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コーヒー海外事情

内藤毅の世界探訪 Vol.4[南アフリカ共和国]

世界120カ国を旅して、数えきれないほどコーヒーを飲み、カフェの写真を撮ってきた。第4回目は、アフリカ大陸最南端の南アフリカ共和国。おっかなびっくりの珍道中です。

カフェ、煙突、ドラム缶、砂浜… 南アの旅でアートに出合う。

 私にとって、2度目の南アフリカ共和国。治安の良くない南ア最大の都市ヨハネスブルグを避けて、インド人の多い、同国第3の都市で海辺のリゾートのダーバンに行くことにした。

 2009年、年末のことである。

夜のダーバンにて、パトカーに救われる。

 隣の国スワジランドから歩いて南アへ入る。現地の人の車に乗せてもらい、着いたのは南アの東部に位置するズールーランドのマクゼだ。火焔樹のオレンジ色の花の下で、陽気な女性たちが野菜や果物を売っていた。

 16人乗りのミニバスを3回乗り換えて、ダーバンに着いたのは夜の8時頃。ホテルまでタクシーに乗るつもりだったが、見当たらない。仕方なく、子供連れの男に誘われて市内を走るミニバスに乗った。すると、すぐ停まり、もう一人男が乗ってきた。嫌な感じがして、あわてて飛び降りた。だがあたりは暗く店は閉まり、人もいない。困り果て、どうしていいか分からない。だが、幸運にもパトカーが目の前に停まった。警官にタクシーを探していると言うと、「流しのタクシーは危ない」と止められ、何とパトカーでホテルまで送ってくれたのだ。流しのタクシーが使えないとは、内戦の国より動きづらい(後で知ったのだが、南アの大都市では夜のミニバスには乗ってはいけないらしい)。

右上から時計回りに:マクゼに咲く火焔樹の花は燃えるようなオレンジ色だ。/(以下ダーバンで撮影)カフェで歓声を上げるママと客。南アの人は写真好きだ。/南ア名物、ジャガイモの塔。/濃厚な味わいのバターナッツかぼちゃ。

 ホテルの部屋は狭いが静かで、気分よく目覚めた。近くのカフェでコーヒーを飲んでいると、警官が朝食を食べに入ってきた。昨夜の命の恩人かと思ったが、どうやら違うようだ。カフェを出て歩くと、あたりはビジネス街。暮れも押し迫った12月31日なので人も車も全く通っていない。でも、ビルの1階で営業中のカフェを見つけて、嬉しくなって入っていった。

 壁には昔のダーバンの街らしいモノクロの写真。ウェイトレスが白いコーヒーポットを運んでいる。エスプレッソを頼み、店の写真を撮ろうとウェイトレスに許可を取ると、彼女は向かいのパン屋にいる女性を指差した。「フォト」と声をかけると、女性は店内に入ってきてモノクロ写真の下にいそいそと立ってしまった。「ママ!」と客から歓声が上がり、彼女は嬉しそう。もっけの幸いで、私はダーバンでカフェの人の写真を初めて撮ることに成功したのだ。

 少し歩いていくと西の広場の先にショツピングビルがあった。1階には大きなファストフードの店、2階にはしゃれたカフェ・レストラン。そして近くにはモスクがあり、まるでインドのようだ。看板にcafeと書かれたインド料理店まである。インド好きの私はすっかり元気になった。

 ビルの中の市場では、ヒョウタン形の珍しいかぼちゃ、バターナッツが売られ、ジャガイモは円柱状にひとつひとつ丁寧にアート的に積み上げられている。世界で最も美しいジャガイモの売り方ではないか。

色鮮やかな美しさ、アフリカフェに感動。

(すべてダーバンで撮影)左上:ランドリー・カフェ。右上:コンビニのコーヒー自動販売機。下:これが砂の彫刻。すべて砂で作られたとは思えない美しさ、精巧さ。そばの小さな箱(これも砂製)には、作品を気に入った人が投げ入れたコインが十数枚。

 明けて1月1日。ダーバンの鉄道駅へやってきた。駅は薄暗く、怪しげな雰囲気だ。だが、近くには明るくて、こぎれいなコンビニがあった。コンビニ好きの私は、中に入ると何だかホッとする。しかも嬉しいことにコーヒーの自動販売機がある。渡された黒い紙のカップには、打ち上げ花火のような、しゃれた白い模様がついている。コーヒーは濃い目でなかなか美味しいものだった。外のテーブルで飲んでいると、孫らしい小さな子供を連れたおばあさんが、私を頼ってそばに座った。一昨夜、パトカーでホテルまで送ってもらったあんまり強くない日本人だとは言い出せない。

 ダーバンは夏。駅のほうからやってきた海水浴客がゾロゾロと歩いていく。海岸沿いにはたくさんのホテルやカフェやレストランがある。看板に〝ランドリー〟と書かれたカフェがあったのには驚いた。洗濯機が置かれた珍しいランドリー・カフェ。パラソルの立つオープンカフェのテーブルには、大勢の人がいた。カメラを向けると、撮られようと動き出す。ダーバンの人は大の写真好きだったのだ。

 ダーバンの海は荒いが、砂浜は広かった。若者はサッカーに興じ、家族連れはバーベキュー。感心したのが砂の彫刻だ。砂で人魚や動物や地図が作られている。ライオンのたてがみは精巧で、アフリカの地図には折からワールドカップの年、小さな南アの国旗が立てられている。

 道路に置かれたゴミ入れはまるで芸術作品のようだ。ドラム缶に色鮮やかな幾何学模様が描かれている。これは、プレトリア近郊に住むンデベレ族(アフリカのピカソといわれている)が、自宅の外壁に水性ペンキで描くという世界的に有名な模様だ。以前ダーバンに来たときに、この模様を使ったカフェを見つけて感動したことがある。このアフリカ的な模様を壁一面に描いた店の名は「アフリカフェ」。憎いことに明かりを落とし、ハッキリとは見えないようにしてある。世界有数の美しいカフェのような気がする。

アフリカのスイス、レソト王国へ向かう。

左上:ンデベレ族の独特の幾何学模様が内装に使われたカフェ。右:ノースビーチで見つけたゴミ箱にもこの幾何学模様が。(以上ダーバンで撮影)左下:ブルームフォンテンのターミナルで開店していた素朴なコーヒー屋。女性の笑顔がいい。

 南アには、面白いことに首都が3つある。立法の首都は日本人がよく行くケープタウン、行政はプレトリア。司法の首都はブルームフォンテンで、レソト王国の玄関口でもある。レソトは周りを南アに囲まれた「アフリカのスイス」といわれる山多き内陸国。私はカフェの写真を撮るためにこのレソトへ入ることにし、ダーバンからブルームフォンテンへ向かった。

 バスとタクシーを用心しながら乗り継ぎ、早朝5時にブルームフォンテンの長距離ミニバスターミナルに到着。このターミナルから、レソトの首都マセル行きのバスが出る。待合室にいると、レソトの民族衣装である毛布を羽織ったおばあさんが真向かいに座った。渋く威厳があってなかなかいい。猛烈に写真を撮りたくなったが、カメラは取り出せない。

 6時すぎに外に出ると、入口の横にはなんと、簡易テーブルひとつで女性のコーヒー屋が店開き。コーヒーを頼み、恐る恐るカメラを女性に向けた。はにかみ笑うが、怒らない。ここはダーバンと違って、標高が高いため夏とはいえ朝は寒い。コーヒーは温かく、冷えた体を温めてくれた。見上げると、実に珍しいものが立っていた。携帯電話と銀行のカラフルな広告が描かれた、大きな煙突だった。

 7時頃にはマセル行きのバスに乗ったが、なかなか動かない。ミニバスは満席にならないと出発しないのだ。12時頃には、人と荷物がミニバスに入りきれないほど一杯になった。そこで登場したのが〝詰め込み屋〟。うまく荷物を積み、そこでようやくミニバスはマセルに向かった。移動時間はわずか2時間半だった。

 バスはマセルの南ア側のターミナルに着くので、歩いて国境を越えレソト王国に入る。国境では民族衣装の毛布を羽織った男が大量の杖を売っていた。どうやら、杖もレソトの民族衣装の一種のようだ。周囲にはファストフード店とテイクアウトのコーヒーを売る店があるが、カフェはない。タクシーで市場の近くに行き、土地の匂いのするカフェを探したが、なかなかない。携帯電話販売店の2階にやっと見つけたが、モダンな店。結局、レソトらしいカフェには出合えなかった。

 レソトを後にすると、南アの旅もいよいよ終盤。南アのゲートウェイはヨハネスブルグ国際空港で、この空港へはヨハネスブルグからバスで行くのが一番便利なのだが、安全とはいえない。そこでヨハネスブルグ北部にある都市、プレトリアを迂回して空港に向かうことにした。

南ア産のコーヒー、“RICOFFY”発見。

上2点:レソト王国の首都マセルで立ち寄ったモダンなカフェは、小さな舞台もあるしゃれた店。カプチーノが美味しい。下:老舗の「カフェ・リーシェ」。プレトリアの中心、チャーチスクエア前に建つ古色蒼然とした建物の中にある。

 プレトリア行きのバスに乗るため、ブルームフォンテンの長距離バスターミナルに戻ると、明るいカフェがあった。売店が広く、たくさんの食品が並ぶ。店の看板は大きく、ワールドカップの公式スポンサーとタイアップしたものだった。私はコーヒーとサンドイッチを買った。屋内のイスは、バスを待つ客で満席状態だった。

 夜の10時すぎにバスに乗る。新年早々だからかとても混んでいて、私の席はバスの中の〝サロン室〟というスペース。隅のほうにコーヒーをいれる道具があり、誰かいれてくれないかと期待したが、ダメだった。

 朝の7時頃にプレトリアに到着。近くの鉄道駅の入り口にあったキオスクのような店で、コーヒーとパンを買い朝食にする。パンもコーヒーもあまりうまいものではない。トイレを借りにホームに入ると、仰向けに倒れている女性がいて、大勢の人が遠巻きに見ていた。事件か!と思わずカメラを出しかけたが、すぐに引っ込めた。

 カフェを探しに駅を出た。運よく、市内バスの停留所の前に小さなコーヒー屋を発見。南ア産のインスタントコーヒー〝RICOFFY〟の缶の横でコーヒーを作っている。飲もうとしたが、たったひとつのテーブルには、先客の若い男。あきらめ、代わりに南アの伝統的ドーナツを買った。ずっしり重みのある生地で食べ応えがある。

 街の中心には、24時間やっている観光案内所がある。その数軒先にあったのが、「カフェ・リーシェ」という老舗。カップは厚めでコーヒーは飲みやすい。黒いカウンターの上には、昔のプレトリアらしいモノクロの写真。店にいた2人にカメラを向けると、肩を組み、いい笑顔を向けてくれた。

 春には美しい紫の花を咲かせるジャガランダの並木道を歩いて、ホテルに向かった。通りかかった警官に大きな荷物を笑われ、ホテルの前で猛犬に吠えられた。ヨハネスブルグ空港へは、念のためホテルで頼んだ車に乗った。運転手にお金を払うと、いい金額だったのか、拝むように受け取った。少し悔しい。気分直しに、空港の店でコーヒーを一杯。ホッとするやら、名残惜しいやら。

Topics of South Africa
南アで愛されるチコリ入りコーヒー“RICOFFY”

プレトリアのコーヒー屋で見つけた黄色い缶には“RICOFFY”の文字が。

 米国農務省(USDA)の最新データによれば、2011-12年の世界のコーヒー消費量の見通しは133,855千袋(60㎏/袋)。南アフリカ共和国のそれは400(同)で世界の約0.3%で、日本の約5.7%という計算になる。アフリカ圏での消費量の順位は5位である(1位はアルジェリア)。ところで南アでよく飲まれているコーヒーをご存じだろうか? それはヨーロッパ原産のハーブ・チコリの根のエキス入りコーヒー“RICOFFY”。もともとは19世紀初頭、ナポレオン時代のフランスでコーヒーにチコリを入れる飲み方が定着、それがやがて南アにも伝わったらしい。1950 年代初めからは、南ア国内でチコリ入りのインスタントコーヒーが製造されるようになり、さらに広く一般に飲まれるようになったという。

Republic of South Africa
南アフリカ共和国

南アフリカ共和国主要情報

■面積:約122万k㎡(日本の約3.2倍)
■人口:約4,999万人(2010年、世銀)
■首都:プレトリア
※外務省HPより(2012年3月現在)

内藤 毅(ないとう・つよし)
出版社勤務を経て、フリーランスへ転向。海外での取材・撮影歴が長く、訪れた国は120カ国以上。コーヒー愛好家でもあり、各国でカフェのある風景、人々を撮影している。『シリーズ日本の伝統工芸-染め物“京友禅”』(リブリオ出版、産経児童出版文化賞受賞)も手掛けた。

文・写真 内藤 毅 / イラスト おおの麻里
更新日:2012/06/27



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