COFFEE BREAK

世界のコーヒー

世界のコーヒー-World-

2021.02.01

生産業者の実態をわかってもらうため販売価格の内訳も公開 ハーグから

世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。SDGsをテーマとしたコーヒービジネスを追うシリーズ、今月はコーヒー生産者に寄り添うオーナーたちをオランダに取材しました。まずは、どこまでも透明性の高いビジネスを展開する焙煎所を訪ねます。

生産業者の実態をわかってもらうため、販売価格の内訳も詳細に公開。

Vol.121 オランダ・ハーグから。

ウガンダ北部ネビ県の生産者たちとステファンさん。本格的な生産はスタートしたばかりだが、肥沃な土地で育つ品種は、酸味とコクがほどよいCulamukという銘柄に。売値は28ユーロ/kg。生豆の仕入れ価格は6.5ユーロ/kgで、農家に支払われるのは2.45ユーロ。ちなみに、ハーグ市までの輸送料は1.95ユーロ/kg。(写真提供:Roast Factory)

 ハーグ市南部の工業エリアに建つ、元フィリップス社の工場。長い間使われていなかったこの巨大ビルは今、市内のスタートアップたちの拠点として活気を取り戻している。
 約10年バリスタとして働いた後、2016年に独立したステファン・コスターさんの焙煎所「ロースト・ファクトリー」は、このビルの6階にある。

[上]18歳からコーヒーの仕事に携わっているというステファン・コスターさんは、現在32歳。[下左]CO2排出量を抑えるために、ハーグ市内の配達は全てこのカーゴ自転車で行っている。[下右]「カフェスペースでお客さんにカプチーノをサーブできる日が待ち遠しい」とステファンさん。

 ステファンさんが扱っているコーヒー豆は8種類。アフリカや南米で高品質のコーヒー栽培に取り組む、小規模な生産者団体から直接仕入れている。ホームページでは、風味の特徴や産地情報と共に、生産者たちの写真も多く掲載。一杯のコーヒーの「全ストーリー」を余すところなく紹介している。驚くのは、販売価格の内訳までも詳細に記載していることだ。生産者に渡る額、輸送のコスト、そして焙煎や梱包、配送にかかる費用などをグラフで表示し、「不明な点があれば連絡をください」とも記されている。
 ここまでビジネスを透明にするのは、「生産者に渡る額が少ないということを、みんなに知ってほしい。安いほどよいという意識を変えることからしか、真にフェアなトレードは生まれない」と信じているからだ。「僕は可能な限り高値で仕入れているが、売値を極端につり上げるわけにはいかない。だから、効率よくビジネスを運営すると共に、自分の取り分を減らしてバランスを取るように努めているけど、全く不満はないよ。美味しいコーヒーを提供することを通して、世界レベルの環境や貧困問題に貢献していくことが僕のやりたいことだから。焙煎所がうまくまわり、1年に一度家族でバケーションにでも行ければ僕は満足(笑)」

[上]がらんと広い焙煎所。これから改装をしてカフェスペースを作る。[下左]ローストファクトリーは元工場の最上階6階で、屋上のガラスハウスと繋がっている。コロナ収束後はイベントなども開催する予定。
[下右]扱う豆は8種類。グアテマラ、ウガンダ、ルワンダ、コロンビア、ブラジルから仕入れている。

 そんなステファンさんのクライアントの大半はカフェやレストランだが、卸の販売はハーグ市内の店舗に限定している。配達は、自ら自転車で行っているためだ。コロナ禍で飲食店の営業が制限されている昨今は、個人客のオンライン注文の割合が増加しているというが、こちらも市内は自転車で届けている。
 コロナ収束後には、スペースの一部がカフェに変身する予定だ。「通常営業ができるまでにはまだまだかかりそうだが、その時間は改装のために有効に使うよ」と笑顔で語ってくれた。

〈カフェ情報〉
ロースト・ファクトリー(Roast Factory)
www.roastfactory.nl
*現在、営業はオンラインのみ

*1ユーロ=約125円(2021年1月現在)
写真・文=ユイキヨミ
アムステルダム市在住
更新日:2021/2/1

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