COFFEE BREAK

インタビュー

インタビュー-Interview-

2013.03.01

為末 大【元プロ陸上選手】

為末 大【元プロ陸上選手】

空間とともにコーヒーを味わいたい。
為末 大【元プロ陸上選手】

400mハードルの国際大会で日本人初の2つのメダルを獲得。 引退後の活動が注目される為末大さんがコーヒーへの熱い想いを語ります。

 僕は1日に最低でも3杯はコーヒーを飲みます。コーヒーと〝コーヒーのある空間〟そのものが好きなんです。
 コーヒーを飲みながら打ち合わせをしたり、夜のカフェで一人で本を読んでいたり......コーヒーの味を楽しむというだけでなく、何かをしているときにそこにコーヒーがある、その空気感みたいなものが心地いい。よく、飲むのが遅いといわれるのですが、たいてい30分~1時間くらいかけて、ゆるゆる飲んでいる。すぐに飲み切ってしまうのはなんだかもったいない気がしてしまって......味わってゆっくり飲みたいタイプです。

 スポーツ選手はドーピングの問題や身体づくりのために、食べ物にいろいろと制限がかけられてしまうものです。嗜好品の中で自由にいただけるものといったら、コーヒーやお茶くらい。そういうこともあって、大学生の頃からコーヒーをよく飲むようになりました。

 23歳から遠征で海外に行くようになり、そのときにヨーロッパでカフェの文化が根付いている生活を目の当たりにして、すごくいいなあと思った。それが、コーヒーをさらに好きになるきっかけになりました。日頃からよく飲むのはエスプレッソのような、ちょっと苦みがきいているタイプで、家ではフレンチプレス(コーヒープレス)を使っています。

時差ぼけの調整にもコーヒーが味方に。

トレーニングに自転車をとり入れて以来、自転車によく乗るという為末さん。今回の撮影は自転車屋さんの店内にあるカフェで。撮影協力:盆栽自転車店(☎03・3497・8885)

 現役の頃は、時差ぼけの調整でもコーヒーにしょっちゅうお世話になりました。日本からヨーロッパに行くと、現地の午後3時~4時くらいにちょっと眠くなってくるので、そのときに砂糖を多めに入れたエスプレッソを飲んで、太陽の光を浴びて眠気を覚ます。その時間に眠くてつい寝てしまうと、ずるずると1週間くらい時差ぼけがとれないんです。逆に、帰国の1日前くらいになると、日本の時間に合わせて、日本が夜ならば(遠征先では)コーヒーを飲み過ぎないようにして、日本が昼間であれば、夜でもコーヒーで眠気を抑えて起きている、ということをして自分なりに調整していました。

 陸上は食べ物や飲み物と身体との因果関係を追究しやすい競技だと思います。球技の場合は、今日の試合に勝てた原因は自分の体調がよかったのか、相手の状態が悪かったのか、あるいはグランドコンディションが関係しているのかなど、道具や環境、相手といった複雑な要素が絡んでくるので原因が定まりにくい。しかし、陸上競技は自分の身体がすべてなので、いま調子がいいのは何故なのかという原因を遡ることがしやすいのです。もちろん、いちばん多く影響を与えるものは練習ですが、食べた物や飲んだ物がその後の自分の体調にどう影響しているかということを常に把握する、そんな実験的な生活をおもしろがっているのも陸上選手の性質といえるかもしれません。僕も、いまコーヒーを飲むと3日後に自分の身体はどうなるかということを観察する癖が身についています。でも最近では、好きな時間に好きなだけコーヒーとの時間を堪能させてもらっている喜びのほうが大きいですね(笑)。

文・牧野容子 / 写真・大河内禎
更新日:2013/03/01
PROFILE
為末 大(ためすえ・だい) 2001年エドモントン世界選手権で、男子400mハードル日本人初の銅メダル、2005年ヘルシンキ世界選手権で再び銅メダル獲得。2012年に現役引退。レポーター、コメンテーターとして活躍する傍ら、東京・丸の内や広島にて「ストリート陸上」をプロデュース、参加するなど、陸上競技の普及に積極的に取り組んでいる。
為末 大
INFORMATION
『走りながら考える』 夢は叶わないこともある――。 ツイッターのフォロワー数は12万を超え、「自ら考え、語る知的アスリート」として常にその発言が注目される著者。「人生のハードルを越える64の方法」とは......。 ダイヤモンド社 ¥ 1,575(税込) 為末大 著
『走りながら考える』
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