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コーヒービジネス最前線

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    世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
    イギリスでもここ数年、ロンドンをはじめ地方都市でもさまざまなカフェが次々とオープンしています。そんなイギリスのカフェ業界で、カフェと社会貢献を組み合わせ、ソーシャル・ビジネスの形態で運営する”エシカル・カフェ”が話題になってきました。
    Vol.20では、今年3月にオープンしたばかりで、ホームレスの自立を応援する自家焙煎のカフェ「オールド・スパイク・ロースタリー」をご紹介します。

    ホームレス支援のカフェで、社会を変える。

    Vol.20 イギリス:「オールド・スパイク・ロースタリー」(Old Spike Roastery)
    www.oldspikeroastery.com

    ルーマニア出身のルーシーさん、50歳。

    ルーマニア出身のルーシーさん、50歳。平日は、ロンドン橋駅前でビッグイッシュー誌を販売し、週末はカフェでバリスタ訓練を受ける働き者。陽気で前向きな姿勢に、常連客たちがエールをおくる。

     ロンドン南部のペッカムは、都市再開発のおかげで若者の流入が多く、新規の店が次々と開業しているエネルギッシュなエリアである。ペッカム・ライ公園に面する自家焙煎のカフェ「オールド・スパイク・ロースタリー」も、今年3月にオープンしたばかりの新顔だ。
     「オールド・スパイク・ロースタリー」の誕生は、ジェマル・エゼルさんがロンドン橋駅前でビッグイッシュー誌(ホームレスが売る雑誌)をひとりのホームレス女性から購入するところから始まる。定期的に購入するうちに、女性の名前はルーシー、3年前にルーマニアからロンドンに出稼ぎに来て以来、ホームレスの生活を送っていることを知る。

    [左上]カフェ創立者、ジェマル・エゼルさん(左)とリチャード・ロビンソンさんは、小学校からの仲良しコンビ。[右上]バリスタのマイヤさん(左)から指導を受けるルーシーさん。覚えがはやく、腕が上がっている。[下]エスプレッソとミルクの配合が五分五分のコルタード、2.50ポンド。豆は、コロンビアとエチオピア産。

    [左上]カフェ創立者、ジェマル・エゼルさん(左)とリチャード・ロビンソンさんは、小学校からの仲良しコンビ。[右上]バリスタのマイヤさん(左)から指導を受けるルーシーさん。覚えがはやく、腕が上がっている。[下]エスプレッソとミルクの配合が五分五分のコルタード、2.50ポンド。豆は、コロンビアとエチオピア産。

     30歳になり、人生の岐路に立ったジェマルさんが決意したのは、ホームレス支援が目的の非営利団体カフェを立ち上げることだった。友人リチャード・ロビンソンさんと一緒に設立したカフェでの最初の支援候補者は、もちろんルーシーさん。支援内容は、カフェでバリスタ修行と接待業を6ヶ月間特訓し、技術を身につけ、のちには外食産業で定職に就き自立した生活を送ってもらうこと。「バリスタなら短期間の集中トレーニングで一定のレベルに達することができるから”卒業”もはやい」とリチャードさんは説明する。
     このカフェでは、研修中に時給9ポンドを支払う。これはホームレスの人に定収入を得る喜びを味わってもらうためである。加えてルーシーさんに英語力をつけるため、英語学校に通学してもらう費用も抱える。将来の自立生活を見通した支援レベルは高いと言えよう。

    [左]店内で販売の天然酵母パンは、元囚人が近所のパン屋で更生の一環として焼いているもの。[右]「カフェを応援したいから」と週末ごとに通う地元の女性客。もちろんコーヒーの味もばっちりよ、だそう。

    [左]店内で販売の天然酵母パンは、元囚人が近所のパン屋で更生の一環として焼いているもの。[右]「カフェを応援したいから」と週末ごとに通う地元の女性客。もちろんコーヒーの味もばっちりよ、だそう。

     また、ジェマルさんは確実な売り上げを確保するために、カフェで焙煎するコーヒー豆を通信販売する戦略も立てた。ブレンド名は、18世紀、ホームレスの人々に慈愛を注いだ聖人ベネディクトにちなみ「ベネディクト」と命名。カフェの趣旨に賛同する固定購買客がすでに500名近くにも増えており、草の根パワーを発揮している。
     この物語はここで終わらない。2人組は、コーヒー豆の売り上げを次なる支援プロジェクトに投資しているからだ。それは、オート三輪を移動式カフェに改造し、ホームレスの人がコーヒー販売をし、収入を得てもらうこと。「一杯のコーヒーから社会を変える」と意気込むジェマルさんとリチャードさんである。

    「オールド・スパイク・ロースタリー」(Old Spike Roastery)
    www.oldspikeroastery.com
    54 Peckham Rye,
    London SE15
    電話なし。
    営業時間 7:00〜14:00(水〜金)、9:30〜17:00(土、日)
         休:月・火(焙煎のため)
    ●チェンジ・プリーズ(カフェを運営する非営利団体)
    www.change-please.co.uk

    *1ポンド=約191円(2015年6月現在)
    文・写真/かがわみちこ
    ロンドン市在住

    更新日:2015/6/15



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