのは、フィンランドで有名なインテリアショップ“Skanno „だ。座面の低いソファやカーペット敷きの店内では、小さな子供たちでも動いたり座ったりしやすい。日中はベビーカーを押しながらやってくる小さな子供連れのグループでにぎわう。

 フードコートにはスシバーやビストロなどのレストランが充実しているので、まずはランチをすませてカフェに移動。コーヒー以外にも、フローズンヨーグルト(フィンランドでは新しい!)、スムージー、話題の小さなベーカリーで焼かれたキッシュやチーズケーキなどもある。普段とは違うものをオーダーして特別な時間を楽しむのだ。

 徹底的にインテリアにこだわった結果、「フエル」にはレジがない。iPadですべて事足りるように最新技術を導入している。Wi-Fi(※)はもちろん電源も確保できるよう、ぱっと見てもわからない工夫をこらしてあちこちにコンセントが用意されている。

 ネットカフェとしても使えるので、近くのヘルシンキ大学の学生たちもやってくる。彼らにとっては15%の学割も魅力のひとつ。それぞれが便利で楽しい使いかたを見つけているようだ。

※相互接続できることが保証された無線LAN

Fuel
フエル

有名インテリアショップが内装を手掛けた最先端カフェ。美しく機能性にも優れ、居心地がいい。
www.fuelbar.fi

Huvilan kahvila
フヴィラン・カハヴィラ

母娘ともに小麦アレルギーがあるため、グルテンフリーにこだわる。コーヒーは1杯1ユーロ。

お昼にはスープ(5ユーロ)のほか、キッシュやサンドイッチ、ピザ(2〜4ユーロくらい)も。自宅にいるようなアットホームな雰囲気。

 フィンランドで伝統的なカフェとは、朝7時からオープンし、大人たちが出勤前のひとときを甘い菓子パンやケーキとコーヒーで過ごす場所だ。だが、近年ヘルシンキ市内では、こうしたカフェが主流ではなくなってきているという。そんな昔ながらのカフェをこれからも引き継いでいきたいと今年2月にオープンしたのが、ヘルシンキ中央駅に近いヘルシンキ市立博物館敷地内にある「フヴィラン・カハヴィラ」だ。

夜中の1時から仕込む、母の手作り揚げドーナツ。

 お店を経営するのはファリンさん母娘。昔ながらのカフェにならって、店内に音楽は流れない。Wi-Fiにもあえて対応しない。昔のカフェの定番メニュー、揚げドーナツも手作り。朝7時の開店に間に合わせるために夜中の1時から仕込みを始めるという。

 家庭のおもてなし風にコーヒーと一緒にケーキや甘いパン、パイなどでお客さんを迎える。すべてグルテンフリーで昔ながらの味を再現させているので、お持ち帰りするお客さんも多い。

 オープンして半年、出勤前の一杯、昔を懐かしがる人たちに加え、最近では外国人旅行客も増えている。

Huvilan kahvila
フヴィラン・カハヴィラ

昔ながらのカフェを引き継いでいきたいと、母娘で始めた。グルテンフリーのお菓子にも人気が集まる。ヘルシンキ市立博物館の敷地内にある。

1ユーロ = 約103円(2012年9月現在)

文・ 森下圭子 / 写真・Kuvat Jouko Vatanen
更新日:2012/10/26



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