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COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
中南米の伝統を受け継ぐ、マイアミの熱いカフェ事情。
All Day オールデイ
日の光が燦々と降り注ぐ窓や、開放感のある高い天井、存在感の光る流木。店内に足を踏み入れた瞬間に、かすかな高揚感を感じる。「オールデイ」は環境に配慮し、品質の高いコーヒーを提供する、広々としたカフェ。 外からコーヒーをオーダーして、立ち飲みができる窓、「ベンタニータ」があり、これは南米系の移民が多く住む、マイアミのカフェらしい特徴だ。コンセプトは、コーヒーバー。「気軽にふらっと立ち寄って欲しい」という意向から、バーのように、カウンターでオーダーしてそこで飲むことも、テーブル席につくこともできるようなインテリアを設計した。 コーヒー豆は、アメリカ全土の少量生産をしているロースターから調達。その中の一つ、ウィスコンシン州の「ルビー」には、甘いコーヒーを好むマイアミの南米系の人に向けて、甘く、チョコレートの風味が出るように頼んでいる。
コーヒーカクテルは、マイアミの新たなトレンド。
共同オーナーのカミーラ・ラモスさんはキューバ出身。ダークローストの強いコーヒーを飲んで育った。 「マイアミの人口の40〜50%はキューバ系なので、エスプレッソなど濃いコーヒーを飲むのに慣れています。ほとんどのカフェがエスプレッソにこだわっていますが、マイアミにも新しい風を送りたい」と話す。 人気なのは、「コーヒーカクテル」のシリーズ。お酒は入っていないが、コーヒーと何かを足したドリンクを打ち出す度に大ヒットするという。ライムジュースやラベンダーの茎のシロップなどを、コーヒーに入れて、カクテルのように味わうトレンドは、マイアミ全体で流行っていると話す。 「新しいコーヒーカクテルを考案しようと、クリエイティブになるのは楽しい」とカミーラさん。年間を通じて暑いマイアミの気候では、さっぱりとしたコーヒードリンクが人気になるのも納得だ。
Café Demetrio カフェ・デメトリオ
1997年にビジネス地区のコーラル・ゲーブルスにオープンした、本格的なコーヒーハウス。歴史あるヨーロッパの館のような佇まいで、格式の高い存在感を放つ。2017年にキッチンが作られる前は、広々としたスペースながら、地道にコーヒーだけをサーブしていた。 ビジネス街に位置するため、ミーティングやインタビューの場所にも使われ、市長や州知事などの政治家にも愛されている。最近はジョージ・W・ブッシュ前大統領も家族で訪れたそう。またこのエリアは、パーキングがほとんどないため、マイアミでは珍しく、歩いている人が多い。たまたま見かけて、ふらりとお店に入ってくる人も。常連客が多く、毎日来る人、1日に数回訪れる人もいるそうだ。 マネージャーのカルロス・フス・モスさんはキューバ出身。「あくまでコーヒーがメインなので、凝った料理はありませんが、サンドイッチなどの軽食メニューは好評です」と話す。
カカオパウダーをまぶした、コーヒーがシグニチャー。
「マイアミの人はとにかくコーヒーが大好き。ラテン系の人の間では、お砂糖をたっぷり入れる飲み方が一般的です」と、カルロスさん。甘党の人々に受けてもらえるように、甘いコーヒーを取り揃え、同店のシグニチャーはその名も「カフェ・デメトリオ」。ダブルショットのエスプレッソにフォームしたミルクがたっぷりとのったカプチーノで、砂糖もたっぷり入っている。ミルクの上には、型抜きで、ハート型にカカオパウダーをまぶして、見た目にも可愛らしい。 ミュージックライブにも力を入れていて、ピアノやスパニッシュギターの演奏も行っている。ベネズエラ出身のオーナー、デメトリオ氏のマイアミの人々の文化的なコミュニティを作りたいという意向のもと、様々な取り組みが実施されている。
Vice City Bean ヴァイス・シティ・ビーン
文化的にも経済的にも、フード業界が急速に発展しつつある今のマイアミを表現したようなお店。当初はオーナーのエバとローランド・ベイカーさん夫妻が、三輪車の荷台にコールドブリューを詰めて売っていた、小さなビジネス。それがわずか3年で、大型カフェが繁盛するほどに成長したのだ。このサクセスストーリーには、二人の起業家精神がうかがえる。 路面店をオープンさせたきっかけは、住居用のロフトを探していた時に、たまたまテナントを募集しているこのビルを見つけ、「カフェにぴったりだ!」と思ったこと。当時、このエリアには何もなかったが、クリエイティブ系の会社がポツポツと点在し、これから発展するエナジーを感じたと言う。 「コーヒーショップがオープンすると、そのエリアが発展するといわれているので、不動産屋の人が喜んでいた」とローランドさんは笑う。
マーケティングを考慮した、スタートアップの精神。
コーヒーは、少数生産のものを3〜5種類展開。現在はミシガン州の「マッドキャップ・コーヒー」などをサーブしている。 「種類によっては、620グラムほどしか買えないものもありますが、希少価値が高いものを提供しているので、好評です」と、ローランドさん。またトニックウォーターとエスプレッソを混ぜた「エスプレッソ・トニック」は一押しのメニュー。爽やかな飲み口で、暑いマイアミの気候には、気持ちが良い。フードはすべて手作りで、エンパナーダや抹茶ドーナツが人気だ。 キューバ文化が色濃く残るマイアミで、キューバ系ではない二人は、「他店との差別化のために何で勝負すべきか」と熟考した結果、朝が遅いマイアミでは、早朝営業しているカフェが皆無だということに気づく。 「そこで7時オープンを開始。早朝に開くのはうちの店だけ。多くの来客があります」と、エバさん。ニーズを考慮した戦略はさらに注目されそうだ。Tinta Y Café ティンタ・Y・カフェ
マイアミのカフェの中で、一際キューバのコーヒー文化を継承しているのが、「ティンタ・Y・カフェ」。 何がコーヒーを「キューバン」にするかといえば、いれるプロセスにある。ここでは、 コーヒーをいれている最中に砂糖を加え、高温で砂糖を溶かす。コーヒーをいれた後に砂糖を入れるより、甘くはっきりとしたフレーバーがまんべんなく浸透するそうだ。
キューバのコーヒーを、アップグレード。
キューバの人の間では「ラ・コラーダ」と呼ばれる、ダブルエスプレッソを飲むことが一般的だが、これは非常に濃い。「一人で飲むには強すぎるから、大人数で分けて少しずつ飲むことをおすすめしています」と、オーナーのカルロス・サンタマリアさん。談笑しながら、コーヒーを飲むことも、立派なキューバのカルチャーだという。そこでお店では、無線LANを飛ばさず、「サイバーゾンビにならずに、会話とコーヒーを楽しもう」と呼びかける張り紙をして、コンピューターの使用を控えるよう促している。「インターネットがないと聞いて、怒りだす人もいるけど、コーヒーは是非誰かとのコミュニケーションを通して味わって欲しい」とも。またスペイン語で罪という意味の「エル・ピカーダ」は、コンデンスミルクと牛乳、エスプレッソが入った、とても甘いコーヒー。豊富なカフェインと砂糖で、元気がみなぎってくるそう。 同店は2005年にオープン。カルロスさんの父親と叔母が家族で経営していたが、間もなく父親が他界して、カルロスさんがオーナーとなった。 「マイアミには大手チェーンが進出してくる前から、いつもキューバ系のカフェがありましたが、クオリティはあまり高いとは言えません。 これからマイアミのキューバンコーヒーの文化をもっと進化させていきたい」と胸を張る。同店では、情熱的な姿勢と、甘いコーヒーのブームは決して冷めることがなさそうだ。