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コーヒーと私

山崎直子【宇宙飛行士】

宇宙で元気をくれたコーヒーの味。
山崎直子【宇宙飛行士】

ペースシャトルに乗って宇宙を旅した山崎直子さん。宇宙空間で改めて気づいたコーヒーの美味しさ、意外な活用法もお話ししていただきました

 私は甘党なので、コーヒーにもお砂糖とミルクをたっぷり入れます。無性に飲みたくなるのは、疲れたなあと思ったとき。きっと、コーヒーの味と香りには心身ともにほぐしてくれる癒しの効果があるのだと思います。

 2010年の4月5日から15日間、私はスペースシャトル・ディスカバリー号に乗って宇宙飛行をしてきました。私にとって最大のミッションが始まったのは4日目からでした。ロボットアームを操作して「レオナルド・モジュール」と呼ばれるコンテナのような多目的モジュールを国際宇宙ステーションに取り付け、その中に入っているこまごまとした実験装置を所定の場所に備え付けるのです。

 その日は朝からかなりあわただしく、区切りのいいところまで1時間ほど延長して夜まで作業を続けました。すべてが終わったとき、達成感と同時にどっと疲れが出て、ああ、コーヒーが飲みたいという強い思いにかられたのです。そのときはハワイのコナ・コーヒーのお砂糖とクリーム入りのパッケージにいつもよりあえて少ない量のお湯を入れて、ちょっと濃いめに作りました。コーヒーが口の中に入ってくると、全身からほっとしたのを覚えています。宇宙に持ってきてよかったと心から思った瞬間でした。

 宇宙食は事前に自分で決めたメニューを持っていきます。コーヒーはゼリー飲料のような銀色のパッケージの中に粉が入っていて、プラスチックの口から針でお湯を注入し、直接ストローで飲みます。ブラック、お砂糖入り、クリーム入り、お砂糖+クリーム入りの4種類があり、私はコナ・コーヒーのブラックとお砂糖+クリーム入りを持っていきました

宇宙での思いがけない、コーヒー活用術。

宇宙から見た瑠璃色の地球の美しさは格別。地球そのものが生きているのだと強く感じました、と語る山崎さん。

 気分をリフレッシュさせるために香水をつける人もいますが、香水はアルコール成分を含むため、引火しやすいという理由で宇宙に持っていくことはできません。その意味で、宇宙で飲むコーヒーの香りは精神を安定させるものとしても重宝だと思います。

 さらに、コーヒーは宇宙で墨汁や絵の具の代わりになることもあるのです。以前、若田光一飛行士はコーヒーを使って習字をしました。私は今回、娘からのリクエストでシャボン玉に色をつける実験をしたとき、赤い色を出すためにトロピカルジュースを、黒っぽい色にはブラック・コーヒーを持っていきました。

 宇宙食は時代とともに地上の食事に負けないくらいの美味しさになっています。ただ、残念ながらストローで飲むパッケージはまだちょっと味気ない。宇宙飛行士の中にはコーヒー好きが高じて、宇宙で使えるコーヒーカップを考案した人がいます。一緒に訓練のお仕事をしたことがあるアメリカ人ドン・ペティットさんは、毛細管現象を利用して無重力空間で飲めるカップを考案したのです。より美味しく飲みたいという、その熱意に脱帽です(笑)。私も次に宇宙へ行く機会があれば、そのときはカップでのんびりとコーヒーを味わってみたいですね。

文・牧野容子 / 写真・大河内禎
更新日:2013/09/9

Information

『宇宙飛行士になる勉強法』
山崎直子 著/中央公論新社 ¥1,470(税込)

未来の宇宙飛行士に伝えたい94の「学び」のエッセンスを初公開! 幼少時代の家庭教育、受験勉強、宇宙飛行士選抜試験、英語の習得法……。『宇宙兄弟』小山宙哉氏との特別対談も収録。

山崎直子『宇宙飛行士になる勉強法』
Profile

山崎直子(やまざき・なおこ)
千葉県松戸市に生まれる。東京大学工学部航空学科卒業。同大学院航空宇宙工学専攻修士課程を修了後、宇宙開発事業団(現JAXA)に勤務。1999年2月に国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士候補者に選ばれる。2010年4月5日からスペースシャトルに搭乗し15日間、宇宙を飛行した。日本人女性では2人目の快挙となった。
撮影協力:ミルクホール(☎0467・22・1179)
■ www.milkhall.co.jp/
山崎直子


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