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【コーヒーと世界遺産】カタルーニャ音楽堂

モデルニスモ建築の傑作、コンサートホールのカフェ。
カタルーニャ音楽堂

ステンドグラスを通してたっぷりの自然光が降り注ぐ大ホール。1936年7月、ナチスによるベルリン・オリンピックに対抗する人民オリンピックがバルセロナで開催されようとしていた。カタルーニャ地方出身のチェロ奏者パブロ・カザルスは開会式で第九を演奏・指揮する予定で、前日にこのホールでリハーサルをした。しかし、奇しくもその日にスペイン内戦が勃発。人民オリンピックが開催されることはなく、カザルスはフランスへ亡命。二度とこのホールで演奏することはなかった。© Ainhoa Goma/Alamy/amanaimages

 スペイン・カタルーニャ州バルセロナにあるカタルーニャ音楽堂。1908年に建てられ、現在に至るまで110年余の間、コンサートホールとして使われている世界遺産である。「設計者はバルセロナ出身のルイス・ドメネク・イ・モンタネール(1849〜1923年)。バルセロナの建築家といえばサグラダ・ファミリアのアントニオ・ガウディが有名ですが、天才ガウディに対して3つ年上のモンタネールは秀才肌といわれ、この音楽堂とともに世界遺産に登録されたサン・パウ病院も設計しています」と話す、岡部明子先生。
「当時、バルセロナではモデルニスモと呼ばれる芸術復興運動が流行していました。アールヌーボーの建築版のようなものですね。カタルーニャ音楽堂はモデルニスモ建築の中でも最も美しいと評され、植物をモチーフにしたような華麗な装飾が建物内外にふんだんに使われているのが大きな特徴です」

コンサートの合間に、濃厚なカフェ・ソロを。

カタルーニャ音楽堂のカフェ「Cafe Foyer」。大ホールの客席へと向かう階段の近くに位置している。朝から営業していて、コンサートの来場者でなくても利用できる。© Lucas Vallecillos/Alamy/amanaimages

 圧巻は大ホール。天井に太陽のような巨大な極彩色のステンドグラスが輝き、左右の壁のほとんどの面積をカラフルなステンドグラスが占めている。
「このような優美なモデルニスモ建築を技術的に支えたのが、レンガを使ったカタルーニャ・ヴォールトという工法です。薄い板状にしたレンガとセメントをミルフィーユのように重ねて、床や天井を彎曲面で支えるのです。大ホールのステンドグラスを取り囲む浅いアーチ状の天井にこの技術が使われています。天井が軽量化すると、支える壁面もそれほどいらなくなり、ガラスを使った軽い構造が可能になった。おそらくドメネクは光溢れる開放的な空間を作りたかったのでしょう」

 大ホールからほど近いカフェスペースも同様にアーチ状の天井が連なり、柱にはトレンカディスという色鮮やかな破砕タイルの装飾が施されている。「大ホールと比べるとぐっと落ち着いた雰囲気ですが、ステンドグラスも使われていて、こちらにもドメネクの世界観がしっかり息づいています。コンサートの休憩時間にここでコーヒーを飲む人もたくさんいます」

 バルセロナでコーヒーといえば、濃いエスプレッソ〝カフェ・ソロ〟。砂糖を入れた濃厚な味わいとともに素晴らしい音楽の余韻に浸るのも悪くない。
「〝ソロ〟は地元では基本的に外で飲むイメージで、私がバルセロナに住んだ10年間も、いつも家の近所のバルで飲んでいました。日本に帰ってきてからは家で飲みますが、やはり濃いバルセロナ流です。今も、ネットラジオでスペインの国営放送を聞いていると、〝今夜はカタルーニャ音楽堂でコンサートがあります〟というニュースが流れることがあって……その度に当時のことを懐かしく思い出しています」

岡部明子(おかべ・あきこ)
東京大学社会文化環境学専攻教授。東京大学工学部建築学科卒業後、スペイン留学。磯崎新アトリエ(バルセロナ)を経て1989年、東京大学大学院建築学専攻修士課程を修了。バルセロナに10年滞在。2017年、日本建築学会教育賞受賞。著書に『バルセロナ』他。

監修 岡部明子(東京大学教授)/ 文 牧野容子
更新日:2019/12/24



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